• TSRデータインサイト

2025年1-5月の「病院・クリニック」の倒産 18件 前年上半期に並ぶ、ベッド数20床以上の病院が苦戦

2025年1-5月「病院・クリニック」の倒産状況


 コロナ禍を経て、病院やクリニックが苦境に立たされている。2025年1-5月に発生した病院・クリニックの倒産は18件で、すでに2024年上半期(1-6月)に並んだ。このペースをたどると、上半期では過去20年で最多だった2009件の26件に次ぐ2番目の高水準になることがほぼ確実で、16年ぶり20件超のペースで推移している。
 
 病院・クリニックの上半期(1-6月)の倒産は、2016年同期の5件を底に増勢をたどり、コロナ禍前の2019年は17件に達した。だが、2020年同期はコロナ禍の各種支援に支えられ、一転して9件(前年同期比47.0%減)とほぼ半減した。その後も低水準で推移したが、2024年同期は18件に跳ね上がり、2025年はそれを上回るペースをたどっている。
 なかでも、地域医療の中核となる医療機関の倒産が目立つ。2025年1-5月の倒産はクリニックが11件(前年同期比21.4%減)と前年同期を下回ったのに対し、ベッド数20床以上の病院は7件(同250.0%増)と過去20年間で最多を更新した。

 前年同期はなかった負債10億円以上が5件に急増、従業員数も前年同期ゼロだった300人以上が2件、50人以上300人未満も7件と大幅に増え、規模の大きな病院の倒産が増えている。
 医療機関は、患者数の減少や理事長・院長の高齢化が進み、医師や看護師不足、医療設備の老朽化など、様々な課題に直面している。さらに、最近は人件費に加え、電気代や各種備品・消耗品などの価格が上昇し、収益を圧迫している。医療業務を維持するコストと診療報酬のバランスが崩れると、採算悪化が加速する状況に追い込まれている。
 今夏にはコロナ禍で実行された独立行政法人福祉医療機構(WAM)のゼロゼロ融資の返済開始がピークを迎える。返済原資を確保できない医療機関の破綻が広がると、地方を中心に医療空白の地域が増える可能性も出てくる。
※本調査は、日本標準産業分類の「病院」「一般診療所」から負債1,000万円以上の倒産を集計、分析した。


病院・医院の倒産 年次推移(1-6月)


原因別は、「販売不振」が11件(構成比61.1%)で最多。次いで、 「既往のシワ寄せ」が3件(同16.6%)、「他社倒産の余波」2件(同11.1%)と続く。

形態別は、すべてが消滅型の「破産」で、再建型はゼロ。

負債額別は、 「1億円以上5億円未満」が7件(前年同期比22.2%減、前年同期9件)で最多。 次いで、「10億円以上」が5件(前年同期ゼロ)。

従業員数別は、前年同期に発生がなかった「50人以上300人未満」が7件だったほか、300人以上も2件発生。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「人手不足倒産予備軍」  ~ 今後は「人材採用力」の強化が事業継続のカギ ~

賃上げ圧力も増すなか他社との待遇格差で十分な人材確保ができなかった企業、価格転嫁が賃上げに追い付かず、資金繰りが限界に達した企業が事業断念に追い込まれている。  こうした状況下で「人手不足」で倒産リスクが高まった企業を東京商工リサーチと日本経済新聞が共同で分析した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「人手不足」倒産 359件 サービス業他を主体に、年間400件に迫る

深刻さを増す人手不足が、倒産のトリガーになりつつある。2025年11月の「人手不足」倒産は34件(前年同月比70.0%増)と大幅に上昇、6カ月連続で前年同月を上回った。1-11月累計は359件(前年同期比34.4%増)と過去最多を更新し、400件も視野に入ってきた。

3

  • TSRデータインサイト

【社長が事業をやめる時】 ~消えるクリーニング店、コスト高で途絶えた白い蒸気~

厚生労働省によると、全国のクリーニング店は2023年度で7万670店、2004年度以降の20年間で5割以上減少した。 この現実を突きつけられるようなクリーニング店の倒産を聞きつけ、現地へ向かった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「税金滞納」倒産は147件 資本金1千万円未満の小・零細企業が約6割

2025年11月の「税金(社会保険料を含む)滞納」倒産は10件(前年同月比9.0%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。1-11月累計は147件(前年同期比11.9%減)で、この10年間では2024年の167件に次ぐ2番目の高水準で推移している。

5

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

TOPへ