1-9月「病院・クリニック」倒産 20年間で2番目の27件 中堅の病院が1.5倍増、深刻な投資負担とコストアップ
2025年1-9月「病院・クリニック」の倒産状況
2025年1-9月の病院・クリニックの倒産は27件に達し、2006年以降の20年間で2007年・2024年同期に並ぶ2番目の高水準だった。病院やクリニックの倒産は、患者から受診機会を奪い、医療の空白地帯を生みかねない。このペースで推移すると、2009年の42件以来、16年ぶりに年間40件を超える可能性も出てきた。
2006年以降の1-9月の医療機関(病院・クリニック)の倒産は、リーマン・ショック後の2009年に36件(前年同期比100.0%増)と最多を記録した。コロナ禍の2020年は資金繰り支援に支えられ、11件(同56.0%減)と大幅に減少、その後も10件台で推移した。だが、2024年は27件(同68.7%増)と前年同期の約1.7倍に急増し、2025年も前年同期と同じ27件と高水準で推移している。
2025年1-9月の医療機関の倒産は、地域医療を担う中堅規模で倒産が目立つ。クリニックは18件(同14.2%減)と前年同期を下回ったが、ベッド数20床以上の病院は9件(同50.0%増)と前年同期の1.5倍に増加し、過去20年間では2010年の11件に次ぐ4番目の多さだ。
負債額別では、(医)福慈会(負債66億円)を含む10億円以上が5件(前年同期2件)、5億円以上10億円未満が3件(同2件)だった。従業員数別では、従業員300人以上が2件(同ゼロ)、同50人以上300人未満が8件(同4件)と、それぞれ中堅規模で増加し、地域の核となる施設や陣容が必要な病院の苦境が鮮明となった。
医療機関は、理事長・院長の高齢化、医師や看護師の不足、医療設備の老朽化など、課題が山積するが、さらに、人件費に加え、電気代、備品・消耗品などの物価上昇も経営を圧迫している。
総務省が9月30日に発表した令和6年度地方公営企業等決算によると、自治体が運営する公立病院の約8割が赤字だった。
医療業務のコストと診療報酬のバランスが崩れ、採算が悪化する状況に追い込まれている医療機関は少なくない。医療の空白エリアが増えることも現実味を帯びており、診療報酬の見直しやM&Aなど、医療機関の存続に向けた取り組みが急がれる。
※本調査は、日本標準産業分類の「病院」「一般診療所」から負債1,000万円以上の倒産を集計、分析した(歯科医院を除く)。
原因別:「販売不振」が16件(前年同期比23.0%増、構成比59.2%)で最多。次いで、「既往のシワ寄せ」が5件(前年同期比37.5%減)、「他社倒産の余波」3件(同25.0%減)と続く。
形態別:「破産」が26件と9割超(前年同期比8.3%増、構成比96.2%)を占め、再建型の「民事再生法」は1件(前年同期2件)にとどまった。
負債額別:「1億円以上5億円未満」が12件(前年同期比7.6%減、構成比44.4%)で最多。このほか、「10億円以上」が5件(前年同期比150.0%増)。
従業員数別:最多が「5人未満」の10件(前年同期比16.6%減)。ただ、前年同期は発生がなかった「300人以上」が2件、「50人以上300人未満」が8件(同100.0%増)と2倍に増加した。