上がる金利、延命の限界=2025年を振り返って(10)
長期国債の利回りが上昇を続けている。企業の調達金利もこれに連動している。
東京商工リサーチ(TSR)が保有する財務データから、有利子負債と支払利息(割引料含む)が計上されている22.4万社を分析すると、2024年度(25年3月期まで)の推定調達金利は1.10%だった。前年度より0.07ポイントアップし、21年度の0.87%を底に3年連続で上昇した。
注目すべきは、「上がり方」だ。分析対象を資産超過、債務超過で分類すると、前者の2024年度は前年度比0.07ポイント増の1.09%に対し、後者は同0.30ポイント増の1.55%に達した。2023年度まで変動幅に大きな差はなかったが、ここにきて一気に差が開いた。これは、金利は信用度合いで変化することを裏付けている。
金利引き上げは2024年3月のマイナス金利解除後、既定路線と捉えられ、企業の受容度は高まっている。TSRが25年2月に実施したアンケートによると、メインバンクから既存の利率より0.3%の上昇を打診されても、「受け入れる」と回答した企業は54.9%と半数を超える。2024年10月の42.1%から10ポイント以上の増加だ。
ただ、過剰債務を抱え、稼ぐ力が改善しない企業には重くのしかかる。事業再生局面にある企業を支援する際、まずは融資を受ける金融機関に返済の「一時停止(リスケ)」を要請することが多い。元本返済を止めるが、利払いは継続するのが一般的だ。ただ、「金利が上がってリスケ自体が困難になっている」、「利払いすらできず破産を選択するしかないケースが増えている実感だ」との声が、倒産や事業再生を手掛ける弁護士からは聞こえてくる。
金利は経済の体温でバロメーターと言われるが、窮境企業は上昇トレンドにめっぽう弱い。しかし、海外情勢や円安下で、この流れを止めることはできない。リスケをただ繰り返すのか、それともリスケ中に改善がみられるのか。リスケ対応の先に、出口は見えるのか。支援の人的リソースが限られるなか、眼差しはシビアになっていく。
