• TSRデータインサイト

ハンバーガー店の倒産、最多更新 ~ 材料高騰、大手と高級店の狭間で模索 ~

 年齢を問わず人気のハンバーガー店が苦境だ。2024年は1件だった倒産が、2025年は8月までに7件に達し、過去最多の2014年の年間6件を上回った。
 物価高で、材料の肉やチーズ、小麦、レタス、トマトなどが高騰し、人件費も上昇している。価格は大手チェーンの1個数百円から、人気店の2,000円前後まで幅広いが、他のファストフードとの競合で値上げもままならない。こうしたジレンマを抱えているが、倒産したハンバーガー店の8割超は販売不振が原因だ。価格と満足度のバランスがとれ、“値ごろ感”を演出できるハンバーガーを提供できるかが生き残りの鍵になっている。

ハンバーガー店の倒産 年次推移

優勝劣敗が鮮明

 ハンバーガー最大手の日本マクドナルドホールディングス(株)(TSRコード: 294151958)は、既存店の売上高が8月まで8カ月連続で前年同月を上回り、客数・客単価を伸ばし、好調を持続している。また、2,000円前後の高級ハンバーガーを提供する人気店には行列ができる。
 小売物価統計調査(主要品目、東京都区部小売価格)によると、ハンバーガー1個の価格は2019年8月時点で169円だった。だが、2022年7月は200円を超え、2023年4月は232円まで上昇した。その後は横ばいが続き、2年後の2025年3月に243円となった。
 だが、値上げはお客の購入意欲を低下させる。特に、牛丼店やラーメン店などのファストフードと価格帯で選ぶ客層が被る。値上げを躊躇させる背景になっているようだ。
 30代会社員は、「600円を超えるハンバーガーは食べられない」と値上げには否定的だ。

ハンバーガーの平均価格推移(東京都)



 ことし倒産した7件のうち、従業員10名未満の小・零細規模は6件を占める。
 価格勝負は大手チェーンに叶わず、食材や味は2,000円超の人気店に太刀打ちできない。
 使用するほとんどの食材が高騰している。値上げに耐えきれない消費者をいかに取り込むか、模索が続く。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