上場企業「GC注記」、「重要事象」記載は60社 GC注記の企業数は過去最少タイ、コロナ禍から3割減
~ 2025年9月中間決算 上場企業「継続企業の前提に関する注記」調査 ~
2025年9月中間決算を発表した3月期決算の上場企業約2,300社のうち、決算短信で「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(以下、GC注記)を記載したのは19社(前年同期24社)だった。また、GC注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)は41社(同44社)だった。
GC注記と重要事象を記載した企業は合計60社で、前年同期(68社)から8社減少した。コロナ禍以降、最多だった2022年3月期本決算の94社からは34社(36.1%減)と大幅に減少した。また、GC注記企業は、集計を開始以来、2018年3月期と並び最少タイの19社にとどまった。
コロナ禍が落ち着き、事業環境の好転や経営改善が進んだことで、GC注記・重要事象の記載企業は減少が続いている。ただ、その一方で、何年にも渡って経営不振が続き、連続赤字でGC注記・重要事象の記載が固定化するケースや、上場廃止になる企業も目立つ。
また、売上高(連結決算、半期売上高)では、100億円未満の中堅以下が8割以上を占め、上場企業のなかでも株高相場に沸く業績好調の大手クラスとは対照的な状況になっている。
ビジネスモデルの転換が難しく、赤字経営から脱却できない上場企業は一定数存在しており、GC注記・重要事象の記載企業の破たんリスクは引き続き顕在化している。
※ 本調査は、全証券取引所に株式上場する3月期決算企業を対象に、12月5日までに発表した2025年9月中間決算(2026年3月期第2四半期決算)の決算短信に「GC注記」及び「重要事象」を記載した企業を集計した。

本業不振が約8割、債務超過が4社
GC注記・重要事象を記載した60社を理由別に分類した。46社(構成比76.6%)が重要・継続的な売上減や損失計上、営業キャッシュ・フローのマイナスなどの「本業不振」を理由としている。売上減少や採算性の低迷から、赤字経営が常態化している企業が目立った。
次いで、「資金繰り悪化・調達難」を理由としたのが9社(同15.0%)、「借入過多・財務悪化」が7社(同11.6%)、「財務制限条項に抵触」が5社(同8.3%)と続く。
また、債務超過の企業は4社(個別決算含む)だった。債務超過は上場廃止基準にも抵触するため、利益確保や増資などによる早急な資本増強策が求められる。
※重複記載のため、構成比合計は100%とならない

半期の売上高別 100億円未満が8割以上
GC注記・重要事象を記載した60社を、2025年9月連結中間決算の半期売上高別で分類した。
最多は10~100億円未満の29社(構成比48.3%)で、約5割を占めた。次いで1~10億円未満が20社(同33.3%)で3割を占めた。また半期売上高が1億円に満たなかった企業も3社あり、3社ともGC注記記載企業だった。
半期売上高が100億円未満が52社(同86.6%)と8割を超え、上場企業とはいえ事業規模では中規模クラスや小規模ベンチャーが大半を占める。
一方、半期売上高1,000億円以上は、シャープ(株)(TSRコード:570384737、半期売上高9,503億4,300万円、重要事象)の1社のみだった。

東証スタンダードが半数超え
上場区分別では、東証スタンダードが34社(構成比56.6%)で最多。以下、東証グロースが18社(同30.0%)、東証プライムが4社(同6.6%)と続く。このほか、名証や札証の地方上場企業が4社だった。
上場企業のなかでも中堅クラスが集中する東証スタンダード上場が半数を超え、次いで新興企業が多い東証グロースが続く。実績があり、名門とされながら不振が続く中堅や、業歴が浅く経営基盤が不安定な新興ベンチャーなどが占めている。

2025年の上場企業の倒産は、(株)オルツ(元東証グロース、民事再生)の1件が発生した。AIベンチャーとして期待を集めたが、売上の大半が架空だったことが発覚し、上場1期目を待たずに倒産。10月には元社長ら経営陣が、東京地検特捜部より逮捕される事態に発展した。
同社のように、粉飾決算が発覚し、決算を訂正しないまま倒産したケースを除くと、近年の上場企業の倒産は、事前にほぼ全ての決算でGC注記・重要事象が記載されている。
GC注記・重要事象の記載企業は減少をたどり、コロナ禍前の水準まで抑制された。ただ、事業好転の見通しが立たず、赤字の常態化に喘ぐ不振企業は散見される。業績好調な企業と不振企業の二極化が進むなか、GC注記・重要事象の記載は引き続き重要なアラート情報となっている。