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経営責任を取る事業再生、ジュピターコーヒーは黒字化へ ~ ネクスト・キャピタル・パートナーズ 単独インタビュー ~

 2025年度の企業倒産は1万505件(前年度比3.5%増)で、2年続けて1万件を超えた。過剰債務や物価高、人手不足が押し寄せ、先が見えない企業も多い。
 こうしたなか、20年を超すファンド運営で、事業再生を数多く手掛けてきたのがネクスト・キャピタル・パートナーズ(株)(TSRコード:296421731、千代田区、以下NCP)だ。経営に深く入り込むトップダウンのハンズオン支援で、成果をあげている。
 東京商工リサーチは、NCPの浅野晃司・取締役執行役員に特色や取り組みを聞いた。

■浅野晃司氏(取締役執行役員)
 官民ファンドの(株)農林漁業成長産業化支援機構(TSRコード: 300060327)の創業メンバーで、農業や食産業のファンド投資に関与。NCPがGPを務めるファンドが出資する吉比化成(株)(TSRコード: 570052700)の代表取締役社長を務めるほか、NCPを含め、現在5社の取締役を兼任している。

―国内の窮境企業の認識は

 過剰債務を抱えて事業再生フェーズにある企業が増えており、NCPに持ち込まれる相談件数は増加傾向だ。持ち込まれた時点で手遅れの案件も少なくない。ただ、中核となる強みが残っていれば、再建の可能性は見出せる。
 中東情勢の悪化など外部環境が変化するなか、大企業のカーブアウト(※1)案件も増えてきた。企業業績が上向いている間に、事業の選択と集中を進め、ノンコア事業を切り離す流れは今後も続くとみている。

※1 事業部門や子会社の切り出し

―最近、ファンドによる「ハイレバ」投資(※2)案件が窮境に陥るケースが増加していると聞く

 ファンドが買収した中で業績が低迷し、コベナンツにヒットもしくは返済ピッチがキャッシュフローに追いつかない状況となっている相談がここ数年増えている。いずれもLBO(※3)による「ハイレバ」で投資した結果、苦境に陥っている。酷いケースでは株主側が実質的にハンズオフしてしまい、取り残されたレンダーが主体になって再建を模索している相談も増えている。

※2 借入金などの負債を多く活用する投資
※3 Leveraged Buyoutのための融資。金融機関(団)による買い手への買収資金の融資。被買収企業のキャッシュフローが返済原資となるため、想定した業績をあげられないと、債務整理の必要に迫られる

―運営しているファンドの概要は

 NCPは、20年超のファンド運営実績があり、業界では老舗だ。これまで4本のファンドを運営し、高いリターンを実現してきた。2011年に運用を開始した2号ファンドまでは私的、法的整理の案件を中心に投資を進めてきた。3号ファンドからは事業再生色の強いバイアウトの投資も進めてきた。例えば、B/Sは優良だが、P/Lの見通しが良くない企業なども投資対象だ。3号ファンドは2018年から73億円の規模で開始したが、4号ファンドはカーブアウト案件など投資対象を拡大し、142億円と倍の規模で運用を開始している。

―NCPのハンズオン支援の特徴は

 一般的に再生ファンドというと、債権買取をイメージされることが多いが、NCPはニューマネーを拠出し、経営権を取得したうえで、常駐によるハンズオン支援を行うのが特徴だ。
 投資初期はNCPのファンドメンバーが社長になり、トップダウン型でスピーディに経営するのが強みだ。創業当初は経営者を外部招聘することもあったが、上手くいかなかった反省を活かし、このスタイルになった。
 投資手法は案件の特性に応じて株式譲渡だけでなく、会社分割、事業譲渡、減増資などオーダーメイドだ。また、P/L改善が見込めるのであれば債権カットを前提とせず、リスケだけで再生させている点も特徴だ。
 弊社メンバーが複数名常駐し、直接経営改善の執行を進めていくが、CFが安定し、ガバナンスも整えば、プロパー(再生会社の従業員)で自走できる体制に切り替えてる。

―支援の難しさ、大切にしていることは

 事業再生では、従来と同じことを繰り返さないことが重要だ。我々は投資検討において、事業を変えて収益構造を改善できる道筋が立たないと投資しない。
 すべての案件で共通しているのが、まずは固定費を削減することが一番重要だ。工場の統廃合や本社移転などを実施し、損益分岐点を引き下げる。例えば、2007年に投資実行した高級マッサージチェア販売の(株)フジ医療器(TSRコード:570230578)の場合、3カ所の工場を1カ所に集約して、高価格帯のものを国内生産、中低価格帯のものを海外の協力企業への生産に切り替えたことで、大幅なP/L改善が達成できた。
 投資直後においては組織の刷新も重要なプロセスで、再生時はオーナー=経営者は責任を取って辞任し議決権も失うが、実質的な経営を担ってきた幹部は続投してしまう。この場合我々の経営方針に従わず抵抗勢力となってしまう事があるので、若手の登用などで若返りを図りフラットな組織、執行体制にすることで、短期間で施策が執行できるようにしている。
 従業員に対しては、KPI、ゴール設定を明確に示すと同時に業績連動賞与など目標を達成した際に還元される仕組みを整備することで、遣り甲斐を感じてもらえることも多い。
 再生時には事業が毀損する前に早めにスポンサーとして経営に参画したい。だが、経営権の委譲がスムーズにいかないと時間の経過と共に事業価値が毀損してしまう事が多い。早期に事業再生できる仕組み、オーナーへのインセンティブが提案できるかが課題である。

