• TSRデータインサイト

2024年の「物価高」倒産 2年連続増 下請けの価格交渉力の強化が課題

2024年の 「物価高」倒産状況


 2024年の原材料やエネルギー価格の上昇を一因とした「物価高」倒産は、698件(前年比8.0%増)だった。円安が加速した2022年以降、2年連続で前年を上回った。 製造業、運輸業、建設業など、下請け構造が複層的な業種で、価格交渉力の弱い中小・零細企業の脱落が目立つ。
 負債総額は2,229億7,400万円(同46.0%減)で、前年からほぼ半減した。
 外国為替レートは一時、円高に振れたが、再び円安が強まっている。物価高が続くなか、適正な価格転嫁が難しい中小・零細企業の苦境が鮮明となっている。

 産業別では、最多が製造業の160件(前年比15.1%増)。次いで、運輸業143件(同12.5%増)、建設業142件(同8.3%増)と続く。従業員やドライバー、職人の人件費上昇だけでなく、原材料や資材、燃料、エネルギー価格の高止まりが収益を圧迫している。さらに、下請け企業は発注先との価格交渉が難しく、コスト増を吸収できず倒産に至るケースも少なくない。
 資本金別は、1千万円未満が390件(同18.9%増)で全体の5割以上(55.8%)を占めた。
 また、形態別は、破産が626件(同10.2%増)で、構成比はほぼ9割(89.6%)に達した。

 円安トレンドが強まるなか、価格転嫁が遅れた中小企業を中心に「物価高」倒産は高止まりする可能性が高い。行政によるもう一段の価格転嫁を促す継続的なチェックが重要になっている。
※本調査は、2024年(1-12月)の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。

「物価高」倒産月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