• TSRデータインサイト

グループ一体の支援体制で事業再生をサポート ~ きらぼし銀行、きらぼしキャピタル 単独インタビュー ~

 2025年の全国倒産は1万300件(前年比2.9%増)で、2年連続で1万件を超えた。コロナ禍でのゼロゼロ融資などで抱えた「過剰債務」から抜け出せないケースもある。さらに、物価高や人手不足、金利上昇などが拍車をかけている。こうしたなか、多様な支援ニーズに資本性ローン、優先株式出資などのメザニン・ファイナンスで実績を積み増しているのが、きらぼし銀行(TSRコード: 299005976、東京都)と、きらぼしキャピタル(株)(TSRコード:033825530、同所)だ。
 きらぼし銀行を中核とするグループの一体感を強みに支援メニューを揃え、事業者へのリーチ力を高めている。
 東京商工リサーチ(TSR)は、きらぼし銀行の牧岡大介融資管理部長、きらぼしキャピタルの大谷仁人副社長にこれまでの実績や事例、今度の展開を聞いた。


きらぼし銀行

牧岡 大介氏(融資管理部長)
 2003年東京都民銀行(現きらぼし銀行)入行
  複数の営業店で法人営業などを経て、
 2020年7月より融資管理部
 2024年4月より現職

きらぼしキャピタル

大谷 仁人氏(代表取締役副社長)
 1996年あさひ銀行(現りそな銀行)入行
 2004年リサ・パートナーズ入社
  事業再生、M&A、ファンド運営などを経て、
 2019年7月にきらぼしキャピタル参画し、現職。


―窮境にある国内事業者の認識は

(牧岡)金融円滑化やゼロゼロ融資などでなんとか資金繰りを維持してきた事業者が、ここにきて外部環境の悪化から経営を諦めるケースが増えている印象がある。
 経営者の高齢化や物価高、金利上昇などの外部環境の悪化から、再生フェーズにある会社にとっては自主再建が難しい環境になっている。スポンサー型の抜本再生や再チャレンジ支援の割合が増えている印象だ。

インタビューに応じるきらぼし銀行・牧岡部長

インタビューに応じるきらぼし銀行・牧岡部長


(大谷)牧岡と同様の認識を持っている。一方で、きらぼしキャピタルが取り組むような本業に力のある事業者では、コロナ禍で打撃を受けて一時的に窮境状態に陥ったものの、比較的回復している印象だ。


―きらぼし銀行/キャピタルの特色は

(牧岡)きらぼし銀行では、債務者区分に基づき、事業や財務に課題のある事業者約1,000社を管理強化先に指定している。融資管理部が四半期ごとに業績をモニタリングし、損益の悪化や資金ショートなどの予兆を早期に把握する体制を整えている。早い段階で改善を提言し、モニタリングをしながら、支援をするのか、撤退するのかを両輪で判断している。
(大谷)きらぼしキャピタルでは、グループのシナジーを活かし、様々なライフステージにおける中堅・中小企業の経営課題の解決に取り組んでいる。


きらぼしキャピタル・大谷副社長

きらぼしキャピタル・大谷副社長


 

 例えば、きらぼし銀行がメインバンクで、顧客の財務状況が傷んでいる事業者に対しての支援メニューとして、夢・よりそい1号ファンドがあり、資本性ローンや優先株式出資といったメザニン・ファイナンスなどの多様な資金調達手段を提供している。
 ファンドの規模は拡大が続き、直近では50億円増資して275億円のファンドに成長した。きらぼし銀行ときらぼしキャピタルがグループ一体となってきめ細かな支援ができる点が特徴だ。事業性があるケースでは、メインバンクが事業者をしっかりサポートすることが結果としてファンドの債権保全にも繋がり、金融機関との協調が重要になる。

―再生支援の体制は

(牧岡)事業者の実情や課題に応じて様々な支援を行っている。金融支援や計画策定などを含め、事業者の経営会議にも参加し、深く入り込んで支援を行う。(プレを含む)DIPファイナンスやEXITファイナンスなどを手掛ける事業再生ファイナンスの専門チームを2024年10月に設置した。
 さらに、2025年3月に再生・再チャレンジ支援円滑化パッケージ(※1)が策定されてからは、抜本再生やスポンサー選定支援、廃業支援などにも積極的に取り組んでいる。
 事業再生と一口に言っても、事業者の課題は千差万別だ。課題に合った提言をするために、包括的な支援メニューに対応できる体制を目指している。

※1 2025年3月17日に経済産業省、金融庁、財務省が連名で公表。早期相談に向けた取組強化、事業再生支援の体制強化、経営改善・事業再生インフラの整備が柱


―「事業再生実務家交流会」を主催していると聞く

(牧岡)特に東京では、どの事業者も取引金融機関が多く、メイン不在となることも往々にして起こり得る。その際に、金融機関との連携は不可欠で、顔が見える関係性を構築したいと考えたのが始まりだ。
 事業再生は競争分野ではない。様々な分野で事業再生に携わっている実務家が、成功体験や失敗談などを共有することで、地域の再生の力を高めていきたい。

