• TSRデータインサイト

中古車販売店の1-9月倒産82件 年間最多を更新へ 同期では過去10年で最多、価格上昇で苦境

2025年(1-9月)「中古自動車小売」倒産状況

 2025年1-9月の「中古自動車小売業」の倒産は82件(前年同期比51.8%増)で、前年同期の1.5倍に急増した。年間では、過去10年で最多の2018年(93件)を超えることがほぼ確実になった。
 負債総額は59億6,200万円(同90.8%増)で、前年同期の1.9倍と大幅に膨らんだ。負債1億円未満が約8割(構成比78.0%)と小規模倒産が中心だが、負債1億円以上5億円未満の中規模が17件(前年同期5件)と前年同期の3.4倍に増え、負債を押し上げた。

 中古車販売店の倒産は、資本金別で「1千万円未満」が73件(構成比89.0%)、従業員数別は「5人未満」が72件(同87.8%)と、全体の約9割を小・零細企業が占めている。ただ、平均負債額は7,200万円(前年同期5,700万円)とやや膨らむ傾向がみられた。
 コロナ禍以降、半導体不足による新車供給の落ち込みや円安による輸出の増加で、国内の中古車市場は“玉不足”により価格相場が高騰。小・零細規模の中古車販売店は、オークションなどでの仕入価格の上昇で売れ筋の入手が難しくなっている。さらに、水道・光熱費や人件費などのコストアップも進行し、借入依存度を高めて資金繰りに余裕を欠く企業が少なくない。
 また、中古車販売店では、1-9月の「後継者難」倒産が集計を始めた2013年以降、最多の10件発生した。経営者が高齢化し、競合も多い状況で後継者を育成できず、代表者が不測の事態に陥ると事業継続を断念せざるを得ない企業も散見される。
 中古車販売店の経営破たんが増え、代金を支払いながら納車されない顧客トラブルも目立つ。購入時に約束されたアフターケア、修理対応を受けられない事態も懸念され、新車より安価で、納期も早い中古車市場でお手頃価格が高値掴みにならないよう警戒する消費者も増えてきた。メーカー系ディーラー、独立系大手を交え、街の中古車屋さんの生き残りは厳しさを増している。
※本調査は、日本標準産業分類「中古自動車小売業」の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。


「中古自動車小売業」倒産 (1-9月) 件数・負債額推移

 原因別は、最多の「販売不振」が64件(前年同期比45.4%増)、代表者の死亡など「その他」が6件(前年同期1件)、「既往のシワ寄せ」が5件(同4件)で続く。
 形態別は、「破産」が78件(前年同期比52.9%増)、特別清算が3件(前年同期1件)、取引停止処分が1件(同ゼロ)だった。
 資本金別は、「1千万円未満」が73件(前年同期比52.0%増)と全体の89.0%を占めた。
 負債額別は、「1億円未満」が64件(同33.3%増)、「1億円以上」が18件(同200.0%増)。
 従業員数は、最多の「5人未満」が72件(同44.0%増)で、構成比87.8%を占めた。次いで、「5人以上10人未満」が9件(前年同期4件)、「20人以上50人未満」が1件(同ゼロ)。
 地区別は、最多の関東が27件(同18件)。次いで、近畿が13件(同10件)、中部(同13件)と九州(同4件)が各12件、北海道が7件(同2件)で、もともと多かった関東圏のほか、地方での増加も目立ち始めた。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