• TSRデータインサイト

2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~

 生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増している。バブル経済1988年度(4-3月)以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録した。診療や介護など報酬の一部は公定価格で公的事業に近い部分もあるが、経営者の高齢化や人口減少、コスト高が追い打ちをかけている。
 政府は、医療や介護事業に緊急経済対策で補正予算を組み、支援している。だが、倒産は2025年度まで3年連続で過去最多を更新し、支援効果はみえてこない。業務の効率化や負担軽減に向けた具体的な支援が待たれる。



 病院や歯科医院などの医療業、検疫所などの保健衛生、介護や障害者福祉を含む社会保険・社会福祉・介護事業を「医療・福祉」と集計し、負債1,000万円の倒産を分析した。
 バブル期の1990年度は32件に過ぎず、公的要素の強い医療・福祉事業の倒産は限定的だった。その後、歯科医院のほか、自由診療の施設も増え、医療機関の倒産は徐々に増加し、2006年度は初めて年間100件を超えた。さらにリーマン・ショックの2009年度は154件まで増加した。
 その後、医療の倒産は小康状態が続いたが、変わるように社会保険・社会福祉・介護事業の倒産が増加し、2016年度に初めて医療業の倒産を上回った。その後も同事業の倒産が全体の件数を押し上げていたが、コロナ禍は資金繰り支援策で一時的に倒産が急減した。
 ただ、コロナ禍が落ち着くと同時に、人手不足とコスト高が広がり、利用者の減少が続いた小規模の社会福祉・介護事業の息切れが目立ち始め、2023年度は350件と最多を更新。2024年度は436件、2025年度も478件と増勢が強まり、3年連続で過去最多を更新した。 

478社の倒産分析

 478社を小分類でみると、最多は「老人福祉・介護事業」が182件。次いで、「療術業」108件、「障害者福祉事業」54件、「児童福祉事業」44件、「一般診療所」32件、「歯科診療所」31件が続く。
 478社の原因別は、売上不振(販売不振)が最多の340件(構成比71.1%)と7割超が収入不足を主因にしている。また、赤字累積の既往のシワ寄せも50件(同10.4%)に増え、業績悪化が原因の倒産が目立つ。
 従業員数別では、5名未満が345件(同72.1%)、5名以上10名未満が72件(同15.0%)で、小・零細規模の事業者の倒産が大半を占めた。 
 痒いところに手が届く身近な小規模事業者の淘汰は、医療や介護の助けを要する人にとっては他人事ではない。

 医療・福祉事業の倒産件数 年度推移


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

個人破産、13年ぶり高水準 ~ 貸出姿勢の変化と業界を跨いだ悪循環 ~

法人破産より個人破産の動向が心配だ-。 いま、金融機関が個人破産の動向を懸念する。なかでも、物価高や地価上昇で高額の住宅を購入した結果、過剰債務を抱えた複数人世帯の動向が気になるという。

2

  • TSRデータインサイト

「鰻の成瀬」、株式譲渡を巡り対立が表面化~ 仮処分決定と株主間契約 ~

うなぎ料理専門店「鰻の成瀬」のフランチャイズ(FC)やコンサルティングなどを手掛けるフランチャイズビジネスインキュベーション(株)(TSRコード:136729983、滋賀県、以下FBI社)の周辺が騒がしい

3

  • TSRデータインサイト

キーボード「FILCO」のダイヤテック、忸怩たる破産 ~ 為替デリバティブと需要減、綱渡りの資金繰り ~

パソコン用キーボード「FILCO(フィルコ)」で知られあるダイヤテック(株)(TSRコード:292026617、東京都)が負債2億円あまりを抱えて4月30日、破産開始決定を受けた。

4

  • TSRデータインサイト

2026年1-5月の「飲食業」倒産 過去最多の411件 飲食業の苦境浮き彫り、「人件費高騰」が6.6倍に急増

2026年1-5月の「飲食業」倒産は、411件(前年同期比2.2%増)だった。同期間では、1997年以降の30年間で最多だった2024年の408件を超え、最多件数を更新した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年5月の「人手不足」倒産 5月最多の37件 「人件費高騰」が2.4倍増、「従業員退職」も増加

2026年5月の「人手不足」倒産は37件(前年同月比60.8%増)で、2カ月ぶりに前年同月を上回った。 5月では2024年の28件を上回り、調査を開始した2013年以降、最多を更新した。

TOPへ