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2025年上場企業の「不適切会計」開示43社・49件 11年ぶり社数・件数が50社・件を下回る、粉飾は7件

~ 2025年全上場企業「不適切な会計・経理の開示企業」調査 ~


 2025年に「不適切な会計・経理」(以下、不適切会計)を開示した上場企業は、43社(前年比28.3%減)、件数は49件(同18.3%減)だった。社数は4年ぶり、件数は2年連続で前年を下回った。
 監査機能の強化などの効果が出た格好だが、(株)オルツ(グロース)は架空売上で信用が失墜し、7月に民事再生法の適用を申請した。また、ニデック(株)(プライム)でも不適切な会計処理の疑義が発覚した。開示企業数は減少したが、潜在的なガバナンス(企業統治)不全の企業は後を絶たない。
 
 2025年に上場企業が不適切会計を開示した件数は49件だった。最多は、経理や会計処理ミスなどの「誤り」で29件(前年比12.1%減)。次いで、役職員などの着服横領が13件(同31.5%減)、売上の過大計上や実態のない取引の計上などの「粉飾」が7件(同12.5%減)だった。
 業種別で社数をみると、製造業の13社(同31.5%減)が最も多く、次いで、「情報通信業」(同±0.0%)、「サービス業」(同57.8%減)の各8社だった。
 日本公認会計士協会は2026年1月26日、「最近の上場企業の会計不正事例の発生を真摯に受け止め、社会から監査に対する信頼性を維持・向上させる」ため、上場企業の監査の信頼性向上に向けた施策を発表した。具体的には、公認会計士法で監査法人の設立要件に定める公認会計士の最低社員数(5人)を、上場企業の監査を行う監査法人は引き上げることなどを示した。 
 だが、上場企業は監査法人に頼らず、自立的なガバナンス機能の健全化が問われている。

※本調査は、自社開示、金融庁・東京証券取引所などの公表資料に基づく。上場企業を対象に、「不適切な会計・経理」で過年度決算に影響が出た企業、今後影響が出る可能性を2025年内に開示した企業を集計した。集計開始は2008年。
※同一企業が調査期間内に内容を異にした開示を行った場合、社数は1社、件数は複数件としてカウントした。
※業種分類は、証券コード協議会の業種分類に基づく。上場の市場は、東証プライム、スタンダード、グロース、名証プレミア、メイン、ネクスト、札証、アンビシャス、福証、Q-Boardを対象にした。 


開示企業数 2025年は43社(49件)

 2025年に不適切会計を開示した上場企業は43社、49件だった。世界トップの総合モーターメーカーのニデック(株)(プライム)は2025年9月3日、海外子会社で不適切な会計処理が行われた可能性が認められ、第三者委員会を設置したことを明らかにした。同社は9月26日に有価証券報告書を提出したが、監査法人は意見不表明とした。事態を重く見た東証は、10月28日付で同社を特別注意銘柄に指定し、日経平均株価などの指数からも除外された。第三者委員会による調査は2月2日現在、継続している。
 AI(人工知能)開発の(株)オルツ(グロース)は4月、証券取引等監視委員会の調査で、売上の過大計上の疑惑が浮上。第三者委員会を設置して調査を進め、経営幹部も関与の上で2024年12月までの3年間で売上高の大半(約8~9割)が過大に計上されたことが判明。具体的には、販売代理店に販売したライセンスについて、アカウント発行の実態を伴わない状態での売上計上だったことが判明した。東証は8月31日付けでの上場廃止を決定し、2025年7月に民事再生法の適用を申請した。10月9日には社長ら旧経営陣4人が逮捕、同月中に起訴された。

不適切会計 年次推移(1-12月)

内容別 最多は「誤り」の29件

 内容別は、最多は経理や会計処理ミスなどの「誤り」が半数を超える29件(構成比59.1%)だった。
 次いで、役職員などによる「着服横領」が13件(同26.5%)。「架空売上の計上」や「実態のない取引の計上」などの「粉飾」は7件(同14.2%)だった。
 鮮魚小売業の(株)魚力(プライム)は、賃上げ税制適用の申請を失念。これにより法人税の計上額に誤りが生じたほか、修正の過程で資産除去債務の見積り、固定資産の減損処理の不備が判明し、3件同時に不適切会計を公表した。

不適切会計 内容別(2025年)

発生当事者別 「会社」が25件でトップ

 発生当事者別では、最多は「会社」の25件(構成比51.0%)だった。「会社」では会計処理手続きなどの誤りが多かった。
 次いで、「従業員」は11件(同22.4%)で、架空発注や架空取引などの着服横領が目立った。
 「役員」は3件(同6.1%)で、役員個人による不適切な取引の疑義が目立った。
 「子会社・関係会社」は10件(同20.4%)で、取引実在性の疑義、不適切会計処理、雇用調整助成金の不正受給など内容は多岐にわたった。

不適切会計 発生当時者別(2025年)

市場別 「東証プライム」が20社で最多

 市場別では、「東証プライム」が20社(構成比46.5%)で最も多かった。次いで、「東証スタンダード」が13社(同30.2%)、「東証グロース」が9社(同20.9%)と続いた。
 2013年までは新興市場が目立ったが、2015年以降は国内外に関連会社を展開する旧東証1部が増加傾向だった。新市場移行後は「東証スタンダード」も目立っていたが、2025年は「東証スタンダード」が大きく減少し、相対的に「東証プライム」が目立つ結果となった。

不適切会計 市場別(2025年)

業種別 最多は製造業の13社

 業種別では、最多は製造業の13社(構成比30.2%)だった。次いで、「情報通信業」、「サービス業」の各8社と続く。製造業は従業員などによる「着服横領」、「誤り」が各5件だった。「情報通信業」、「サービス業」は「誤り」が目立った。

不適切会計 業種別(1-12月)



 2025年に開示された不適切会計は43社・49件だったが、上半期(1-6月)に社数・件数とも約7割を占めた。下半期(7-12月)の開示が上半期に比べて減少した背景の1つには、4月に発覚したオルツの常識を超えた売上の過大計上の疑義が大きいとみられる。この影響で上場企業の会計処理がより慎重になり、また、監査法人の監査もより入念になった可能性がある。
 最近の新規上場企業の会計不正を受け、日本公認会計士協会は、上場企業を監査する監査法人の登録要件の厳格化の検討を発表した。監査法人による監査がより強化されることになる。
 オルツの不適切会計は、上場企業のコンプライアンス(法令遵守)やコーポレートガバナンス(企業統治)を根底から揺るがすもので、監査の信頼性にも課題を投げかけた。
 また、ニデックの不適切会計の疑義は、第三者委員会による調査が進行中だが、疑義が事実であると仮定した場合の分析として、2026年1月28日に内部管理体制の「改善計画書・状況報告書」を公表。この中で、元代表の意向を優先する風土が問題だったと強調した。

 事業計画などは元代表の意向に沿わない進捗報告を許されない傾向にあり、経理部門も一体となって目標達成を目指す構造だったことから、牽制が十分に機能していなかったとした。
 ニデック以外でも創業者や創業家、大株主の存在感が強い、または代表の権限が強い上場企業は少なくないだけに、ガバナンス強化の契機になるか注目される。
 こうした事例以外でも、上場企業は取引構造が複雑で、高度な知識が必要なケースが多く、意図しないミスも起こりやすい。実際、不適切会計の半数は意図的でないミスが占めている。
 今後、監査強化が進むが、上場企業側もコンプライアンスやコーポレートガバナンスだけでなく、これまで以上に権限構造の見直しと法務や経理知識の徹底が必要になっている。

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