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原油高騰長期化で6割の企業が価格転嫁へ 100ドル超が続くと、経常利益は赤字の試算も

~2026年4月「原油高」に関するアンケート調査~


 2026年2月末のアメリカ・イスラエルによるイランへの攻撃開始から1カ月半が経過した。4月7日の一時停戦を受け、原油価格はいったん下落したが、4月12日の米・イラン協議の決裂を受けて、原油価格は再び1バレル100ドル台に上昇し乱高下が続くなど、中東情勢を巡る緊張が続いている。
 こうした状況を受け、東京商工リサーチ(TSR)は、原油価格高騰に関する企業アンケート調査を行った。原油価格が100ドルを超える状況が続く場合、今年4月のコスト負担は、昨年4月と比較してどの程度増える見込みか聞いたところ、「20%以上25%未満」が18.2%で最大だった。コストが中央値の20%分増加した場合、単純計算で全体の経常利益率は8.2%から▲10.1%へ18.3ポイント下落し、赤字に転落する。

 コストに占める燃料費の割合は、「5%以上6%未満」が最大だった。ただ、原油高の影響は燃料費にとどまらず、物流費、原材料費など幅広く、企業の負担は一段と重くなる可能性がある。
 今回の原油高騰への対応では、「商品やサービスの値上げを行う」が61.8%で、価格転嫁で対応する企業が多かった。このほか、「雇用・人員体制の見直しを検討する」12.7%、「一部事業の縮小を検討する」9.7%などもあり、抜本的な事業構造の見直しを迫られる企業も少なくない。
 価格転嫁を予定する企業では、価格転嫁までの期間は「1-3カ月」が51.3%(1,874社)と半数を超えた。また、「7カ月以上」が15.1%(552社)と、半年以内に価格転嫁できない企業も1割超にのぼる。また、産業別では価格転嫁のスピードに差がみられ、小売業や卸売業では比較的早い一方、情報通信業や農・林・漁・鉱業では長期化しやすい傾向がみられた。
 中東情勢は不透明な状態が続き、企業は値上げとコスト削減の両面で対応を迫られている。供給不安が後退しても、価格転嫁の遅れや関連コストの上昇が残り、企業の収益環境は厳しい状況に置かれている。
※本調査は、2026年3月31日~4月7日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答6,227社を集計・分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(資本金がない法人・個人企業を含む)を中小企業と定義した。


Q1. 2月28日から始まったイランでの軍事衝突で、WTI原油先物価格は2月末(2/27)の1バレル67.02ドルから、3/29時点で102.80ドルと100ドルを超える水準に到達しました。原油価格が100ドルを超える状況が続いた場合、今年4月の貴社のコスト負担は、昨年4月と比較してどの程度増える見込みですか?

原油価格100ドル以上のコスト上昇率 中央値20.0%
 原油価格が1バレル100ドルを超える状況が続いた場合、4月分のコストが前年と比べ、どの程度上昇するか聞いたところ、2,837社から回答を得た。
 構成比の最大は「20%以上25%未満」で18.2%(517社)。次いで、「10%以上15%未満」16.6%(472社)、「30%以上35%未満」16.4%(466社)が続く。
 「20%以上」と回答した企業は、中小企業58.4%(2,697社中、1,576社)、大企業58.5%(140社中、82社)で、ともに半数を超えた。規模を問わず、企業収益に大きな悪影響が出る見込みだ。
 一方、「上昇なし」と回答した企業も6.4%(182社)と一部見られた。規模別では、中小企業6.5%(178社)、大企業2.8%(4社)で、中小企業が3.7ポイント上回った。

