• TSRデータインサイト

動物病院の倒産増加、大手と地域密着型の競争激化

高度医療ニーズ、医療機器へ投資重く

 ペットを診る動物病院(獣医業)の倒産が増えている。1-2件/年で推移していたが、2024年度(4-3月)は2月までに5件を数え、様相が一変している。また、休廃業・解散も2024年(1-12月)は2013年以降で最多の46件に達している。
 背景には、病院乱立と獣医師不足、高度医療に対応する高額機器への投資負担などがあるようだ。



倒産増加、過去20年で最多に

 動物病院の倒産は、2007~2009年度までは発生しなかった。その後は2012年度の3件をピークに2013~2016年度まで再び発生せず、その後も年間1件か2件にとどまっていた。
 ところが、2024年度は2月までに5件に増え、過去20年間で最多を更新中だ。うち4件は業績不振が主因で、また、3件が個人経営と零細規模の不振が目立っている。

動物病院の倒産 年度推移

休廃業・解散も最多、法人設立は減少

 倒産以外で事業を停止した休廃業・解散の推移をみると、2024年は、2013年以降で最多の46件(前年43件)だった。
 一方で、新設法人数はコロナ禍中のペットブームを背景に、2021年は262件と最多を更新したが、2022年226件、2023年162件と推移し、一転して急減した。
 ただ、農林水産省の「動物診療施設の開設届出数、獣医師数」によると、届出数は右肩上がりで増え続けている。独立などの新たな開院が減っても、大手の病院展開が押し上げているようだ。一方で、獣医師数は年々減少している。

動物診療施設の開設届出数と獣医師数の推移



 倒産が極端に少なく、都市部でも地方でも経営が安定していた動物病院だが、状況は様変わりした。
 動物病院の生き残りには、診察、医療からホスピスまで、人と同じような支援のニーズもある。
 高額な医療機器を揃え、高度化医療に取り組む動物病院と人のつながりを生かした動物病院――。ペットを舞台にした生存競争が静かに激化している。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年3月24日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「他都道府県への本社移転」 1万6,271社 TSMC効果?九州が転入超過トップ、県別トップは埼玉県

2024年度に他都道府県に本社・本社機能を移転した企業は1万6,271社(前年度比18.7%増)で、前年度から大きく増加した。コロナ禍からの人流回復や需要変化に合わせ、本社移転の動きが活発化している。

2

  • TSRデータインサイト

創光科学の「破産開始決定」が取消しに ~上場子会社、複雑に絡まり合う利害関係 ~

東証プライム上場の医療機器メーカー、日機装(株)(渋谷区)は5月15日、連結子会社の創光科学(株)(渋谷区)の破産開始決定の取消しに関する経過を開示した。 破産手続きを巡り、2年にわたる親会社VS創業者の異例の抗告合戦へと発展した事件は、最高裁の判断でようやく決着した。

3

  • TSRデータインサイト

警備業界は大手2社の寡占化が進む 人手不足で倒産・休廃業が過去最多

全国の主な警備会社828社の2024年の業績は、売上高が1兆9,180億円(前年比2.6%増)、最終利益は1,604億円(同15.6%増)と、堅調に推移している。 業界市場は拡大しているが、大手の寡占化が進み、中小・零細事業者は人手不足でコストが上昇し、経営環境は厳しさを増している。

4

  • TSRデータインサイト

「雇調金」不正受給 倒産率は平均の約31倍 不正公表1,699件、サービス業他が45%

全国の労働局が4月30日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数は、2020年4月からの累計が1,699件に達した。不正受給総額は551億6,918万円にのぼる。

5

  • TSRデータインサイト

マレリにマザーサンが買収提案、私的整理の協議の行方は ~ 「マザーサンの提案は選択肢の一つ」 ~

自動車部品大手のマレリホールディングス(株)は5月26日、私的整理を協議するために都内で集会を開催した。 集会後、マレリHDの関係者が東京商工リサーチの取材に応じ「マザーサンの買収提案は選択肢の一つだ。それしかないような報道がなされているが、一択ではない」とコメントした。

TOPへ