栄枯盛衰、その一反を織りなした先に
百貨店はかつて高級ブランドがこぞって出店していた。百貨店にテナントを持つことがステータスで、高級ブランドの代名詞でもあった。だが、現在の百貨店は2026年以降、全国で8店舗が閉店(予定を含む)するなど凋落産業の一つにあげられる。全国の主な百貨店58社の2025年度売上高は、上位20社のうち、15社が前年度を下回っている。
百貨店の威光が陰るなか、全国の主要都市にある百貨店にテナントで入るブランドと取引していた生地卸業者が破産した。
見出した活路の消失
この生地卸業者は、ヨーロッパなどから輸入した高品質の生地卸を柱に、百貨店でオリジナルブランドの衣料品・雑貨を扱う服飾店を主力取引先にしていた。この生地卸業者の扱う製品は「高品質で高級ライン」と評価されていた。高級ライン生地のほか、アジア市場のトレンド素材まで幅広く扱い、協力工場でOEM生産にも対応した。
しかし、得意先が入居する百貨店はコロナ禍で売上が激減し、その後も消費スタイルの変化で厳しい事業環境が続き、あおりを受けた。少ないパイの取り合いになり体力のない中小・零細企業は新たな活路を見つけなければ生き残りは難しい。成熟・衰退市場では淘汰や再編が進み、規模の大きくない企業は吸収・淘汰の対象となるからだ。
新たな事業や市場に打って出るか、はたまた企業体力のある大手は再編で市場制圧にかかる。この生地卸業者は年商10億円をあげた時期もあったが、コロナ禍で主力事業が不振に陥り、最近は数億円に落ち込んでいた。
それでも売上を伸ばした部門があった。強みの高品質な素材卸を生かし、耐久性や機能性が必要とされるスポーツ用の衣料品部門だった。ところが、関係者によると、社内の主力部門との間で不協和音が生じ、「社内で分断があった」という。こうして、スポーツ用衣料品部門の従業員の一部が退職し、その後は販売不振から在庫過多が進行し資金繰りが悪化した。代表者の役員報酬の引き下げなどで対応したが、支えきれず破産を申請した。
かつて栄華を誇っても、衰退する業界は数多ある。現状維持に甘んじず新たな事業や市場に乗り出すには勇気がいる。ただ、事業と屏風(びょうぶ)は広げ過ぎると倒れるリスクがある。とはいえ飛び地の事業での成功や、本業とシナジーのある事業で強みを生かして新たな市場で独自の地位を築くこともあり得る。
生地卸業者は新たな活路を見出したかにみえたが、結果的に飛躍できなかった。これもまた教訓だろうが、なんとも言えない虚しさが残った。