• TSRデータインサイト

「人手不足」関連倒産(8月)

 2020年8月度の「人手不足」関連倒産は33件(前年同月比2.9%減)だった。5月から4カ月連続で前年同月を下回り、1-4月累計は191件(前年同期比61.8%増)に対し、5-8月累計は127件(同11.8%減)と状況が一変している。ただ、1-4月がハイペースだったことで、2020年1-8月累計は318件(同21.3%増)と、年間最多を記録した2019年(426件)を上回っている。
 9月1日、厚生労働省が発表した7月の「有効求人倍率」は、6年3カ月ぶりの低水準となる1.08倍(前月比0.03ポイント減)で、新型コロナ感染拡大による雇用情勢の悪化が鮮明となった。
 「人手不足」関連倒産は、「求人難」や「従業員退職」が落ち着く一方、「後継者難」が増加している。これは後継者不在の企業では、コロナ禍で経営悪化が続く場合、事業継続を断念して廃業や法的整理を選択する可能性が高いことを示唆している。


8月の「人手不足」関連倒産は33件、4カ月連続で前年同月を下回る

 2020年8月の「人手不足」関連倒産は33件(前年同月比2.9%減)で、4カ月連続で前年同月を下回った。4カ月連続の前年割れは、2017年11月-2018年2月以来、2年6カ月ぶり。
 内訳は、代表者や幹部役員の死亡、入院などの「後継者難」が23件(前年同月19件)で最多。次いで、幹部や中核社員の独立、転職などで事業継続に支障が生じた「従業員退職」が5件(同4件)、人員確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」が4件(同9件)、賃金上昇が収益を圧迫した「人件費高騰」が1件(同2件)だった。

産業別 建設業が最多

 産業別では、最多が建設業の8件(前年同月9件)。次いで、サービス業他7件(同6件)、製造業(同2件)と卸売業(同7件)が各4件、小売業(前年同月同数)と情報通信業(同2件)が各3件、不動産業(同ゼロ)と運輸業(同5件)が各2件の順。農・林・漁・鉱業(同ゼロ)と金融・保険業(同ゼロ)は2年連続で発生がなかった。

地区別 7地区で発生

 地区別では、9地区のうち7地区で発生した。関東20件(前年同月16件)を筆頭に、東北(同5件)と中部(同1件)、中国(同2件)が各3件、北海道2件(同3件)、近畿(同4件)と九州(前年同月同数)が各1件の順。北陸(同2件)と四国(同ゼロ)は発生がなかった。

2020年1-8月の要因別、「後継者難」型が約8割を占める

 2020年1-8月の「人手不足」関連倒産は318件(前年同期比21.3%増、前年同期262件)で、過去最多ペースをたどっている。
 内訳は、「後継者難」が244件(同59.4%増、同153件)、「求人難」が31件(同48.3%減、同60件)、「従業員退職」が27件(同10.0%減、同30件)、「人件費高騰」が16件(同15.7%減、同19件)。唯一増加した「後継者難」は全体の約8割(構成比76.7%)を占める。

2020年1-8月、サービス業他が唯一70件台で最多

 2020年1-8月の産業別は、サービス業他が73件(前年同期比8.7%減、前年同期80件)で最多。次いで、建設業が69件(同40.8%増、同49件)、卸売業47件(同51.6%増、同31件)、製造業44件(同51.7%増、同29件)、小売業37件(同54.1%増、同24件)、運輸業19件(同20.8%減、同24件)と続く。
 2020年1-8月の地区別では、9地区のうち北陸(3→8件)、中国(12→30件)、北海道(10→18件)、東北(19→24件)、近畿(33→41件)、関東(101→120件)の6地区が増加。一方で、四国(10→8件)、九州(46→41件)が減少、中部は前年同期同数の28件だった。

人手不足

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