「粉飾決算」に厳しい目! 粉飾企業への融資「引き上げるべき」約4割 全東信の取引金融機関 評価に「影響ない」81%、「マイナス」15%
~「全東信の破産」に関するアンケート調査~
7月6日、クレジットカード決済代行の(株)全東信(TSRコード:575448075、大阪市)が破産開始決定を受けた。この破産事件では、大胆な粉飾決算を金融機関が見抜けなかっただけでなく、全国の約2万店に及ぶ加盟店の回収不能・遅延を引き起こし、政府が緊急支援に動くなど大きな社会問題に発展した。
こうした事態を受け、東京商工リサーチ(TSR)は7月31日から8月11日に企業向けアンケートを実施した。
企業が取引を考える際、全東信へ融資していた金融機関に対し、約15%が「マイナス」に評価すると回答した。また、粉飾が発覚した企業への金融機関の対応は、「事情などを加味すべき」が56.7%、「融資を引き上げるべき」が38.8%と二分された。粉飾決算に対する視線は、厳しさを増しているようだ。
また、自社決算への信頼は、84.9%の企業が「高い」と回答した。一方で、「高いと言い切れない」が1.4%、「どちらともいえない」が8.5%あった。その理由では、「決算処理は会計士や税理士任せ」と回答した企業が約6割あったほか、経理などのスキル不足や人材不足も見え隠れする。
粉飾決算が発覚した企業の倒産が相次ぐ。背景には、コロナ禍の業績悪化や金利上昇、金融機関の審査強化があるが、粉飾決算を見破れるかは審査体制や担当者の経験、能力の差が大きい。
全東信に融資した金融機関と取引する場合、企業側は「影響を与えない」との回答が82.8%を占めた。ただ、「マイナス」評価も14.8%あり、全東信の破産事件は決して傷が浅くないようだ。
また、粉飾が発覚した企業との取引では、金融機関は「粉飾発覚時に融資を引き上げるべき」が38.8%で、粉飾企業へ融資した金融機関の審査に対する不信感は根強い。
一方、「自社の決算処理を信頼性が高いと言い切れる」企業は84.9%だった。決算処理を会計士や税理士任せになっていることや経理担当者ののスキル不足など、不適切会計を生む土壌は残されていることもわかった。
最近の粉飾決算の特徴は、長期間で巧妙な手口が目立つ。それだけに企業の謹厳実直な姿勢と同時に、金融機関にも高い意識と本質的な情報を取り込む能力の高さが求められる。
※本調査は、2026年7月31日~8月11日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答6,246社を集計・分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(資本金がない法人・個人企業を含む)を中小企業と定義した。
Q1.7月6日に決済代行の(株)全東信が負債1,151億円を抱えて破産しました。融資していた金融機関は約60行あり、一部の金融機関は取立不能(焦付など)を公表しています。貴社が金融機関と取引を考える際、全東信への融資姿勢は判断に影響を与えますか?(単一回答)
全東信への融資 金融機関との取引を考える際の「マイナス」判断が約15%
粉飾決算を見破れず取立不能が生じた金融機関と取引する際、この件が判断材料として影響するか聞いた。その結果、「影響を与えない」が82.8%(5,641社中、4,671社)と8割を超えた。ただ、「マイナス(少し、大きく)」が14.8%(840社)あり、企業の判断材料にはなっている。
企業規模別では、「マイナス」の判断は大企業が11.3%(441社中、50社)に対し、中小企業は15.1%(5,200社中、790社)で、中小企業が3.8ポイント上回り、シビアに判断している。

「マイナス評価」業種別
取引の判断材料として全東信への融資した金融機関を「マイナス」と評価した業種(分母10社以上)を分析した。
構成比が最も高かったのは、「電気業」の35.7%(14社中、5社)。次いで、「保険業」31.2%(16社中、5社)、「繊維・衣服等服卸売業」30.4%が続く。
公的要素の強い業種ほど、粉飾企業へ融資した金融機関との取引に気が進まないようだ。
Q2. 全東信は長年にわたり粉飾に手を染めていました。粉飾が露呈した企業に対して、金融機関はどのように対応するべきだと思いますか?(単一回答)
融資を「引き上げるべき」が約4割
粉飾が発覚した企業への融資対応を聞くと、「事情や周囲への影響を加味して判断すべき」が56.7%(5,282社中、2,999社)で最多だった。
次いで、「露呈した段階で融資を引き上げるべき」が38.8%(2,052社)と見解が分かれた。
「融資を引き上げるべきではない」は4.3%(231社)にとどまり、企業は粉飾企業に対し厳しい目で評価している。

学校教育、「引き上げるべき」が64.2%
融資を引き上げるべきと回答した業種別(分母10社以上)を分析した。
構成比の最高は、「学校教育」の64.2%(14社中、9社)。次いで、「織物・衣服・身の回り品小売業」の63.6%(11社中、7社)、「広告業」の63.1%(19社中、12社)などが続く。
Q3.貴社の決算処理は信頼性が高いと言い切ることはできますか?(単一回答)
「言い切れる」は84.9%
自社決算への信頼性を聞いた。最多は「信頼性が高いと言い切れる」で84.9%(6,246社中、5,306社)の企業が自社決算の信頼性に自信を持っていると回答した。
以下、「どちらともいえない」が8.5%(534社)、「回答を控える」が5.0%(313社)、「信頼性が高いと言い切れない」が1.4%の順だった。
規模別では大きな差はなかった。
「高いと言い切れない」「どちらともいえない」と回答した企業を業種別(分母10社以上)で分析した。最も構成比が高かったのは、「貸金業,クレジットカード等非預金信用機関」の33.3%(12社中、4社)だった。

Q4.Q3の「どちらともいえない」「言い切ることはできない」と回答された方に伺います。その理由は何ですか?(複数回答)
自社の決算処理に信頼性が高いと言い切れない(どちらともいえない含む)と回答した企業の理由を複数回答で聞いた。
最多は、「決算処理が会計士や税理士任せになっている」が56.8%(559社中、318社)。また、「経理、財務部門のスキル不足」が39.5%(221社)、「経理、財務部門の人手不足」が20.3%(114社)など、会計士や経理関係の課題をあげる声が多かった。
ただ、各部門で「改ざんや誤謬が入り込む余地がある」との回答も散見され、決算処理の問題は根深いことを示している。
また、税法や会計基準の変更、節税対応などで決算処理が複雑化しており、信頼性を担保できないという回答もみられた。
