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2025年度「他都道府県への本社移転」 1万7,274社 万博需要一巡の大阪が転出急増、福岡も転出超過へ

~ 2025年度「本社機能移転状況」調査 ~


 2025年度(4月-3月)に他都道府県へ本社(本社機能)を移転した企業は1万7,274社(前年度比6.1%増)で、伸び率は前年度の18.7%増から鈍化したが、3年連続で増加したことがわかった。
 深刻な人手不足や上昇が続くオフィス賃料などのコスト抑制、地方マーケットの開拓などを背景に、本社(本社機能)の置き場所を見直す動きが続いている。
 地区別で転入超過数(転入数-転出数)が多かったのは中部で、プラス155社だった。中部は自動車関連をはじめ製造業が集積し、製造業を支える周辺産業や関連サービスを中心に企業の転入が多かったとみられる。次いで、ラピダスの進出で半導体関連産業の投資期待が高まる北海道がプラス108社で続いた。
 県別の転入超過トップは、前年度と同様に埼玉県でプラス313社。次いで、千葉県がプラス275社で続く。ともに賃料や人件費の上昇が著しい東京都からの受け皿となった。一方で、東京都、大阪府は転出超過数が急増し、前年度まで転入超過だった福岡県も転出超過に転じた。

 産業別の本社移転は、最多は小規模事業者が多いサービス業他の6,721社(前年度比8.2%増)。次いで、情報通信業2,066社(同1.7%増)、小売業1,906社(同8.4%増)の順。情報通信業の伸び率は前年度21.4%増から鈍化し、リモートワーク普及による移転は一巡したようだ。
 伸び率の最高は、運輸業の25.8%増だった。ドライバー不足や燃料高、2024年問題で物流体制の見直しやM&Aによる移転が後押しした可能性がある。
 規模別では、資本金1千万円未満が1万4,526社(同7.9%増)と4年連続で増加し、本社移転は小・零細企業が全体を押し上げる構図が鮮明に出た。
 賃料や人件費が高騰する都心部から、周辺都市へ転出する動きが続いている。東京都のほか、大阪府の転出超過数の急増、前年度まで転入超過の福岡県が転出超過に転じたのも特徴となった。
 本社(本社機能)の移転は、単なるコスト削減にとどまらず、人材確保や商圏拡大、事業環境の変化に対応する経営戦略の一つとして広がっている。今後も固定費上昇や人手不足が続くと、中小・零細企業を中心に、本社機能の最適な配置を探る動きがさらに拡大する可能性がある。
※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の保有する企業データベース(約440万社)から、各年3月末時点で都道府県を跨いだ本社および本社機能の移転が判明した企業を集計、分析した。今回が3回目の調査となる。


2025年度の本社移転は1万7,274社、3年連続で増加

 2025年度に判明した他都道府県への本社(本社機能)の移転は、1万7,274社(前年度比6.1%増)で3年連続で増加した。深刻さを増す人手不足、人件費やオフィス賃料などのコスト抑制、都心を離れた地方マーケットの開拓など、本社機能を移転する要因は多様化している。
 規模別では、資本金1千万円以上は2,748社(同2.1%減)で減少したのに対し、同1千万円未満は1万4,526社(同7.9%増)と4年連続で増加した。比較的規模の大きい企業の動きは落ち着いたが、中小・零細企業の本社移転が活発で件数を押し上げた。

左:本社機能移転企業数 年度推移 右:資本金別 本社機能移転企業数

産業別 サービス業他が6,721社で約4割占める

 産業別では、最多がサービス業他の6,721社で、全体の約4割(構成比38.9%)を占めた。
 次いで、情報通信業2,066社(同11.9%)、小売業1,906社(同11.0%)と続き、上位3産業の顔ぶれは前年度と変わらなかった。この3産業は、比較的規模の小さい事業者が多く、移転などの意思決定がしやすいことで本社を移転した企業が多いとみられる。
 前年度からの増加率では、運輸業が25.8%増(255社→321社)で最も高かった。ドライバー不足や2024年問題を背景に、配送網や営業エリア、車庫・営業所の配置を見直す動きが続くほか、M&Aも活発になっており、本社・本社機能の移転を検討する企業が増えた可能性がある。
 前年度との比較では10産業中、9産業で移転企業が増加した。唯一減少したのは金融・保険業で377社(前年度比6.6%減)だった。
 産業を細分化した業種(中分類)別では、移転企業数の最多が「専門サービス業」で2,140社だった。次いで、「情報サービス業」が1,489社、「飲食店」が895社と続く。

