• TSRデータインサイト

2024年1-11月「人手不足」倒産266件 人材難の中小企業が押し上げ、年間最多を更新

2024年(1-11月)の「人手不足」関連倒産


 人手不足が企業経営に深刻な影響を及ぼしている。2024年11月の「人手不足」を一因とした倒産は20件(前年同月比25.0%増)で、1-11月累計は266件(前年同期比83.4%増)に達した。すでに7月には年間最多だった2023年の年間159件を上回り、2024年は300件に迫る勢いだ。
 内訳は、「求人難」が107件(同94.5%増)、「人件費高騰」が93件(同72.2%増)、「従業員退職」が66件(同83.3%増)と、いずれも年間では過去最多を記録した。コロナ禍が落ち着くと同時に、人手不足が顕在化し、賃上げムードの中で資金力が追いつかない中小企業の劣勢ぶりが鮮明になってきた。

 産業別では、サービス業他79件(前年同期比64.5%増)、建設業72件(同166.6%増)、運輸業が61件(同69.4%増)と、労働集約型産業で人手不足による倒産が目立つ。
 形態別は、破産が245件(同78.8%増)で9割(構成比92.1%)に達した。資本金別は、1千万円未満が168件(前年同期比95.3%増、構成比63.1%)だった。小・零細企業は、賃金水準が大手に届かず人手不足が深刻さを増している。人手不足で受注機会の喪失や事業再生のめどが立たず、債務整理で破産せざるを得ない状況が透けて見える。

 円安に伴う物価高に加え、賃上げ原資を賄う安定収益を確保できない小・零細企業に人手不足が直撃している。生き残りには、生産性向上への取組みやビジネスモデル転換を迫られている。

※本調査は、2024年(1-11月)の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出し、分析した。(注・後継者難は対象から除く)


「人手不足」関連倒産(1-11月)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

3

  • TSRデータインサイト

チャプター11をめぐる冒険 ~ なぜマレリはアメリカ倒産法を利用したのか ~

ずっと日本にいるのに時差ボケが続いている。  「マレリのチャプター11が近いから関連サイトをチェックし続けろ」と6月6日に先輩に言われて以降、私の生活はアメリカ時間だ。

4

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

5

  • TSRデータインサイト

定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。東京商工リサーチが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。

TOPへ