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上場企業の「不適切会計」開示 27社・27件 上半期は「粉飾」が12件、前年同期の3倍増

~ 2026年上半期 全上場企業「不適切な会計・経理の開示企業」調査 ~


 2026年上半期(1-6月)に「不適切な会計・経理」(以下、不適切会計)を開示した上場企業は、27社(前年同期比3.5%減)、件数は27件(同6.8%減)で、そろって前年同期を下回った。
 2008年の集計開始以来、上半期では2022年の38社(38件)をピークに減少が続いている。だが、減少率は前年同期(社数15.1%減、件数12.1%減)に比べて鈍化した。また、「粉飾」が12件と前年同期の3倍に急増し、監査法人の慎重な対応も透けてみえる。

 2026年上半期(1-6月)に開示された上場企業の不適切会計27件の内訳は、売上過大や実態のない取引の計上などの「粉飾」(前年同期比200.0%増)、会計処理ミスなど「誤り」(同25.0%減)が各12件だった。役職員による着服横領は3件(同66.6%減)だった。
 業種別の社数は、最多が「製造業」(前年同期同数)、「情報通信業」(前年同期比40.0%増)で各7件だった。次いで、「サービス業」が6件(同20.0%増)だった。
 東京証券取引所(東証)は2026年1月、上場企業などで不適切会計などの不祥事の発覚件数が増加傾向にあるとし、上場企業の内部統制システムの強化や資本市場の信頼性向上を目的に「内部統制強化・不祥事予防に向けたハンドブック」を公表した。ハンドブックは、不祥事の内容や再発防止策を、不祥事の原因ごとに分類してまとめられている。東証は、不祥事が発覚した企業だけでなく、発生していない企業の未然防止への活用も想定している。上場企業は、不祥事の発生原因を早期に察知し、未然防止の実施を求められている。
※本調査は、自社開示、金融庁・東京証券取引所などの公表資料に基づく。上場企業(上場廃止企業は、開示時に上場していた企業)を対象に、「不適切な会計・経理」で過年度決算に影響が出た企業、今後影響が出る可能性を開示した企業を集計した。
※同一企業が調査期間内に内容を異にした開示を行った場合、社数は1社、件数は2件としてカウントした。
※業種分類は、証券コード協議会の業種分類に基づく。上場の市場は、東証プライム、スタンダード、グロース、名証プレミア、メイン、ネクスト、札証、アンビシャス、福証、Q-Boardを対象にした。 


上場企業の「不適正会計」開示 2026年上半期は27社(27件)

 2026年上半期に不適切会計を開示した上場企業は27社、27件だった。大手通信キャリアのKDDI(株)(プライム)は2026年1月、子会社2社の広告代理事業で架空取引の可能性を認め、特別調査委員会を設置した。3月に公表した調査報告書では、同事業の売上99.7%が架空取引だったことが明らかになった。また、本件に関連し、バリュークリエーション(株)(グロース)は2026年2月20日、架空取引があったKDDI子会社との取引の存在を公表。これに伴い、バリュークリエーションも特別調査委員会を設置した。同年5月に公表された調査報告書では、2019年2月期以降で累計約16億円の売上高が過大計上だったことが判明した。

不適切会計開示企業(1-6月)

内容別 「粉飾」は前年同期比3倍の12件

 内容別では、売上の過大計上や実態のない取引の計上などの「粉飾」(前年同期比200.0%増、構成比44.4%)、会計処理ミスなどの「誤り」(同25.0%減、同44.4%)が各12件だった。役職員による着服横領は3件(同66.6%減、同11.1%)だった。
 2025年に不適切会計が発覚した(株)オルツ(2025年8月31日上場廃止、当時グロース)やニデック(株)(プライム)などの影響で、監査法人による監査がより慎重になり、粉飾の発覚が増加した可能性がある。
 一方、「誤り」については上記事例などの影響で、上場企業の会計処理が慎重になったことが減少の背景にあるとみられる。

