個人破産、13年ぶり高水準 ~ 貸出姿勢の変化と業界を跨いだ悪循環 ~
法人破産より個人破産の動向が心配だ-。
いま、金融機関が個人破産の動向を懸念する。なかでも、物価高や地価上昇で高額の住宅を購入した結果、過剰債務を抱えた複数人世帯の動向が気になるという。
最高裁判所「司法統計年報」によると、2025年の自然人(個人)の破産申立は速報値で8万3,100件と3年連続で増加した。件数が8万件台に乗せたのは、2012年の8万2,668件以来、13年ぶりだ。
過去30年でみると、個人破産のピークは消費者金融による多重債務が社会問題化した2003年の24万2,849件だ。その後は概ね減少をたどり、2015年は6万3,856件とピークの約4分の1となった。以降、一進一退で推移し、コロナ禍の2022年は2015年と同水準の6万4,982件に落ち着いた。だが、急激な物価上昇に見舞われた2023年以降、企業倒産の増加に比例するように増勢に転じた。

日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会が2025年8月に作成した「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査」(3年ごと公表)では、破産者を次のように分析する。
■破産者と同一家計の家族人数は、単身世帯が2008年から増加し、2023年は半数近い43.6%を占める
■一方、2人世帯は横ばい、3人・4人世帯は減少
■破産者の居住形態は、「持ち家ではない」が77.8%と約8割を占める
■破産原因は、「生活苦・低所得」「生活用品の購入」が増加
■「浪費・遊興費」「クレジットカードによる購入」も2017年、2020年、2023年と連続して増加
近年は、若年層を中心にBNPL(後払いサービス、Buy Now, Pay Later)が普及し、推し活、ゲーム課金、アパレル購入などで幅広く利用されている。こうした信用が低くても手軽に後払いが可能な支払い方法が、債務が膨らむ要因の1つになっているようだ。
破産者の特徴をまとめると、「単身世帯」で「持ち家ではない」人が、「浪費・遊興費」で過剰債務を抱えて破産する構図が浮かび上がる。
金融機関の複数人世帯への懸念とは
金融機関の融資担当者には、統計に現れる状況とは異なる景色が見えているようだ。
統計上は減少する「(自宅の)本人所有または家族所有」、「複数人世帯」の破産に、目を離せないという。担当者は、「高騰する住宅価格が、さらに値上がりする前に買う必要があるとの焦りを呼び、背伸びする購入者も多い。だが、所得に占める住宅ローン返済が大きく、生活苦から破産に至る事例が目立つ。今後も似たケースが増えるのが心配だ」と話す。
別の金融機関の融資担当者も、「現在の物価高が始まる前、物価上昇を考えずに地域内では高価格帯のマンションを購入し、実質賃金が目減りして破産寸前に陥っている債務者もある」という。
企業が賃上げに取り組んでも実質賃金が目減りすると、家計の耐久力が落ち込む。住宅ローン利用者には、金利上昇がさらに追い打ちをかける。
こうしたなか、住宅ローンなど個人向け貸出でもリスケジュールなどの柔軟な対応を求められる機会が増加し、金融機関の収益を直撃することになり、選別融資を強めざるを得なくなる。
このような流れが現実になれば、住宅取得需要が落ち込み、住宅会社の業績が悪化し、賃貸価格のさらなる高騰を招くほか、建設会社や住宅資材など幅広い業種に影響が及ぶ。
実際、足下では住宅建設も手がける業種の「建築工事業」「木造建築工事業」の倒産が増加しており、2026年4月の2業種の倒産件数合計は47件と、前年同月比34.2%の増加で、2012年(52件)依頼の水準となった。既に様々な業種に影響が広がり始めているかもしれない。複数人世帯の個人破産の増加は、景気の先行きを示すバロメーターの可能性もあり、今後も動向から目が離せない。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年6月1日号掲載「取材の周辺」を再編集)