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代表者の自宅住所の非公開化、企業の6.7% 制度の認知進まず、与信低下を懸念する声も

2025年「代表者の住所非公開」に関するアンケート調査


 2024年10月1日、商業登記規則等の一部改正から1年が経過した。株式会社の代表取締役の住所の一部非公開を選択できる制度だが、東京商工リサーチのアンケート調査では一部非公開に踏み切った企業は6.7%にとどまることがわかった。昨年10月実施のアンケートでは、約3割が1年以内に非公開と回答していた。 
 非公開に踏み切らない理由では、「知らなかった」が過半数を超えたほか、非公開は与信面で「マイナス評価」と2割の企業が回答するなど、非公開のプラス面とマイナス面を様子見している企業が多いようだ。

 東京商工リサーチ(TSR)は10月1日から8日に、代表者住所の一部非公開についてアンケート調査を実施した。商業登記規則等の一部改正施行から1年を経過し、代表者の住所を非公開と「した」企業は6.7%だった。規模別では大企業14.9%、中小企業6.0%だった。
 一部非公開が進まない背景は、認知度の低さに加え、与信上の不安を払拭できないことがある。特に、「非公開にできることを知らなかった」と回答した企業が53.5%にのぼり、1年を経ても浸透していないようだ。また、「非公開手続きが煩雑と感じる」が23.7%、「行政手続きで提出書類の増加が見込まれる」が11.6%と、手続き上の煩雑さを指摘する企業も少なくない。
 さらに、「取引先の与信判断の硬化が懸念される」との回答が10.4%あった。取引先側では、与信先が代表者住所を非公開にした場合、与信を「マイナス」にする企業が21.2%にのぼり、非公開への変更で与信に変化が生じることを懸念する企業もあった。
 住所の一部非公開は、プライバシー保護とストーカーなどの被害抑制に効果があるといわれる。だが、非公開による与信低下を気にする企業も少なくない。このため、与信に不安のない大企業では非公開化への抵抗は少ないが、与信低下を懸念する中小企業との二極化が続きそうだ。

※ 本調査は、2025年10月1~8日にインターネットによるアンケート調査を実施し、5,890社から回答を得て、集計・分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。


Q1.2024年10月1日の商業登記規則の一部改正で、株式会社は会社登記簿謄本(商業登記)の代表者住所の非公開が可能になってから1年が経過しました。貴社は、非公開としましたか?(単一回答、株式会社以外の回答を除外)

◇「していない」が約8割
 代表者住所を非公開としたか尋ねた。「した」は6.7%(5,776社中、390社)にとどまり、「していない」は78.0%(4,505社)だった。一方、「わからない」が15.2%(881社)あった。
 規模別では、「した」は大企業が14.9%(474社中、71社)、中小企業は6.0%(5,302社中、319社)と、大企業が2倍以上高かった。また、「していない」は大企業が63.2%(300社)、中小企業が79.3%(4,205社)で、中小企業は約8割がしていないと回答した。

Q1.2024年10月1日の商業登記規則の一部改正で、株式会社は会社登記簿謄本(商業登記)の代表者住所の非公開が可能になってから1年が経過しました。貴社は、非公開としましたか?(単一回答、株式会社以外の回答を除外)

代表者住所の非公開を「した」 飲食店が17.9%

 「した」と回答した企業の業種別(母数10社以上)は、「飲食店」が17.9%(39社中、7社)だった。
 次いで、「ゴム製品製造業」が15.0%(20社中、3社)、「その他の製造業」が13.7%(51社中、7社)、「鉄鋼業」が13.3%(45社中、6社)、「化学工業」が12.8%(78社中、10社)などが続いた。

 一方、「していない」は、「貸金業,クレジットカード業等非預金信用機関」が100%(10社中、10社)で最も高かった。続いて「繊維・衣服・身の回り品小売業」が90.9%(11社中、10社)、「洗濯・理容・美容・浴場業」(18社中、16社)と「金融商品取引業,商品先物取引業」(18社中、16社)が各88.8%、「繊維・衣服等卸売業」が87.8%(41社中、36社)だった。

Q2 Q1で「しない」と回答された方に伺います。理由は何ですか?(複数回答)

◇非公開に「しない」理由 「知らなかった」が53.5%
 代表者住所の一部非公開に「しない」と回答した理由は、「非公開にできることを知らなかった」が53.5%(4,059社中、2,172社)で半数を超えた。法改正から1年を経過したが、認知度が低いようだ。続いて、「非公開手続きが煩雑と感じるため」が23.7%(964社)、「行政手続きで提出書類の増加が見込まれるため」が11.6%(472社)、「取引先の与信判断の硬化が懸念されるため」が10.4%(423社)、「金融機関の融資姿勢の硬化が懸念されるため」が8.6%(352社)で続く。
 「しない」と選択した企業は、非公開にできることを知らなかったほか、手続きの負担や与信面のマイナス影響などが絡んでいるようだ。
 「取引先の与信判断の硬化が懸念される」と回答した企業の産業別は、「農・林・漁・鉱業」が14.2%(35社中、5社)で最多だった。次いで、卸売業12.6%(800社中、101社)、不動産業12.4%(169社中、21社)が高かった。
 また、「金融機関の融資姿勢の硬化が懸念される」と回答した企業の産業別では、「金融・保険業」が12.5%(40社中、5社)、不動産業12.4%(169社中、21社)、卸売業9.3%(800社中、75社)が続く。

Q2 Q1で「しない」と回答された方に伺います。理由は何ですか?(複数回答) 

Q3.貴社の与信先(売掛先や前払い先、貸付先など)の商業登記簿の代表者住所が非公開となった場合、与信判断に影響を与えますか?(択一回答)

◇非公開が与信判断に「マイナス」2割強
 取引先企業の代表者住所が一部非公開になった場合、与信判断は「判断に影響はない」が69.2%(5,890社中、4,078社)と約7割は影響がないと回答した。既存取引先の代表者の住所は把握できており、影響は新規取引に限定されるため、すぐには影響は出ないようだ。
 だが、「ややマイナス」が17.4%(1,030社)、「大いにマイナス」が3.7%(223社)で、「マイナス評価」は合計21.1%に達し、前回調査(19.7%)から1.4ポイント上昇した。
 一方、「ややプラス」は0.3%(18社)、「大いにプラス」は0.1%(7社)で、「プラス」は合計0.4%だった。「決めかねている」は9.0%(534社)。

Q3.貴社の与信先(売掛先や前払い先、貸付先など)の商業登記簿の代表者住所が非公開となった場合、与信判断に影響を与えますか?(択一回答) 

産業別 与信判断への影響についてマイナス影響

 産業別で、「マイナス」回答の構成比が高かったのは、「金融・保険業」の32.3%(65社中、21社)で、住所非公開をマイナス評価とする企業が多かった。
 次いで、「卸売業」29.0%(1,122社中、326社)、「不動産業」28.4%(211社中、60社)が続いた。
 「マイナス」回答の構成比が高かった業種別では、「繊維・衣服等卸売業」38.0%(42社中、16社)、「金融商品取引業,商品先物取引業」36.3%(22社中、8社)、「広告業」36.0%(25社中、9社)などが高水準だった。

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