「経営計画」策定率は62.1%、実行力にバラつき 外部支援者との連携は計画達成に「プラス」
~ 2026年 「経営計画の策定と実行に関するアンケート」調査 ~
これまでに経営計画を策定したことのある企業は62.1%に達することがわかった。ただ、業種ごとにばらつきが大きく、ネット通販などの「無店舗小売業」や「広告業」は約半数が策定していない。業種の特性上、扱い品や取引業界などの外部環境に左右されやすいことが影響しているとみられるが、事業の持続可能性を高め、業容の発展には、計画策定と実行(実効)力の向上が欠かせないとの考えが広がっているようだ。
成長型経済の実現に向け、業種や企業規模を問わず、取り組む機運をさらに醸成することが求められる。
東京商工リサーチ(TSR)は、経営計画の策定と実行度に関するアンケートを実施した。策定率は6割を超え(62.1%)、アクションプランを「半分(51%)以上実行した」企業は55.1%だった。
また、外部支援者と連携は、アクションプランや数値目標(売上高、営業利益、付加価値額など)の実行・達成に「プラスだった」との回答は、ともに7割を超えた。
計画策定への取り組み拡大とともに、実行段階では「企業が孤立しない」取り組みも重要だ。
外部支援者から受けたい支援では、「補助金・公的支援制度に関する情報提供、申請支援」が最も多かった。ただ、こうした取り組みは以前から行われており、補助金や公的支援制度が複雑でニーズが高いのか、外部支援者が対応可能な支援の幅を伝えきれていないのか、真意を掴みにくい。改めて、支援策を立案する行政も含めた再点検が必要だろう。
※本調査は、2026年7月31日~8月11日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答6,047社を集計・分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
Q1.貴社は過去に経営計画(向こう3年以上を対象にした業績・数値目標、達成に向けた具体的なアクションプラン)を作成しましたか?複数策定している場合は、直近のものを念頭に回答ください(択一回答)
「策定した」は62.1%、企業規模で格差
最多は「過去策定したことはない」の31.4%(6,047社中、1,899社)だった。以下、「過去1年以内に策定した」の24.8%(1,504社)、「1年超3年以内に策定した」の19.7%(1,197社)と続く。「策定した」は62.1%(3,757社)だった。
「策定した」と回答した企業を業種別(中分類、母数10以上)でみると、トップは「貸金業,クレジットカード業等非預金信用機関」の90.9%(11社中、10社)だった。一方、「策定したことはない」(母数5以上)は、NPO法人などを含む「政治・経済・文化団体」の52.8%(123社中、65社)の構成比が最も高かった。

Q2.Q1で5年以内に「策定した」と回答された方に伺います。策定にあたり、外部支援を受けましたか?外部支援とは、金融機関又は支援専門家等から受ける支援で、経営計画の内容、数値目標、具体的な取組等の検討に関する助言や作業を指します(融資や保証提供、一般的な情報提供は含みません)(択一回答)
「受けていない」が8割近く
5年以内に経営計画を「策定した」企業のうち3,198社から回答を得た。
外部支援を「受けた」は21.4%(685社)、「受けていない」は76.8%(2,459社)だった。
規模別でみると、大企業で「受けた」は15.5%(361社中、56社)、中小企業では22.1%(2,837社中、629社)で、7ポイント近く開きがあった。
「受けた」と回答した企業を業種別(規模問わず、中分類、母数10以上)でみると、トップは「繊維工業」の48.1%(27社中、13社)で唯一4割台だった。「受けていない」は「飲料・たばこ・飼料製造業」の93.7%(16社中、15社)が最も多かった。

Q3.Q2で「受けた」と回答された方に伺います。策定したアクションプランはどの程度実行されていますか?(択一回答)
「半分(51%)以上実行した」は55.1%
外部支援を「受けた」企業のうち676社から回答を得た。
最多は、「一部実行した(21-50%)」の35.7%(242社)だった。「すべて実行した」は3.5%(24社)、「半分(51%)以上実行した」は55.1%(373社)。
規模別でみると、「半分以上」は、大企業で49.0%(55社中、27社)だったのに対し、中小企業で55.7%(621社中、346社)に達した。
「半分以上」と回答した企業を業種別(規模問わず、45分類、母数5以上)でみると、トップは「金融・保険業」の100.0%(9社中、9社)だった。「ほとんど(1-20%)」+「全く実行できていない(0%)」は、「鉄鋼業」と「飲食業」のそれぞれ20.0%(5社中、1社)が最多。

