• TSRデータインサイト

京葉銀行 取引先の増収増益ランキングで全国トップ ~ 人員増で対面営業強化、 店舗数も維持へ インタビュー(後編) ~

―効果的な支援は

 大きな効果が出ているのは、法人営業部が導入したαBMS(アルファバンク ビジネス マッチング システム)だ。顧客から取引先の紹介を求められることが多く、このビジネスマッチングのプラットフォームを使って情報を一元化している。
 例えば建設業で下請け先を探してくれる企業や、デジタル化やICTの相談に乗ってくれる企業など、様々な情報をαBMSに登録している。登録している提携先は200社以上あり、顧客の悩みのほとんどに対応でき、課題解決につながっている。

―増収増益ランキング1位の想いは

 率直に非常に喜ばしい結果と思っている。2024年3月までの中期経営計画で、基本戦略の一つに「課題解決型営業の強化」があった。プラスαの価値を提供してきたことで、顧客からの支持や課題解決による支援力を発揮できたという成果が数字として現れたのではないか。

―新たな中期経営計画は

 第20次中期経営計画(2024年4月から2027年3月までの3年間)は、経営計画の策定サポートやビジネスマッチンなどを駆使したオンリーワンのソリューションを提供していく。また、地方自治体や大学、研究機関などと連携を強化していくほか、店舗営業体制の見直しも進めていく。
 営業担当者の分業で専門性を高め、連携した店舗展開で、対面での顧客接点を強化する。店舗の拠点数は維持していく予定だ。
 また、次世代勘定系システムの稼働が、来年の1月に控えている。これを起点に、店頭オペレーション改革で効率化を加速する。営業人員の増強に向け、専門性の向上と地域特性に応じた戦略的な人員配置を行う。

―営業人員の増強について

 営業人員を250人増やす。事務と営業を分業化し、専門性を高めていく方針だ。コンサルやデジタル、M&Aのストラクチャー、事業承継など専門人材の育成を目指し、キャリアコース制の導入を進めていく。自身が描くキャリアに沿った資格や知識、研修等を整備する。また、キャリア採用や女性活躍推進など、人財育成を計画的に進める。

―りそなホールディングスとの業務提携は

 りそなHDとの戦略的業務提携(編集注1:2021年8月提携開始)は、シンジケートローンやファンドラップの販売、ビジネスマッチングの商談会の連携などを進めている。
 提携して2年半を経過しているが、2024年3月時点で、提携効果は約50億円。2027年3月までの100億円に向け、順調に推移し、達成できる進捗だ。

―マイナス金利の解除や金利上昇の影響は

 コロナの影響の緩和や業績改善、原価高騰の影響などで運転資金ニーズが出てきた。
 金利上昇については、新聞報道などがなされるなかで、各企業も一定の(金利上昇の)理解があるのではないか。短期プライムレートが改定され、金利は上がってきているが、取引先に大きな抵抗感はなく、(金利上昇による)支援の取り組みに大きな方針変更はない。
 ただ、景気などの動向でさらなる金利上昇の可能性がある。特に、借入負担の大きな業種である不動産や不動産賃貸、設備産業などには金利上昇の影響も考慮して対応していく。
 一方、金利上昇に抵抗感がある顧客もいる。納得いただけるよう、本業支援の強化や付加価値の高いサービスを提供することが大事だ。

―事業承継やM&Aの問題の取り組みは

 後継者難はすでに問題となっている。銀行にも後継者がいないという相談が相当増えており、5名体制のチームで対応している。
 外部専門会社への出向から戻ってきた担当者などで構成しているが、今後も毎年人数を増やしていかないと追いつかない状況だ。毎年、1.5倍ぐらい案件相談が増えているのでそのニーズに対処する必要がある。
 M&Aは、グループの京葉銀キャピタル&コンサルティングが担当している。後継者不在で、会社を買いたい、売りたいという相談がどんどん増えているので、グループと連携して課題を解決している。

―私的整理や経営者保証など新たな動きは

 私的整理における第三者支援専門家の取り組みは今後も確実に増えていくと思っている。破産や民事再生など法的整理という選択だけではなく、次に繋がるような事業再生ガイドラインなど私的整理を活用するという柔軟な考え方に変えていく必要がある。
 ただ、私的整理では、粉飾決算や経営者の協力が得られないなど対応が難しいケースがある。また、経営者保証ガイドラインで、適正なインセンティブ資産の見極めなど、判断が難しいケースもある。これらをクリアできれば、私的整理が進んでいくのではないか。


―千葉県内の今後の経済情勢

 足元では倒産件数も少し増えている。良くなっているところもあるが、もうしばらくは今の状態が続きそうだ。その中で、廃業などの相談があれば早めに支援し、活性化協議会なども活用していく。
 千葉県は農業や漁業、工業、商業のバランスが取れており、恵まれたマーケットと考えている。地元の企業への融資をしっかりと継続し、半年、一年ではなく、三年後、五年後、十年後を見据えた潜在的なニーズをしっかりと聞いて、支店と本部が一体となって進めていきたい。



 京葉銀行は、2023年3月に創立80周年を迎えた。2033年の創立90周年に向けた長期ビジョンで、社会価値と経済価値の両立を進める意向だ。県内企業の成長と不芳企業の事業再生など、京葉銀行に求められる役割は大きい。金利のある世界など、経済環境が目まぐるしく変化する時代こそ、京葉銀行の支援アクションへの期待が高まっている。


京葉銀行 千葉みなと本部(TSR撮影)


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年11月1日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「人手不足倒産予備軍」  ~ 今後は「人材採用力」の強化が事業継続のカギ ~

賃上げ圧力も増すなか他社との待遇格差で十分な人材確保ができなかった企業、価格転嫁が賃上げに追い付かず、資金繰りが限界に達した企業が事業断念に追い込まれている。  こうした状況下で「人手不足」で倒産リスクが高まった企業を東京商工リサーチと日本経済新聞が共同で分析した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「人手不足」倒産 359件 サービス業他を主体に、年間400件に迫る

深刻さを増す人手不足が、倒産のトリガーになりつつある。2025年11月の「人手不足」倒産は34件(前年同月比70.0%増)と大幅に上昇、6カ月連続で前年同月を上回った。1-11月累計は359件(前年同期比34.4%増)と過去最多を更新し、400件も視野に入ってきた。

3

  • TSRデータインサイト

【社長が事業をやめる時】 ~消えるクリーニング店、コスト高で途絶えた白い蒸気~

厚生労働省によると、全国のクリーニング店は2023年度で7万670店、2004年度以降の20年間で5割以上減少した。 この現実を突きつけられるようなクリーニング店の倒産を聞きつけ、現地へ向かった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「税金滞納」倒産は147件 資本金1千万円未満の小・零細企業が約6割

2025年11月の「税金(社会保険料を含む)滞納」倒産は10件(前年同月比9.0%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。1-11月累計は147件(前年同期比11.9%減)で、この10年間では2024年の167件に次ぐ2番目の高水準で推移している。

5

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

TOPへ