原油価格100ドル以上のコスト上昇率 中央値20.0%

産業別 「20%以上」最大は建設業の70.7%

 産業別の構成比で、コスト上昇率「20%以上」と回答したのは、建設業が70.7%(475社中、336社)で唯一、7割を超えた。次いで、運輸業の68.0%(150社中、102社)、農・林・漁・鉱業の65.78%(38社中、25社)、製造業の65.70%(726社中、477社)が続く。
 一方、「上昇なし」では情報通信業が34.0%(138社中、47社)、金融・保険業24.0%(25社中、6社)で高かった。
 東京商工リサーチが持つ決算データのうち、2024年10月から2025年9月期の売上高・経常利益を入手した約60万社で試算すると、コストが中央値の20%分増加した場合、単純計算で経常利益率は8.2%から▲10.1%へ18.3ポイント下落し、赤字に転落する。
 産業別では、一部のエネルギー開発企業が利益を押し上げた農・林・漁・鉱業を除く9産業で、経常利益率がマイナス転落する見込みだ。実際には、価格転嫁の進展度合いで改善度に違いが出るが、幅広い産業で大きな影響が出ることは避けられないだろう。

TSR業績データでの影響試算

産業別 回答状況 「20%以上」最大は建設業の70.7%

Q2.総コスト全体に占める燃料費の構成比はどの程度ですか?

「5%以上6%未満」が2割で最大
 総コスト全体に占める燃料費の構成比を聞いた。構成比の最大は、「5%以上6%未満」の20.2%(3,457社中、700社)だった。次いで、「10%以上15%未満」が19.6%(679社)、「1%以上2%未満」が11.2%(390社)で続く。
 「10%以上」と回答した企業は、中小企業で36.6%(3,286社中、1,203社)、大企業で28.6%(171社中、49社)と、中小企業が8.0ポイント高く、原油高が収益を圧迫しやすい構造がうかがえる。
 ただ、原油高の影響は燃料費に限らず、物流費、原材料費、従業員の通勤費用など幅広く波及するため、実際のコスト負担はさらに膨らむ可能性がある。

総コスト全体に占める燃料費の構成比

Q3.原油高騰が長期化した場合、どういった対応を行いますか?(複数回答)

大企業、中小企業ともに「商品やサービスの値上げを行う」が6割以上でトップ
 構成比の最大は「商品やサービスの値上げを行う」で61.8%(3,852社)。次いで、「コスト削減で対応する」37.8%(2,355社)、「現状維持で対応をしない」18.7%(1,170社)が続く。
 規模別では、「商品やサービスの値上げを行う」は大企業が68.2%で、中小企業の61.3%を6.9ポイント上回った。いずれも6割以上と高いが、競争力の高さなどで大企業が価格転嫁を進めやすい傾向がうかがえる。
 このほか、「雇用・人員体制の見直しを検討する」12.7%(791社)、「一部事業の縮小を検討する」9.7%(607社)、「不採算部門の撤退を検討する」6.1%(385社)などの回答もあり、原油高の長期化は事業構造の見直しや事業継続そのものに影響を及ぼす可能性もある。

Q3.原油高騰が長期化した場合、どういった対応を行いますか?→大企業、中小企業ともに「商品やサービスの値上げを行う」が6割以上でトップ

Q4.商品やサービスの値上げの交渉から販売価格に反映されるまで、どの程度の期間がかかりますか?(単一回答)

価格転嫁反映期間は「2-3カ月」が約4割
 Q3で「商品やサービスの値上げを行う」と回答した企業へ、商品やサービスの値上げの交渉から販売価格に反映されるまでの期間を聞いた。
 構成比の最大は「1-3カ月」で51.3%(1,874社)だった。次いで「4-6カ月」が20.8%(763社)、「7-12カ月」が11.8%(433社)で続く。
 産業別では、「すでに値上げしている」と「1-3カ月」を合算した割合が小売業が81.7%(214社中、175社)で最も高く、卸売業が72.0%(835社中、602社)、建設業が70.0%(588社中、412社)と続く。一方、情報通信業は46.2%(67社中、31社)、農・林・漁・鉱業は48.4%(33社中、16社)にとどまった。情報通信業では契約更新時まで単価改定が難しいケース、農・林・漁・鉱業では生産・出荷サイクルの長さなどが影響している可能性がある。

Q4.商品やサービスの値上げの交渉から販売価格に反映されるまで、どの程度の期間がかかりますか?→価格転嫁反映期間は「2-3カ月」が約4割

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