銀行の中小企業等向け貸出 過去最高の384兆円に 中小向け2.8%増、大手向け8.4%増と伸び率に変化
国内銀行104行「中小企業等・地方公共団体向け貸出金残高」調査
2025年3月期の国内銀行104行の総貸出金残高は573兆8,602億円(前年比4.0%増)で、3月期では2010年以降、過去最高を更新した。
中小企業等向けの貸出金残高は、過去最高の384兆4,974億円(同2.8%増)だった。一方で、地方公共団体(以下、地公体)向けの貸出は39兆793億円(同0.1%減)と、2年連続で前年を下回った。
円安に加え、物価や人件費、金利などの上昇から、中小企業の資金繰りは厳しさを増している。経済活動は活発だが、輸出産業と内需型産業の二極化が進み、銀行は企業支援がより重要になっている。
業態別の中小企業等貸出金残高は、大手行が150兆567億円(前年比2.4%増)、地方銀行が190兆7,769億円(同3.2%増)、第二地銀が43兆8,514億円(同2.1%増)で、全業態で伸ばした。
ただ、総貸出金に占める中小企業向け貸出金の比率は、3月期では2010年以降で最低の67.03%(前年67.81%)だった。これは大企業等向け貸出が前年比8.4%増と大幅に伸びけん引したため。
なお、地公体向けは6.80%(同7.09%)で、2年連続で低下した。
過剰債務の解消が進まない中小企業は多い。一方で、リスクの低い大手企業への貸出を伸ばす動きが鮮明で、中小企業等向け貸出比率は前年を下回った。銀行は、中小企業への事業支援だけではなく、事業再生やM&A、廃業など、多方面の支援強化が求められている。
※本調査は、国内104銀行の2025年3月期決算で、「地方公共団体向け」と「中小企業等向け」の貸出金残高を前年と比較、分析した(りそな銀行、沖縄銀行は信託勘定を含む)。「中小企業等」は、個人向け貸出を含む。

中小企業等向け貸出金残高は過去最高も、貸出比率は過去最低の67.03%
2025年3月期の中小企業等向け貸出金残高は、384兆6,851億円(前年比2.8%増)だった。3月期では、2012年以降、14年連続で貸出金残高は伸び、初めて380兆円を超えた。
総貸出金残高に占める中小企業等貸出金残高の比率は67.03%(前年67.81%)で、2年ぶりに低下し、過去最低を記録した。
コロナ禍を経て、物価や人件費などのコストアップが企業の資金繰りを圧迫している。そして、銀行は、資金支援から企業の再生支援に舵を切っている。
過剰債務を抱えた中小企業の資金需要の変動はあるが、返済原資の確保が難しい中小企業への貸出から、上場企業や地場優良企業など低リスク貸出で伸ばしている状況が浮き彫りになった。
さらに、金利上昇局面では前倒しの設備投資もあり、中小企業等向けの貸出比率の低下につながっているようだ。
物価や人件費、金利などコストアップが企業収益に重く圧し掛かり、リスクを取りながら企業の実態に即した資金支援が問われている。