Q4.Q2で「受けた」と回答された方に伺います。策定した経営計画上、最も重要と位置づけた数値目標(売上高、営業利益、付加価値額、生産性、借入金残高など)について、進捗(達成率)はどの程度ですか?(択一回答)
宿泊業の進捗度合いが低く
外部支援を「受けた」企業のうち676社から回答を得た。
「計画を上回っている(101%以上)」+「おおむね計画どおり(91-100%)」は50.5%(342社)に達した。一方、「大幅に下回っている(70%以下)」は11.2%(76社)だった。
「計画を上回っている」+「おおむね計画どおり」を業種別(45分類、母数5以上)でみると、トップは「プラスチック製品製造業」の87.5%(8社中、7社)だった。「大幅に下回っている」は、「宿泊業」の60.0%(5社中、3社)の構成比が最も高かった。

Q5.Q2で「受けた」と回答された方に伺います。外部支援を受けて経営計画を策定した後、外部支援者から計画の実行支援(進捗確認、課題整理、計画見直し、取引先・人材・専門家の紹介など)を受けましたか?(択一回答)
「受けていない」が36.6%で最も多く
外部支援を「受けた」企業のうち676社から回答を得た。
最も多かったのは、実行支援を「受けていない」の36.6%(248社)だった。「定期的・継続的」+「必要に応じて複数回」は51.9%(351社)と半数を超えた。
業種別(45分類、母数10以上)でみると、「定期的・継続的」+「必要に応じて複数回」のトップは「飲食料品製造業」の67.8%(28社中、19社)だった。「受けていない」は、「情報サービス・制作業」の56.5%(23社中、13社)の構成比が最も高かった。

Q6.Q5で「受けた」と回答された方に伺います。外部支援者の実行支援はアクションプランの実行にどの程度効果がありましたか?(択一回答)
「プラス」が8割超
実行支援を「受けた」企業のうち412社から回答を得た。
最も多かったのは、「どちらかというとプラスだった」の57.2%(236社)だった。「とてもプラスだった」も含めると81.0%(334社)と8割を超えた。
業種別(45分類、母数5以上)でみると、「プラス」のトップは、家具や医薬品などを扱う「その他の小売業」(15社中、15社)、「繊維・衣服等卸売業」(7社中、7社)、「金融・保険業」(同)の100.0%だった。一方、「マイナス」の構成比が最も高かったのは、「化学工業,石油製品製造業」の16.6%(6社中、1社)だった。

Q7.Q5で「受けた」と回答された方に伺います。外部支援者の実行支援は数値目標の達成にどの程度効果がありましたか?(択一回答)
「プラス」が7割超
実行支援を「受けた」企業のうち412社から回答を得た。
最も多かったのは、「どちらかというとプラスだった」の53.1%(219社)だった。「とてもプラスだった」も含めると71.1%(293社)だった。7割を超えたが、アクションプランの実行への効果よりは低位な結果となった。
業種別(45分類、母数5以上)でみると、「プラス」の構成比が最も高かったのは「その他の小売業」の93.3%(15社中、14社)だった。一方、「マイナス」のトップは、「化学工業,石油製品製造業」の16.6%(6社中、1社)だった。

Q8.貴社は、金融機関や支援専門家からどのような経営支援を受けたいですか?以下から3つ選択ください(複数回答)
補助金などの情報提供が最多
最多は、「補助金・公的支援制度に関する情報提供、申請支援」の35.9%(6,004社中、2,160社)だった。一方で、「特にない」が29.1%(1,751社)と3割近くに達した。
その他では、「AIを活用した業務効率向上と省人化」(福岡県、技術サービス業、資本金1億円未満)や「BCPやSCS(TSR注:事業継続計画とサプライチェーン・セキュリティ評価制度)の知見」(東京都、機械器具卸、資本金1億円未満)など。

今回の調査で、「広告業」は経営計画を「策定していない」、もしくは「策定した」ものの外部支援者との連携の比率が低いことがわかった。また、「飲食業」はアクションプランや数値目標の実行・達成に課題を有している。
計画に基づく経営や外部支援者のリーチ度合いは、依然として業種により大きな隔たりがあることを示唆している。外部支援者の理屈や支援しやすい業種の思い込みなど、支援を受ける企業以外の事情が介入していると、地域経済を広く底上げすることは出来ない。外部支援者側のリーチ力を高めるには、地域や機関を跨いだ成功事例の共有などが欠かせない。
一方で、外部支援者と連携した場合の企業側の満足度は高いようだ。こうした点もアピールしながら、企業が支援を受けたくなる機運を醸成し、取り組みをより深化させる必要がある。