• TSRデータインサイト

『後継者難』倒産40件、事業承継の支援が急務 ~ 2022年5月『後継者難』倒産の状況調査 ~

 2022年5月の後継者不在による『後継者難』倒産は、40件(前年同月比11.1%増)で、2022年では3月(50件)に次いで2番目に多かった。倒産全体(負債1,000万円以上、524件)の7.6%を占め、前年同月(7.6%)と同水準となった。
 要因別では、代表者の「死亡」が23件(構成比57.5%)と6割近くを占め、次いで、「体調不良」が9件(同22.5%)で、この2要因で『後継者難』倒産の8割(同80.0%)を占めた。
 産業別では、最多がサービス業他の15件(前年同月比50.0%増、構成比37.5%)。以下、建設業9件(前年同月比28.5%増)、製造業8件(同300.0%増)の順。
 資本金1千万円以上5千万円未満が18件(同50.0%増)、同1億円以上が5月では調査を開始した2013年以降で初めて発生し、後継者問題が次第に広がりをみせている。
 2021年の経営者の平均年齢は62.77歳(前年62.49歳)で、経営者の高齢化が進む一方、後継者の育成や事業承継まで手が回っていない中小企業は多い。業績回復が遅れるなか、円安進行や資源高、人手不足など新たな問題も浮上している。山積する経営課題に対し、中小企業が独自に対応することは難しく、政府や金融機関など外部との連携による支援が必要になっている。

  • 本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2022年5月の『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。

『後継者難』倒産40件、全倒産に占める構成比は7.6%

 2022年5月の『後継者難』倒産は40件(前年同月比11.1%増)で、5月では3年連続で前年同月を上回った。
 コロナ禍の資金繰り支援効果が薄れるなか、企業倒産は2カ月連続で前年同月を上回り、底打ちの兆しが見えてきた。そうしたなか、代表者の高齢化や後継者がいないことに起因した『後継者難』倒産の構成比は高水準をたどっている。
 後継者の不在が、企業のリスクとして顕在化している。金融機関では代表者の高齢化に加えて、後継者(候補)の有無が融資の際の選別要因にもなっており、設備資金など長期資金の貸出へのハードルを高めている。また、代表者の病気や死亡が、事業継続を断念する要因にもなっている。
 コロナ禍で経営環境が大きく変化した。こうした環境下では状況に即した柔軟な経営が求められている。後継者不在や事業承継の問題は、資金力や経営革新力に乏しい中小・零細企業が独自に解決することは難しい。政府や自治体、金融機関や支援機関などの外部機関との連携が、ますます重要になっている。

後継者難

【要因別】「死亡」と「体調不良」で8割

 要因別では、最多が代表者などの「死亡」の23件(前年同月比27.7%増)で、5月では調査を開始した2013年以降、初めて20件台に乗せた。『後継者難』倒産に占める構成比は57.5%で、前年同月(50.0%)より7.5ポイント上昇した。
 「体調不良」は9件(前年同月比18.1%減、構成比22.5%)だった。
 代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計32件(前年同月比10.3%増)で、5月度では過去最多となった。『後継者難』倒産に占める構成比は80.0%で、前年同月の80.5%より0.5ポイント低下した。
 このほか、「高齢」が前年同月と同件数の5件だった。
 代表者の高齢化が進むなかで、代表者などの「死亡」や「体調不良」が、事業運営上の大きなリスクとなっている。

後継者難

【産業別】10産業のうち、5産業が増加

 産業別は、10産業のうち、建設業、製造業、卸売業、情報通信業、サービス業他の5産業が前年同月を上回った。減少は、農・林・漁・鉱業、小売業、不動産業、運輸業の4産業だった。
 最多は、サービス業他の15件(前年同月比50.0%増)で、5月度としては2年連続で前年同月を上回り、調査を開始した2013年以降で最多となった。
 次いで、建設業が9件(同28.5%増)で、5月度としては3年連続で前年同月を上回り、最多を記録した。
 このほか、製造業が8件(同300.0%増)、卸売業が4件(同100.0%増)、情報通信業が1件(前年同月ゼロ)で、それぞれ2年ぶりに前年同月を上回った。
 一方、農・林・漁・鉱業がゼロ(前年同月1件)で6年ぶり、小売業が2件(前年同月比75.0%減)、不動産業が1件(同80.0%減)、運輸業がゼロ(前年同月1件)で3年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
 金融・保険業は、2013年以降、5月度としては発生していない。
 業種別では、土木工事業3件(前年同月ゼロ)、塗料卸売業とラーメン店が各2件(同ゼロ)など、計30業種で前年同月を上回った。

後継者難

【形態別】破産が8割超

 形態別は、最多が「破産」の34件(前年同月比±0.0%、構成比85.0%)だった。また、特別清算は2件(前年同月1件)で、消滅型の倒産が36件(同35件)と9割(90.0%)を占めた。
 再建型の「会社更生法」「民事再生法」は、5月としては2013年以降、発生していない。
 業績回復が遅れるなかで、後継者の育成や事業承継の準備は後回しとなっていて、代表者に不測の事態が生じた場合、事業継続が困難となるため、大半が「破産」を選択している。

後継者難

【資本金別】1億円以上が5月度では初めて発生

 資本金別は、「1千万円未満」が19件(前年同月比13.6%減、構成比47.5%)だった。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」が18件(前年同月比50.0%増)、「5千万円以上1億円未満」が2件(前年同月2件)。「1億円以上」が1件で、5月度としては調査を開始した2013年以降で、初めて倒産が発生した。事業規模に関係なく、事業承継の問題が浮上している。

後継者難

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ハウスメーカーの倒産、26年上半期9割増の衝撃 ~ 踏み切れない抜本再生、施主の権利保護も重要 ~

コスト高や人手不足などでハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産が急増している。2026年上半期(1-6月)は118件発生し、前年同期から約9割増えた。

2

  • TSRデータインサイト

倒産と無縁の税理士業界に異変、2026年上半期は4件発生 粉飾は詐欺罪も、コンプラ違反と健康問題がリスクに

過去、税理士事務所の倒産は半年で、概ね1~2件にとどまっていた。景気状況に相関せず、倒産と無縁の税理士業界だったが、2026年上半期(1-6月)はすでに4件発生した。

3

  • TSRデータインサイト

エブリライブの元従業員、「突然の解雇」に困惑

6月初旬から連絡が取りにくくなっているライブ配信のエブリライブ(株)(東京都港区)が、同時期に大半の従業員を解雇していたことがわかった。  解雇を通知の際、エブリライブ側は従業員に「破産予定のため」と説明したという。解雇された元従業員が東京商工リサーチの取材に応じた。

4

  • TSRデータインサイト

2026年上半期「医療機関」倒産 増勢続く 上半期で2番目の38件、「後継者難」は最多

医療機関の倒産が止まらない。2026年上半期(1-6月)に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は、38件(前年同期比15.1%増)と大幅に増加した。上半期では、2006年以降の20年間で、2024年と2025年の33件を上回り、2009年の39件に次ぐ2番目の高水準となった。

5

  • TSRデータインサイト

愛媛県のいよぎんHDと愛媛銀が経営統合へ  メインバンク取引社数 金融Gでは国内21位に

愛媛県内にある企業のメインバンクシェア57.5%(県内メインバンク取引社数1万966社)の伊予銀行を傘下に持ついよぎんホールディングスと、県内2位で18.5%(同3,542社)の愛媛銀行が、7月24日開催の取締役会で経営統合を付議することを発表した。

TOPへ