• TSRデータインサイト

1-4月の「自動車部品メーカー」の倒産が11件 減産・原材料高騰などで揺れる業界 今後はトランプ関税も

~2025年(1-4月)「自動車部品メーカー」倒産状況~

 EV(電気自動車)シフト、認証不正問題、「トランプ相互関税」などで自動車業界が揺れている。2025年1-4月の自動車部品メーカーの倒産は、メーカー減産やコストアップによる収益悪化などで11件(前年同期比15.3%減)と高水準で推移した。倒産件数が10件を上回るのは2年連続で、2017年と並ぶ過去3番目。
 一方で、負債総額は14億1,300万円(同51.8%減)と半減した。これは最大の倒産が負債4億4,700万円で、前年同期に3件発生した同5億円以上がなかったため。また、同10億円以上は2024年8月以降発生せず、小規模事業者の息切れ倒産を中心にしている。

 2019年以降、消費増税に伴う需要減、コロナ禍の各国ロックダウンに伴うサプライチェーン問題、半導体不足など、様々な要因が重なり、自動車メーカーは厳しい事業環境が続いていた。
 また、2023年以降はダイハツ工業(株)など大手自動車メーカーで認証不正の発覚が相次ぎ、下請けの自動車部品メーカーは対象車種の生産停止による受注減少などの影響が出た。一部の受注先に依存した小規模の自動車部品メーカーも多く、受注減や原材料価格の高騰などで苦境に陥り、倒産だけでなく廃業などで事業継続を断念するケースも少なくない。
 2025年4月に降りかかった「トランプ関税」の影響も不透明だ。4月3日から自動車に25%の追加関税が課され、5月3日からは主要な自動車部品に25%の追加関税が課せられた。
 今後、関税負担の軽減のため、各自動車メーカーがアメリカ国内へ生産拠点を移管していく動きが出た場合、国内工場向けに製品を納入する部品メーカーの動向が注目される。
 材料高などのコストアップも深刻だ。受注不振に陥った自動車部品メーカーは事業の見直しを迫られるが、資金調達が難しく先行きの見通しが立たなくなった企業を中心に、倒産が高止まりする可能性が危惧される。

※本調査は、日本標準産業分類「自動車部分品・附属品製造業」の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。

自動車部品メーカーの倒産 過去10年推移

◆倒産概要

 形態別は、「破産」が9件(前年同期8件)、特別清算が2件(同1件)だった。
 資本金別は、「1千万円以上」が6件(同7件)で、54.5%を占めた。個人企業他を含む「1千万円未満」は5件(同6件)。
 負債額別は、「1億円以上」が5件(構成比45.4%、前年同期7件)、「1億円未満」が6件(同54.5%、前年同期同数)で拮抗している。
 従業員数は、最多の「5人未満」が5件(前年同期8件)で45.4%で、ほぼ半数を占めた。次いで、「10人以上20人未満」が3件(同4件)、「20人以上50人未満」が2件(同1件)、「5人以上10人未満」が1件(同ゼロ)だった。
 地区別は、最多の中部が6件(同5件)で半数以上(構成比54.5%)を占めた。次いで、関東が2件(前年同期4件)、東北(同1件)・近畿(同2件)・中国(同1件)が各1件だった。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

私立大学の経営、売上トップは(学)順天堂 赤字企業率5割に迫る、損益は地域格差が鮮明に

私立大学を経営する全国の543法人のうち、約半数の253法人が2024年決算で赤字だった。赤字企業率は46.5%にのぼり、前期(40.8%)から5.7ポイント上昇し、5割に迫った。

2

  • TSRデータインサイト

企業倒産、破産の割合が9割超で過去最大 ~ 背景に「手形減少」と「準則型私的整理」 ~

企業倒産のうち、破産の構成比が90.3%に達し、過去最大を記録した。民事再生法はわずか2.2%にとどまる。破産は、売上不振や財務内容が悪化し、再建が見通せない企業が選択する。なぜ今、破産の構成比が高まっているのか――。

3

  • TSRデータインサイト

2025年上半期 20床以上の病院倒産が急増 「病院・クリニック」倒産21件、5年連続で前年同期を上回る

病床20床以上の病院の経営が厳しさを増している。2025年上半期(1-6月)の病院・クリニックの倒産は21件(前年同期比16.6%増)だった。上半期では、コロナ禍の2020年を底に、2021年から5年連続で前年同期を上回り、1989年以降で最多の2009年同期の26件に次ぐ、2番目となった。

4

  • TSRデータインサイト

リフォーム・塗装工事の倒産が急増 ~ 点検商法などのトラブル多発 ~

リフォーム・塗装工事の倒産が急増している。2025年上半期(1-6月)の倒産は119件に達し、過去20年で最多だったリーマン・ショック後の2009年同期の111件を上回った。

5

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 止まらない客室単価の値上げ インバウンド需要で高稼働・高単価が続く

インバウンド(訪日旅行客)需要に支えられ、ホテル業界は好調が続いている。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2025年3月期の客室単価は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に前年同期を上回り、稼働率も前年同期並で高水準を維持している。

TOPへ