本社機能移転企業数 左:産業別 右:業種別

地区別の転出入 転入超過トップは中部、2位が北海道、転出超過のトップは近畿

 地区別の転入超過数トップは、中部でプラス155社だった。中部は自動車関連を中心に、製造業が集積し、関東、近畿の双方に商圏を広げやすい立地条件もある。産業別では、卸売業・小売業・情報通信業・サービス業他の転入超過数が多く、製造業を支える周辺産業や関連サービスを中心に、本社・本社機能を移す動きが加速した。
 次いで、北海道がプラス108社で続く。千歳市で進む半導体関連の投資期待に加え、札幌周辺の人口集積や商業・サービス需要の厚みを背景に、小売業、情報通信業、サービス業他を中心に転入超過となった。
 転出超過は、東北、関東、近畿の3地区。関東は5年連続の転出超過だったが、超過数は前年度のマイナス284社からマイナス91社に縮小した。一方、近畿は大阪府を中心に転出超過が進んだ。大阪・関西万博の閉幕で関連需要が一巡し、本社・本社機能の移転を後押しした可能性がある。
 九州は福岡県が転出超過に転じたが、新幹線で結ばれる熊本県、佐賀県、鹿児島県では、TSMC進出効果の波及がみられ、沖縄県は投資メリットのある不動産、建設のほか、IT関連で増加し、全体では転入超過になった。

地区別 本社機能移転状況(転入数-転出数)

県別転出入 転入超過トップは埼玉、2位が千葉、転出超過は東京が突出

 県別の転出入では、転入超過トップは前年度と同じ埼玉県。転入が1,684社に対し、転出は1,371社で、差し引きプラス313社の転入超過だった。産業別では、サービス業他がプラス160社で転入超過数が最も多い。建設業と情報通信業を除く8産業で転入超過となり、東京都からの移転企業を中心に、幅広い産業の受け皿となった。
 転入超過2位は、千葉県でプラス275社。埼玉県と同様に、東京都からの移転企業の受け皿となっている。産業別の超過数では、サービス業他がプラス108社、卸売業がプラス55社、小売業がプラス41社で多かった。運輸業と情報通信業を除く8産業で転入超過だった。
 このほか、首都圏と圏央道でつながる茨城県などの北関東エリアも転入超過数が多い。首都圏近郊の製造拠点として企業誘致を積極的に進めており、転入の増加に繋がっている。
 転出超過数は、1位が東京都でマイナス1,238社。産業別では、運輸業を除く9産業で転出超過だった。転入数は2023年度3,723件、2024年度3,983件、2025年度4,584件と増加が続くが、それ以上に転出数の増加が加速した。都心部で高まる人件費やオフィス・店舗賃料のコスト削減で、隣接する埼玉県、千葉県、神奈川県への流出が強まったとみられる。
 このほか、大阪府もマイナス476社と転出超過数が大きく増加した。また、福岡県がマイナス90社と転出超過に転じ、大都市圏から周辺都市に転出する傾向が目立つ。

都道府県別 本社機能移転状況(転入数-転出数)

損益区分別 黒字企業の移転が約7割

 他の都道府県に本社(本社機能)を移転した企業のうち、移転から2年以内の最終利益が判明した企業を抽出し、黒字と赤字の構成比を算出した。
 2025年度の移転企業では、黒字企業が全体の68.2%(1,840社)と約7割を占めた。
 黒字企業の割合は、前年度から2年連続で増加した。赤字解消を目的としたコスト削減型の移転だけでなく、商圏拡大や人材確保などを狙った黒字企業による「攻め」の本社・本社機能移転が増えている。

損益区分別 本社機能移転企業数

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