• TSRデータインサイト

主な「ハウスメーカー」140社 2024年度は増収増益 地価と物価上昇で売上伸ばすが、収益は鈍化

2024年度 全国「主要戸建メーカー、ハウスビルダー140社」動向調査


 全国の主要戸建メーカー、ハウスビルダー(以下、ハウスメーカー)140社の2024年度決算(2024年4月期-2025年3月期)は、売上高8兆8,845億円(前年度比3.2%増)、利益5,012億円(同2.5%増)と好調だった。資材や人件費の高騰分を住宅価格に転嫁できたことから、過去5年では売上高、利益とも最高を記録した。ただ、利益の伸びは前年度(同16.6%増)より鈍化し、価格転嫁だけでは限界にきている可能性がある。

  東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースから、戸建住宅の販売を主力とする企業を抽出し、2024年度の売上高が100億円以上、5期連続で売上高と利益が比較可能な140社を分析した。
 利益は、増益が82社(構成比58.5%)と約6割を占め、減益は58社だった。増益は前年度から19社増えた。また、赤字企業は8社(同5.7%)で1割以下にとどまった。全国展開する大手や、地域で高い知名度を誇る売上高100億円以上の企業の好調ぶりがうかがえる結果となった。

 住宅市場は、大都市圏を中心に底堅い需要が継続するが、戸建住宅の着工戸数は減少が続いている。地価上昇と同時に、資材価格や労務費の高騰などで建築価格は上昇が続き、地方や郊外などでは住宅価格の上昇に実需が追いつかない状況も生まれている。このため、ここにきて資金力の乏しい中小規模のハウスメーカーの倒産が各地で顕在化している。
 コストアップ分の転嫁が一時的には売上増をもたらしたが、上昇が続いたことで購買層の購入価格と乖離が生じつつある。今後は、顧客に選ばれる差別化と高付加価値化の追求など、コスト増を克服する自己防衛策が必要になっている。

※本調査はTSR企業データベース(約390万社)から、戸建住宅の分譲や建築事業が主力の売上高100億円以上の企業を「主要戸建メーカー、ハウスビルダー」と定義。2024年度決算を最新期とした。


最新期 業界大手140社の業績はコロナ禍以降で最高

 全国の主な戸建メーカー、ハウスビルダー140社の2024年度の売上高合計は、8兆8,845億円(前年度比3.2%増)だった。最新5年間ではコロナ禍の2020年度を底に、右肩上がりで増収をたどり、2022年度から8兆円台で推移している。
 だが、戸建住宅の新設住宅着工戸数(持家+分譲戸建)は、2021年度の42万5,403戸から2022年度39万2,453戸、2023年度35万3,237戸、2024年度は34万5,398戸は減少をたどっている。増収は不動産価格の上昇、資材等のコストアップ分の価格転嫁で販売価格の上昇が寄与したためとみられる。
 利益合計は、2024年度は5,012億円(同2.5%増)と5年間で最大に達し、初めて5,000億円台に乗せた。ただ、2023年度は前年度比16.6%増と二ケタ以上の高い伸び率をみせたが、2024年度は同2.5%増の微増に鈍化した。

ハウスメーカーの業績

売上高 増収企業率はほぼ前年並み

 売上高の増減収別では、2024年度は増収が86社(構成比61.4%)、減収は54社(同38.5%)で、2023年度(増収60.7%、減収39.2%)とほぼ同水準で推移した。
 売上高の合計金額は3.2%増の伸びを見せたが、増収企業は1社増にとどまった。業績が好調な企業が増収幅を伸ばし、全体業績を牽引しているとみられる。

ハウスメーカー 対前年増減収別

利益 増益企業率が上昇

 利益は、2024年度は増益が82社(構成比58.5%)、減益が58社(同41.4%)だった。
 2023年度、2022年度ともに増益45.0%、減益55.0%で、増益企業数は5割を下回ったが、2024年度は増益企業数が19社増え(13.5ポイント増)、利益が改善した企業が目立った。
 一方で、2024年度の赤字企業数は8社(構成比5.7%)で、前年度の7社から1社増加した。

ハウスメーカー 対前年増減益別

売上トップは積水ハウス 上位20社中5社がガリバー、飯田HDグループ

 売上高ランキング(単体決算)は、1,000億円以上が19社(構成比13.5%)で、このうち売上高1兆円以上は1社だった。売上高1,000億円超は前期の17社から2社増加し、全国に拠点を展開している大手の有力企業が並んだ。また、売上高上位20社中、16社(構成比80.0%)が前年度比で増収を記録した。

 売上高トップは、積水ハウス(株)(大阪府)の1兆3,121億円。不動産開発など事業分野は多岐にわたるが、ハウスメーカーの最大手として売上高は前期比2.2%増と増収を達成し、2位以下を大きく引き離した。
 次いで、2位は前期比5.8%増の伸びを見せ、前年4位からランクアップした(株)一条工務店(東京都)の5,265億円。全国に500カ所以上の拠点を持ち、「世界で最も売れている注文住宅会社」としてギネス世界記録の認定を受けている。3位は住友林業(株)(東京都)の5,190億円。住友家が別子銅山(愛媛県)周辺で興した林業をルーツとし、祖業の木材・木質の注文住宅に強みを持っている。

 増収率のトップは、18位にランクインした(株)ヒノキヤグループ(東京都、売上高1,103億円)。関東、東北地区を中心に「桧家住宅」のブランドで知られるハウスメーカーで、現在は家電量販大手(株)ヤマダホールディングス(TSRコード:270114270)の傘下。子会社の吸収合併効果が寄与した結果、売上高が倍増し、1,000億円超えとなった。
 また、上位20社のうち一建設(株)、(株)アーネストワン、(株)飯田産業、(株)東栄住宅、タクトホーム(株)の5社は、東証プライム上場で、業界のガリバーとして知られる飯田グループホールディングス(株)(TSRコード:332448568)の連結子会社だ。多様なブランドを展開するほか、グループのスケールメリットを生かし、高いシェアを誇る。

ハウスメーカーの売上高ランキング(上位20社)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

3

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

4

  • TSRデータインサイト

銭湯の利益6割減、値上げは諸刃の剣 独自文化の維持へ模索続く

木枯らし吹きすさぶなか、背中を丸めながら洗面器を抱えて銭湯に…。寒くなると銭湯が恋しくなるのは、いつの時代も変わらない。サウナブームで光明が差すように見える銭湯だが、実際はそうではない。

5

  • TSRデータインサイト

「退職代行」による退職、大企業の15.7%が経験 利用年代は20代が約6割、50代以上も約1割

「退職代行」業者から退職手続きの連絡を受けた企業は7.2%で、大企業は15.7%にのぼることがわかった。退職代行はメディアやSNSなどで取り上げられ、代行利用や退職のハードルが下がり、利用者も増えている。

TOPへ