• TSRデータインサイト

2025年1-5月の「労働者派遣業」倒産53件 人材派遣が人手不足で年間最多ペースの可能性

2025年(1-5月)の「労働者派遣業」倒産


 深刻な人手不足が続くなか、 「労働者派遣業」の倒産がハイペースをたどっている。2025年5月の「労働者派遣業」倒産は、3月に並び今年最多の15件(前年同月比400.0%増)発生した。
 2025年は1月から5カ月連続で前年同月を超え、1-5月累計は53件(前年同期比211.7%増)に達し、 1997年以降の同期間で最多となった。現状ペースで推移すると、年間最多を更新する可能性が高まっている。

 負債総額は、5月が今年最高の17億2,700万円(前年同月比1737.2%増)で、1-5月累計は1997年以降で最高の55億9,900万円(前年同期比439.4%増)となった。件数急増に加え、負債5億円以上10億円未満3件(前年同期ゼロ)、同1億円以上5億円未満9件(同4件)と、中堅企業の行き詰まりが目立ち、負債を押し上げた。

 労働者派遣業にも人手不足が押し寄せ、派遣スタッフの確保に苦慮している。待遇などで規模格差が広がり、中小・零細業者の脱落が倒産の急増につながっている。

※2025年1-5月の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「労働者派遣業」を集計・分析した。

労働派遣業の倒産


【形態別】破産が9割超

 形態別は、最多が破産が51件(前年同期比200.0%増、前年同期17件)で、3倍に急増した。構成比は96.2%(前年同期100.0%)。
 このほか、民事再生法と特別清算が各1件(前年同期ゼロ)だった。
 労働者派遣業の倒産のうち、販売不振が35件(前年同期比169.2%増、構成比66.0%)と7割近くを占めた。
 業績低下から抜け出せず、経営を立て直す余力のない企業が、破産で債務整理する状態が続いている。

2025年1-5月 労働派遣業 形態別倒産状況

【負債額別】1億円未満が7割超

 負債額別は、1億円未満が41件(前年同期比215.3%増、構成比77.3%)。
 内訳は、「1千万円以上5千万円未満」が27件(前年同期比145.4%増)、「5千万円以上1億円未満」が14件(同600.0%増)だった。
 小規模倒産が主体となっていて、10億円以上は2018年同期より8年連続で発生していない。

2025年1-5月 労働派遣業 負債額別倒産状況

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

M&A総研の関わりに注目集まる資金流出トラブル ~ アドバイザリー契約と直前の解約 ~

東京商工リサーチは、M&Aトラブルの当事者であるトミス建設、マイスHD、両者の株式譲渡契約前にアドバイザリー契約を解約したM&A総合研究所(TSRコード: 697709230、千代田区)を取材した。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業、中高年の活用に活路 「早期・希望退職」は大企業の2.8%が実施

 「早期希望・退職」をこの3年間実施せず、この先1年以内の実施も検討していない企業は98.5%だった。人手不足が深刻化するなか、上場企業の「早期・希望退職」募集が増えているが、中小企業では社員活用の方法を探っているようだ。

3

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

4

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

5

  • TSRデータインサイト

2023年度「赤字法人率」 過去最小の64.7% 最小は佐賀県が60.9%、四国はワースト5位に3県入る

国税庁が4月に公表した「国税庁統計法人税表」によると、2023年度の赤字法人(欠損法人)は193万650社だった。普通法人(298万2,191社)の赤字法人率は64.73%で、年度集計に変更された2007年度以降では、2022年度の64.84%を下回り、最小を更新した。

TOPへ