―実際の支援事例は

(牧岡)運送会社の事例がある。コロナ禍で事業が毀損し、設備の償却負担も加わり債務超過寸前の状況にあったが、当部のモニタリングで予兆を把握し、事業者に改善を提言した。外部専門家を招聘し、再生計画の策定と、部門ごとの損益を整理した。きらぼしキャピタルから資本性ローンを調達したほか、我々の支援に共感いただいたほかの金融機関からも協調で資本性ローンの調達ができ、債務超過を回避することができた。
 その後は、当部の職員が月次で経営会議に参加し、部門ごとの損益やアクションプランの予実管理を実施した。不採算の事業所閉鎖、主要取引先との値上げ交渉などが奏功し、収益力が大幅に改善した。
 さらに、グループ会社の(株)きらぼしコンサルティング(TSRコード:292097000、東京都)とも連携し、高齢化した役員の後任人材の採用なども支援した。一時は破綻懸念先へのランクダウン寸前だったが、現在では正常先までランクアップしている。

―支援をする際に留意している点は

(牧岡)経営者との対話が大事だ。支援の入口では、自身の会社の課題を適切に認識していただき、改善意欲の醸成を図ることを大切にしている。
 支援の途上においては、外部の専門家任せにすることなく、融資管理部が伴走支援をしながらプロジェクトマネジメントを行うことで、再生の実効性を高められると考えている。出口の見えないリスケを続けることは事業者のためにならない。利払い(のみの支払い)や少額弁済が長期間続いている事業者に対しては、抜本再生や廃業、経営者保証ガイドラインの活用といった出口支援も大切にしている。
(大谷)きらぼしキャピタルは、きらぼし銀行の補完的な役割を担っている。きらぼしキャピタルはある意味で一時的な支援となるが、事業性をしっかりと評価したうえで、判断している。最終的には銀行取引が正常化する形で戻っていただくというのが我々のポジションだ。
 我々が支援した都内の多店舗型の衣料品販売店のケースでは、年々業績が悪化していたなか、活性協に案件を持ち込み抜本的なリストラを実施した。元々数十店舗を運営していたが、旗艦店の数店舗を残して、EC業態に大きくシフト。取引行は多かったが、メイン格のきらぼし銀行が主導してシンジケートローンを組み直し、きらぼしキャピタルが資本性ローンを提供した。
(牧岡)きらぼし銀行におけるDIPファイナンスは将来的に事業者がきらぼしグループのファンになっていただくきっかけ作りと捉えており、EXITファイナンスによってメインバンクにならせていただくことも狙っている。

―士業やコンサルタントなどの連携は

(牧岡)士業やコンサルタント等との連携においては、ワンチーム・ワンビジョンで共通のゴールを目指すことを心掛けている。共通のゴールとは、事業者の再生や経営者の経済的な自立だ。事業再生においては、自行の経済合理性だけを主張するのではなく、可能な限り合理的な落としどころを見つけることを心掛けている。
(大谷)我々は腹をくくって全力でお客様を支援する。その分、お客様や士業の方にも同じ船に乗っている気持ちで信頼して任せてほしいと考えている。自身の利益のみを追求する姿勢では、ディールを前に進めることができないためだ。



 インタビューの終わりに、事業再生に関わる人材の状況について尋ねた。
 コロナ禍以降、再生支援への機運が高まり、事業者のために再生実務を手掛けたい若手の行員も増えているという。きらぼし銀行は、東京都中小企業活性化協議会や再生ファンドへの出向にも積極的で、知見や人脈を広げている。
 事業再生の実績が積み上がり、経験と知見が蓄積されていく。そうしたリソースを生かすことで、支援の質もさらに向上する。
 グループ一体で事業者の伴走支援に力を注ぐきらぼしグループだが、今後の取り組みにも目が離せない。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年3月19日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

三菱マヒンドラ農機、同時にグループ2社も解散へ

農業用機械の生産販売を終了する三菱マヒンドラ農機(株)(TSRコード:760014582、松江市)に関連して、グループ2社も同時に解散することが東京商工リサーチ(TSR)の取材で分かった。

2

  • TSRデータインサイト

「警備業」倒産 20年間で最多ペースの20件 警備員不足と投資格差で淘汰が加速へ

コロナ禍後のイベント復活や建設現場の交通誘導、現金輸送など警備業の活動範囲は広がっている。だが、「警備業」の2025年度(4-2月)の倒産は、2月までに20件(前年同期比25.0%増)に達した。現状のペースをたどると2006年度以降の20年間で最多だった2007年度、2024年度の21件を超える見込みだ

3

  • TSRデータインサイト

働き方の多様化で労働基準法改正の議論加速 ~ 日本成長戦略会議などで労働時間規制の緩和を検討 ~

労働基準法改正に向けた議論が進んでいる。通常国会への法案提出は見送られたが、高市総理は施政方針演説で「柔軟な働き方の拡大に向けた検討を進める」と表明した。日本成長戦略会議や規制改革会議などで労働時間規制の緩和に向けた検討が加速しそうだ。

4

  • TSRデータインサイト

中国の軍民両用製品の輸出禁止 禁止リスト登録企業の国内取引先は約1万社

中国商務省は2月24日、国内20の防衛関連の企業や団体を軍民用品(デュアルユース)の輸出禁止リストの対象に加えたと発表した。この他、輸出規制の監視リストに国内20企業や団体も加えた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度(4-2月)のタクシー会社の倒産が36件 年度は過去20年で最多が確実、地方で淘汰が加速

 2025年度(4-2月)の「タクシー業」の倒産が36件(前年同期比80.0%増)に達し、過去20年間で最多だった2011年度の36件(年度件数)に並んだ。前年同期の1.8倍に増加し、このペースで推移すると、2025年度は2006年度以降の20年間で最多件数の更新が確実になった。

TOPへ