不適切会計 内容別(1-6月)

発生当事者別 「会社」が12件でトップ

 発生当事者別では、最多は「会社」の12件(前年同期比20.0%減、構成比44.4%)だった。「会社」の内訳は誤りが8件、粉飾が4件だった。
 次いで、「子会社・関係会社」は8件(同60.0%増、同29.6%)で、粉飾、誤りが各4件。
 「役員」は4件(前年同期1件、構成比14.8%)で、粉飾、着服横領が各2件だった。
 「従業員」は3件(前年同期比62.5%減、構成比11.1%)で、従業員単独による粉飾が2件、着服横領が1件だった。

不適切会計開示企業 発生当事者別(1-6月)

市場別 「スタンダード」が11社で最多

 市場別の最多は「スタンダード」の11社(前年同期比10.0%増、構成比40.7%)だった。次いで、「プライム」が10社(同16.6%減、同37.0%)、「グロース」が5社(前年同期同数、構成比18.5%)と続く。
 地方上場の1社は(株)エスポア(名証ネクスト)で、監査法人が5月27日、有価証券報告書および内部統制監査報告書を意見不表明とした。根拠としては、収益認識取引の実在性の疑義を挙げた。これを受けてエスポアは6月11日、第三者委員会を設置して調査すると発表した。だが、設置後に中立性・独立性に疑義が生じたとし、7月10日に委員を交代して第三者委員会を再設置、異例の展開となっている。

不適切会計開示企業 市場別(1-6月)

業種別 最多は製造業、情報通信業の7社

 業種別では、最多は「製造業」(前年同期同数、構成比25.9%)、「情報通信業」(前年同期比40.0%増、構成比25.9%)で各7社だった。次いで、「サービス業」(同20.0%増、同22.2%)、「不動産業」(同100.0%増、同7.4%)、「小売業」(前年同期ゼロ、構成比7.4%)の各2社が続く。「製造業」は、7社中4社が誤り、2社が粉飾、1社が着服横領だった。
 一方、「情報通信業」は7件中6件が粉飾で、粉飾が目立った。

不適切会計開示企業 業種別(1-6月)



 2026年上半期(1-6月)の不適切会計は、例年以上に架空取引や循環取引などの「粉飾」が目立った。不正確な決算書の公表は、投資家判断に大きな影響を及ぼすだけでなく、株式市場の信頼低下につながる。
 2025年に(株)オルツやニデック(株)のような歴史に残る粉飾決算が相次ぎ、ガバナンス強化が進んだほか、監査法人による監査がより慎重になったようだ。
 粉飾の事例では、「元従業員による架空売上の計上」や「過年度の不適切取引の疑義」など、過去に行われた不正会計がここにきて発覚や公表したケースも増えてきた。
 粉飾は、一度手を染めると、正常に戻すのは困難だ。粉飾した数値は貸借対照表に残るため、修正を試みる際に不自然な会計処理が浮き上がる。このため、粉飾決算が発覚した場合、その内容を誠実に開示し、再発防止策の策定が急務になる。また、これまで以上に投資家との対話を活発に行い、投資家を含むあらゆるステークホルダーからの信頼回復に努めることが重要になる。また、ステークホルダーも毅然とした対応が必要だ。
 一方、「誤り」による不適切会計は減少した。オルツやニデックなどの影響で、上場企業の会計処理や会計監査が慎重になったことが背景にあるとみられる。
 海外事業を展開する上場企業では、海外取引に複雑な会計知識が求められる。実際、会計処理のミスや粉飾では、海外子会社や国際取引に伴う事例もあり、不適切会計の内容も複雑化している。不適切会計を理由に内部統制の不備を公表する企業には、その原因として経理関連の専門人材の不足を挙げる企業も多い。会計処理が慎重になるなか、自社グループの業容にふさわしい人材の採用や育成など、人員体制強化に向けた取り組みの継続も重要になっている。 

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