• TSRデータインサイト

脱毛サロンなどエステ業の倒産が過去最多ペース 1-10月累計87件、初の年間100件超も視野に

2024年1-10月「脱毛サロンなどエステティック業」倒産状況


 脱毛サロンなど、エステ業界の倒産が急増している。2024年は10月までに87件に達した。現在のペースで推移すると、2024年は過去最多の2023年の年間88件を上回ることは確実で、100件を超える勢いだ。
 エステティック業の負債額上位5件のうち、3件がこの3年間で発生している。安価なサービスや通い放題などで若者を引き付けたが、客から多額の前払金を集めて運転資金に充てる手法で事業を拡大してきたことが背景にある。だが、経営が悪化した時に返金できないケースが多発、エステ業の前払金スキームも議論を呼びそうだ。

 経済産業省の経済構造実態調査によると、2023年における脱毛サロンを含むエステティック業者の事業活動などの売上(収入)は、2,833億円という。安価なサービス提供の事業者が増えたコロナ禍前の2019年は倒産が73件発生した。コロナ禍は関連支援の効果で抑制され、2021年は42件に減少した。しかし、支援効果の薄れと前受金商法の行き詰まりが目立ち始めた2022年から再び増勢に転じ、2023年は過去最多の88件発生。2024年は競合に加え、深刻なコスト上昇や人手不足が影響し、10月までに87件に達している。

 ここ3年のエステ業倒産で最大は「全身脱毛サロンC3」運営の(株)ビューティースリー(2023年9月破産、負債80億円)。被害者(債権者)は約4万6,000人に及ぶ。次いで、「脱毛ラボ」運営の(株)セドナエンタープライズ(2022年8月破産、負債60億円)は約3万人、「銀座カラー」運営の(株)エム・シーネットワークスジャパン(2023年12月破産、負債58億5,700万円)は約10万人だった。他の業者が救いの手を差し伸べることはあるが、多くの被害者が泣き寝入りだ。

 国民生活センターが2021年12月に公表した消費者へのアドバイスは、「脱毛エステの長期間にわたる契約は『解約しなければならないとき』も想定して慎重に」と警鐘を鳴らし、トラブルになった時には消費生活センターに相談するよう呼びかけている。
 有名人などを広告塔に使い、契約時に多額の前受金を集め、倒産すると個人客が被害を受ける。前払金の脱毛サロンやエステ事業者は、決算内容を公開し、債務超過の場合は一定の前払金を規制するなどの仕組み作りも検討すべきだろう。「前受金保全措置」をしているのかなど、若者でもわかりやすく、安全な契約方法を構築し、業界全体で信用回復に努めることが必要だ。

※本調査は、日本産業分類の「エステティック業」の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。脱毛、痩身、美肌などを含む。

脱毛サロンなどエステティック業の倒産 年次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

3

  • TSRデータインサイト

チャプター11をめぐる冒険 ~ なぜマレリはアメリカ倒産法を利用したのか ~

ずっと日本にいるのに時差ボケが続いている。  「マレリのチャプター11が近いから関連サイトをチェックし続けろ」と6月6日に先輩に言われて以降、私の生活はアメリカ時間だ。

4

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

5

  • TSRデータインサイト

定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。東京商工リサーチが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。

TOPへ