農業倒産が過去最多、まだまだ続く「令和の米騒動」=2025年を振り返って(5)
2024年に過去最多の87件を記録した農業の倒産は、2025年1-11月累計ですでに92件に達し、2年連続で最多を更新した。とりわけ、増加が目立つのが酪農、養豚、養鶏など、畜産農業の倒産だ。牧場経営のほか、グループで農畜産物の販売なども展開していたファーマーズホールディングス(株)(TSRコード:025721453)が7月、グループ11社と同時に民事再生法を申請した。従来の畜産業の枠にとらわれない新しいビジネスモデルを目指し、同業他社の買収を進めた。将来的には株式上場も目指していたが、拡大路線を急いだあまり、資金繰りが悪化し、計画はとん挫した。負債総額はグループ合計で約92億7500万円に達する大型倒産となった。
農業分野は、「担い手不足への対応」という課題が横たわるなか、コロナ禍での需要減、深刻なエネルギーコストの上昇、飼料・肥料の値上がりに翻弄されている。さらに、天候不順や伝染病など予想が難しいリスクも追い打ちをかける。また、円安の進行は飼料や肥料の高騰を招き、打撃を与えている。
近年は、効率経営や人材確保を目的に、企業経営の考え方を取り入れた農業分野の法人化が進んできた。ところが、倒産は経営体力の乏しい小規模事業者や、実績の乏しい新興企業に集中する皮肉な結果となっている。
前年に引き続き、2025年の農業分野で大きなトピックとなったのは「令和の米騒動」だ。政府備蓄米の放出を経て、2025年新米の流通で落ち着いたかに見えた米の販売価格は、年後半にかけて再び上昇に転じ、直近では最高値を更新した。この間、価格転嫁や在庫の評価益の恩恵を受けた流通業者もあれば、仕入価格の高騰が直撃した飲食業者などは苦境にさらされた。
適正なコメの価格とは――。生産者保護か消費者利益か、淘汰か保護か、市場原理か積極介入か。国民がそれぞれの立場で日本の主食について模索する日々が続く。その解決には政府の客観的で、冷静な舵取りが求められている。
