待ったなしの「再生・廃業支援」の高度化 ~ 有限の支援人材、業種と地域性を加味した「トリアージ」 ~
2025年度に全国で倒産(負債額1,000万円以上)した企業は、1万505件(前年度比3.5%増)に達した。過剰債務を訴える中小企業も25.6%(※1)に達し、抜本再生や円滑な廃業に向けた取り組みは待ったなしだ。
一方で、公的な枠組みや地域金融機関など伴走支援側のマンパワーは限られ、窮境状態の企業のすべてに寄り添うのは難しい。さらに、こうした窮境企業の支援は、地域の雇用や取引先へのインパクトなど、それぞれ置かれた事情が異なり、画一的な対応が取りにくく、支援の高度化が待ったなしの状況だ。
※1 「倒産・業績予想」、「過剰債務」アンケート調査(2025年12月18日公表)
高度化したモニタリングや再生・廃業支援には、窮境度合いや地域性を見極めたトリアージが必要になる。
2025年に倒産した企業とそれ以外(生存企業)の経常利益は、倒産企業の倒産直前の経常利益率はマイナス3.0%だったのに対し、生存企業は8.8%(※2)だった。利益率は分析年ごとに上下するが、倒産企業の経常利益はマイナス圏に沈み、その状態が続いていることが特徴だ。東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースを基に、経常赤字が2期以上続いている企業を窮境と定義し、傾向を探った。
具体的には、日本標準産業分類(中分類)を基に、母数の20%以上が窮境(2期連続で経常赤字)と判定された業種を都道府県ごとに集計した。また、地域へのインパクトを探るため、雇用者数も加味した。
※2 2025年「倒産企業の財務データ分析」調査(2026年3月31日公表)
生活インフラの維持可能性へのリスクも
母数の20%以上が窮境と判定された業種を都道府県ごとに集計した。全国的に窮境にある業界では、「医療業」「社会保険・社会福祉・介護事業」が上位に並ぶ。窮境比率(2期連続で経常赤字の企業数/分析対象企業数)が20%を超える業種は、「医療業」が42都道府県、「社会保険・社会福祉・介護事業」で37都道府県だった。

「水運業」も窮境に陥っている企業が多い。窮境比率は、離島が多い岡山県が22.2%(18社中、4社)、広島県が31.2%(32社中、10社)、香川県が20.0%(10社中、2社)、愛媛県が32.5%(43社中、14社)と、瀬戸内4県はいずれも20%以上だった。また、鹿児島県も38.4%(13社中、5社)だった。
窮境企業のなかには、通勤通学で利用され地域の足として生活インフラの一部になっている企業、広島県の一大産業である自動車の海上輸送を担う企業も含まれている。

雇用への影響は
地域へのインパクトを探るため、雇用者数から影響が大きいとみられる業種を調査した。
鉄道路線が沖縄都市モノレール線のみの沖縄県は、バスやタクシーが移動を支えているが、「道路旅客運送業」の窮境比率が23.0%(13社中、3社)だった。沖縄県の窮境業種の雇用者数は医療業(34,078人)が最も多く、2番目が道路貨物運送業(5,972人)で、雇用面でも存在感が高いことがわかる。
窮境企業が多い一方で、雇用への影響が大きく、生活インフラに根差しており、トリアージの優先順は考慮する必要がありそうだ。

取引先への影響は
都道府県の特徴を、別視点からみるためサプライチェーンへの影響を加味した。窮境企業の取引社数(仕入・販売)は、「TSR企業相関ファイル」(取引情報データ)を活用した。
京都府は、西陣織や京友禅など、伝統的な繊維産業の集積地の1つで大手衣料品メーカーも複数所在する。だが、伝統工芸品の国内需要の長期的な縮小、安価なファストファッションとの競争激化に直面。原材料価格やエネルギーコスト、人件費の上昇も進む。
京都府内の繊維産業は、業績が低迷する企業も多い。窮境比率は「繊維工業」が21.2%(127社中、27社)、「織物・衣服・身の回り品小売業」が22.7%(22社中、5社)だ。
製造業(繊維工業)と小売業の窮境比率が高く、サプライチェーン全体に収益悪化の圧力が及んでいる可能性を示唆している。「繊維工業」は窮境比率20%以上の業種(分析対象企業数10以上)で最も取引先数が多い。
京都府は、「京都企業」とも呼ばれる電子部品や半導体などの世界大手の企業群もあるが、「電子部品・デバイス・電子回路製造業」の窮境比率は20.0%(70社中、14社)に達する。窮境比率20%以上の業種(分析対象企業数10以上)のうち、1社あたりの取引先数は「輸送用機械器具製造業」に次いで2番目に多く、支援が後手に回るとサプライチェーン全体に大きな影響を与える可能性がある。

支援側にも課題、効果的な支援が重要
今回の分析で、生活インフラを担う業種、地場産業との関係が深い業種など、事業の縮小や停止が地域経済に打撃を与えかねない業種でも窮境企業が多いことがわかった。地域金融機関などの伴走支援のマンパワーは限られ、企業が地域で果たす社会的役割と同時に、代替の難しさなどの視点がより一層重要となる。
この観点で重点支援先を選定すれば、そこから漏れる企業も当然発生してしまう。そうした企業に対し、窮境度がさらに深刻になる前に、事業再生や円滑な廃業、再生M&Aなどへの取り組みに繋げることも、地域経済には必要になっている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年6月24日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)