• TSRデータインサイト

2025年度の商号変更、過去最多の1万9,656社 ~ 売上高伸長も短期的には周知コスト重く ~

名は体を表す――。

 商号(会社名)は、ひと目でどんな会社かわかる名前が多かったが、最近は事業領域の拡大やグローバル戦略などで大胆に変更するケースが目立つ。
 東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースを活用し、2025年度(4-3月)に商号変更した企業を抽出したところ、1万9,656社(前年度比7.5%増)に達した(※1)。調査を開始した2022年度以降で最多を更新した。2025年度の上場企業では、Umios(株)(旧:マルハニチロ(株)、TSRコード:291065848、東証プライム)や、(株)クラフティア(旧:(株)九電工、東証プライム)など80社が変更した。

※1 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、2025年度(4-3月)に商号を変更したことが判明した企業を抽出した。

商号変更企業数の推移

サービス業他の商号変更が最多

 1万9,656社を産業別でみると、サービス業他が8,508社(前年度比9.1%増、構成比43.2%)で最も多く、飲食業などで商号変更した企業が多かった。
 商号変更率は、金融・保険業の0.82%(7万9,952社中、663社)が最高だった。投資ファンドが運営するSPC(特定目的会社)の変更が目立つ。
 大企業ほど商号変更に伴う事務手続きの時間やコスト負担は重い。だが、組織再編や持株会社への移行、イメージやグローバル戦略の浮揚など、イメージ転換の効果は大きい。

産業別 商号変更状況

売上高別10億円以上が4社に1社

 商号変更をする企業が増えているが、業績に良い影響は与えるのだろうか。今回、2022年度に商号変更が判明した企業のその後の3期業績(※2)を追った。

※2 2024年10月期から2025年9月期を最新期として、3期連続で業績が判明した企業を対象とした。

 商号変更した企業と企業全体の売上高伸長率を比較すると、伸長率10%以上100%未満では、商号変更した企業が29.4%に対し、企業全体は24.7%で、4.7ポイントの差がついた。商号変更そのものは直接、売上高に寄与する訳ではないが、イメージ転換が売上拡大のトリガーになる可能性を示している。
 さらに変更後の利益(最終利益)率を調査した。企業全体の利益率は2023年度6.2%、24年度8.8%、25年度6.5%と、毎年5%~8%の利益率を維持している。
 一方、商号変更した企業は、2023年度が3.9%だったが、24年度に0.6%へ大きく落ち込み、25年度は6.5%と大きく上昇した。22年度に商号を変更した大手製薬会社が24年度に巨額赤字を計上したことに起因している。
 ただ、それ以外の変更企業をみても、商号変更から数年は事務コストやマーケティング、広告などへの投資負担が大きく、利益を残しにくい構造だ。その後、新たな商号が浸透すると、認知度アップにつれて業績は回復テンポが上がっている。

売上高伸長率別2022年度に商号変更した企業 変更後の利益率の推移



 商号変更は企業ブランドの再構築や古いイメージ刷新、企業文化のアップデート、グローバル戦略など、目的に沿った効果もうかがえる。さらに、最近はホールディングス化に伴う組織改革もあり、新たな戦略やビジョンのアピールには有効といえる。
 事業規模によっては、商号変更を実施することにより短期的なコスト増を招くが、M&Aや業界再編などによる変更もあり、将来に向けたビジネス転換の手段としては有益な面も大きい。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年6月11日号掲載「取材の周辺」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

民事再生のアエラホーム、「施主保護」への数カ月 ~ 難しい抜本再生への導線、倒産村の矜持 ~

最盛期は年商200億円を超えるハウスメーカーに何が起き、法的申請の大義は何だったのか。東京商工リサーチ(TSR)が追った。

2

  • TSRデータインサイト

ハウスメーカーの倒産、26年上半期9割増の衝撃 ~ 踏み切れない抜本再生、施主の権利保護も重要 ~

コスト高や人手不足などでハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産が急増している。2026年上半期(1-6月)は118件発生し、前年同期から約9割増えた。

3

  • TSRデータインサイト

止まらない建設業の倒産、職別工事が総合工事を抜く ~ 施工力が「希少資源」、動き始めた内製化 ~

2025年の建設業の倒産は、2,014件(前年比4.6%増)で、4年連続で前年を上回り、2013年(2,421件)以来、12年ぶりに2,000件を超えた。 コロナ禍の2021年に1,065件と2000年以降では最少を記録。その後は増勢に転じ、わずか4年で約2倍に増加した。

4

  • TSRデータインサイト

街の歯医者さん6,590社 売上高が1兆円を突破 売上5億円未満が95.8%、業績は二極化が鮮明に

全国の主な「歯科診療所」(歯医者さん)6,590社の2025年の売上高合計は、1兆282億700万円(前年比3.8%増)、純利益合計は303億8,000万円(同4.1%増)で、人口が減少する中でも着実に市場を拡大していることがわかった。

5

  • TSRデータインサイト

2026年上半期「後継者難」倒産 過去最多の264件 「破産」が96.2%、代表の健康に関する倒産が85.6% 

2026年上半期(1-6月)に後継者不在が一因となった「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は、264件(前年同期比14.7%増)だった。上半期では、2024年以来、2年ぶりに前年同期を上回った。

TOPへ