合同会社の倒産、設立5年未満が目立つ ~ 起業促進も事業継続に課題 ~
合同会社の与信判断に悩むケースが多い――。事業会社の審査担当が耳打ちする。グローバルに展開する有名企業は合同会社の形態で日本法人を設立しているが、情報公開性は高くない。
さらに、最近の倒産事例を調べると、興味深い結果がみえてくる。2025年1-11月に設立5年未満で倒産した合同会社の割合は、株式会社の3倍超と際立って多い。
合同会社に何が起こっているのか。背景を探った。
合同会社は2006年5月の会社法改正で生まれた新しい会社形態で、アメリカのLLCをモデルにしている。株式会社よりも簡易に設立することが出来、株主総会も不要だ。このため、近年の設立数は高水準で推移している。東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、2024年(1-12月)の新設法人15万3,938社(法人格問わず)の約3割(構成比27.3%)にあたる4万2,107社が合同会社だった。政府は「開業率5%を欧米並みの10%に」と鼻息が荒く、合同会社はこの流れを根底で支えていた。しかし、創業後の在り方に課題があるようにみえる。会社分割を繰り返す手法が一部で問題視されている。また、事業実態が乏しく存在確認が難しい企業の増加を指摘する声もある。
増える合同会社の倒産
2025年1-11月の合同会社の倒産は374件だった。増加率は5.6%で全体2.2%増を上回る水準だ。合同会社の倒産の特徴の1つに、業歴の浅さがある。
374件を業歴別でみると、1年未満が5件(構成比1.3%)、1年以上5年未満が129件(同34.4%)で、5年未満の合計は134件(同35.8%)になる。一方、同期間の株式会社の倒産は1年未満が6件(同0.1%、1年以上5年未満が614件(同10.8%)で、合計620件(同10.9%)にとどまる。5年未満で比較すると、合同会社の構成比は約3.5倍に達する。

設立5年未満の倒産の原因別で比較した。経験不足や無計画などの「事業上の失敗」は合同会社の28件(構成比20.9%)に対し、株式会社は124件(同20.0%)と大きな差はなかった。しかし、合同会社の販売不振は91件(同67.9%)で、株式会社の369件(同59.5%)を8.4ポイント上回る。
設立5年未満で倒産した合同会社の割合が株式会社の3倍超と際立って多く、販売不振の比率も高いことから、計画通りに事業が軌道に乗らないまま破綻する合同会社の安易な見込みでの設立が多いことが見えてくる。

金融機関も審査に苦慮
こうした合同会社の問題について、信用金庫の融資担当者は、「近年の新設法人は、小規模の合同会社が多い印象だ。なかでもバーチャルオフィスやレンタルオフィスを本社登記地とするケースが目立ち、実態が掴みにくい企業が増えている」と苦労を明かす。その上で、「このような企業から口座開設や融資などを求められると登記地へ訪問に加えて、商品・サービスの在り方や流通方法、経営実態を慎重に確認する。ただ、無形商材を扱う企業も多く、ヒアリングでしか確認できない。設立したばかりでは実態や見通しの妥当性を判断するのも難しい」と続ける。
さらに、「実態や見通しの妥当性を見抜けないまま融資を行ない、債務不履行や倒産も起きている」と空を仰ぐ。
ほかの金融機関(融資担当者)に話を聞いても、合同会社は「経営者の経験不足や見通いが甘い傾向にある」という。さらに、「資本金1円」問題をあげる融資担当者も多い。経営者保証を付けない融資が促進されるなか、最低資本金の見直しを訴える。「最低資本金1円はデフレが前提で、インフレと金利上昇の時代にはそぐわない」と漏らす担当者もいる。
合同会社でも順調に業績を伸ばす企業もある。こうした企業は、ある程度の実績を積み上げると、株式会社に組織変更するケースが多い。信用面で株式会社であることの必然性を感じる経営者もいいのだろう。
円安や金利上昇などで与信を取り巻く環境は激変している。緩和的だった小規模な企業への与信は逆回転を始めており、事業価値や経営者の資質がこれまで以上に問われる局面に入っている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年12月29日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)