大阪・関西万博、「期待薄」からの「大盛況」=2025年を振り返って(4)
2025年4月、大阪・関西万博が開催された。事前の報道では、建設遅れや費用高騰、世論の冷めた視線など、逆風ばかりが目立ち、期待薄との声が支配的だった。東京商工リサーチ(TSR)が2025年6月に実施したアンケート調査では、万博に向けた取り組みを「特に実施していない」企業は96.0%に上り、関心の薄さを示していた。また、具体的に「万博特需を見越して拠点を開設した」、「設備投資をした」など、中長期の経営判断に踏み切った企業はわずかだった。だが、万博も後半に入った頃から客足が増えていった。人々が万博に足を運んだ要因の一つが、「SNSの口コミの熱量」だろう。実際に会場を訪れた人々の想いが、強いプロモーションとなった。さらに、奇抜なルックスで当初は賛否両論を呼んだ公式キャラクター「ミャクミャク」の人気もある。この批判と熱狂がSNS上で、「行ってみたい」という衝動につながったといえるかも知れない。
総来場者は約2901万7900人、運営収支は約230億〜280億円の黒字が見込まれる。だが、総額が約9.7兆円に上る関連インフラ整備費は含まれず、入場者数には関係者もカウントされている。果たして、どこまで人気があったのか意見は分かれるが、会場建設費の国負担分を含めると国費負担の総額は約1647億円が見込まれ、運営収支をはるかに上回る。本当の意味での収支は、万博の遺産の長い時間をかけた有効活用にかかる。
また、パビリオンの建築費を巡り、下請の建設業者が元請業者を相手取り、未払いの工事費を求める民事訴訟が複数起こされている。未払い総額は10億円を超えるとされ、訴訟の行方も注目される。
大阪・関西万博は「未来社会の実験場」をコンセプトとしていた。万博の年間チケットを購入し、20日間通った人は「異文化に触れる感動」、「各パビリオンでの体験」など、個人でも家族でも楽しめ、世界を知ることができたと語る。
短期間の消費だけで判断すれば慎重論が残るが、目に見えにくい効果が万博の真骨頂とすれば、その評価はこれからだろう。

盛況のなかで下請への工事費未払いも発覚