事業再生研究機構がシンポジウム、企業価値担保の設定は「勲章」
5月30日、事業再生研究機構は、シンポジウム「新しい担保権制度の実務展望」を都内で開催した。倒産や再生、与信実務に大きな影響を与える新法として、2025年5月に「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律」(譲渡担保法)が成立し、27年12月までに施行される。また、今年5月25日に企業価値担保権の新設を定めた「事業性融資の推進等に関する法律」(事業性融資推進法)が施行された。
シンポジウムでは、新法の実務面での理解を推進するため、立法関係者や再生実務家、金融機関担当者などが登壇し、議論を交わした。オンライン視聴も含め、約220名が参加した。
多岐にわたる譲渡担保法の論点
シンポジウムは2部構成で、第1部は譲渡担保法をテーマに議論が交わされた。立法に携わった法務省民事局の笹井朋昭・民事法制管理官は、「譲渡担保契約は譲渡のいち類型で、目的物の性質に応じた譲渡の対抗要件が必要。これを前提として法律全体が構成されている」と新法の基本スタンスを解説した。
その後、倒産手続開始時における集合動産・集合債権譲渡担保の固定化(担保範囲の確定)がDIPファイナンス(事業再生のためのつなぎ融資)等に与える影響、譲渡担保法では法制度化されなかったファイナンス・リースの位置づけ等様々な論点について議論が展開された。
企業価値担保の設定は「勲章」
第2部のテーマとなった企業価値担保権は、検討の過程で「包括的担保法制」「事業成長担保権」など名称が移り変わった経緯がある。金融庁の水谷登美男・事業性融資推進室長は、法成立から施行までの間、事業の将来性を考慮した債務者区分・信用格付のあり方など、具体的な実務面の議論を深めたことを報告した。
第2部のパネルディスカッションでは、企業価値担保権が、「プロジェクトや買収ファイナンス」「経営者保証や不動産に依存しない運転・投資等向けファイナンス」「再生局面のファイナンス」のいずれにも有効であるとの認識が各登壇者より示された。
一方で、企業価値担保権の名称に「担保」と入っていることから一部で誤解も生まれているという。再生実務に詳しい粟田口太郎弁護士(アンダーソン・毛利・友常法律事務所)は、「企業価値担保権は、金融機関と企業の伴走に向けた、信頼を構築するためのツールだ。これまで(債権・動産)譲渡登記というと、信用情報として速報され、登記されるだけで烙印を押される“スティグマ”となっていた。そうではなく、企業価値担保権の設定は“勲章”という認識を広めたい」との見解を示した。
シンポジウム終了後、金融庁の水谷室長は東京商工リサーチの単独取材に応じた。水谷室長は、企業価値担保権について「件数目標はないが、すでに30件近い活用報告を受けている。継続的な伴走支援、事業性に基づく適切なリスクテイク、融資担当者の専門性向上などを後押しするこれまでの金融行政の延長だ。意義を広め、融資実務の発展に汗をかきたい」と述べた。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年6月12日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)