インタビューに応じる浅野晃司氏

インタビューに応じる浅野晃司氏


―最近の事例は

 今年2月、コーヒー豆や輸入食材などの食品小売店「Jupiter(ジュピター)」(※4)を展開していたジュピターコーヒー(株)(TSRコード:292914610、文京区、2026年1月民事再生法申請、以下ジュピター)のスポンサーに就任した。2025年8月にFA(ファイナンシャル・アドバイザー)から東京都中小企業活性化協議会の私的整理案件として検討したが、かなり事業棄損が進んでおり、2026年1月にプレパッケージ型の民事再生手続きに移行せざるを得なかった。
 ジュピターは、2023年7月期に100億円を超える売上高を計上していたが、競合出店による売上の減少や、コロナ禍以降の新規出店の失敗などが続き、棚卸資産の不正会計もあり、2025年7月期には売上高が約94億にとどまり、債務超過に転落した。
 ジュピターには強みと改善できる点が多くあり、投資妙味があると考えていた。最大の強みは、ジュピターのコーヒーファンは多く、固定客を多数抱えている点で、アプリ会員は24万人の会員数を有している。顧客層も中高年女性が対象である点も特徴である。また、地方では知名度が高く、駅ナカなど店舗立地がよいことも魅力を感じている。
 放漫経営を長年してきたことから改善点は非常に多い。根強いファンであるアプリ会員向けに販売促進がなされておらず、従来からチラシに頼っていたために集客にコストをかけすぎていた。商品は長年入れ変わっておらず魅力のある商品が少なくなっており、顧客ニーズにあった商品が陳列されてない。高齢者が多い店舗でも他店舗同様、輸入食品、ワインが多く、国産食品の売れ行きがよいのに割合が少ない。また、食品に拘りすぎており、顧客にマッチした雑貨、化粧品などをクロスセルできる機会も喪失している。取扱商品、陳列方法、販売促進を早期に見直していきたい。退店した固定客に対しては、新規にECチャネルを導入して届ける仕組みも構築していきたい。また、店舗数が半減したことで、物流倉庫、製造工程を自前に持つ必要がなくなったので、施設を売却することで固定費の圧縮が可能になる。
 既存の47店舗を承継したが、まずは承継した店舗の黒字化を進め、新たな商品、陳列方法などで成功モデルが構築できたら、新規出店を検討していきたい。

※4 現在の運営主体はJupiter(株)(TSRコード: 872035280)。Jupiterの旧商号は(株)パトラでジュピターコーヒーの資産管理的位置づけだったが、2026年1月に現商号へ変更し、2月末に事業を譲受。NCP運営ファンドが経営権を取得した

―粉飾決算の案件は難易度が高いのでは

 民事再生法申請直後、取引先は与信上の問題ではなく旧オーナー、経営に対する不信感がひきずり仕入の完全な再開までに4カ月近く経ってしまった。取引先とはスポンサーとして新たな経営方針を示しつつ取引再開に向けて粘り強く交渉をしてきた。ただし、売れ筋商品がない状態が続いたため、大幅な売上減少を余儀なくされたが、現在は昨対並みの売上に回復してきた。今後、前述のとおりの改善が図れれば初年度から黒字化できる見通しであり、今後の成長できるポテンシャルは高いと考えている。

―再生ファンドは手間がかかると聞く

 事業再生は苦労が多いが、再生したときの遣り甲斐がある。先日、20年前に私が関与した私的整理の再生案件で新生20周年記念パーティにお声がけをいただいた。その当時、創業家出身の社員だった方が社長就任のお披露目会の場でもあり、当時の苦労を思い出しつつ、本当に良い会社になったと胸が熱くなった。
 窮境企業に対して再生に必要なことはニューマネーと経営知見を供給し、再生を実現させると従業員だけでなく債権者、取引先などの多くのステークホルダーから感謝され、社会的意義が高い。時間と手間がかかるが唯一無二の存在である。



 事業再生ファンドは、冷酷で短期志向のイメージが独り歩きしがちだ。だが、実際は現場で改善策を一つひとつ積み上げる、極めて泥臭い取り組みだ。NCPは現場に深く入り、難易度の高い再生案件に取り組んできた。
 浅野取締役は「事業再生はネクスト・キャピタル・パートナーズのDNA。企業の再生は手間がかかるが、それを厭わないファンドだ」と言い切る。
 業界を先導してきた存在だけに、今後の動きが注目される。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年6月10日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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