• TSRデータインサイト

2024年度の「ゼロゼロ融資」利用後倒産 529件 初めて前年度を下回る、累計1,899件に

2024年度「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況


 2024年度のコロナ関連支援策の「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用した企業の倒産は、529件(前年度比15.0%減)で、集計を開始以来、初めて前年度(623件)を下回った。
 2024年4月に返済がピークを迎えたが、同年6月から2025年3月まで10カ月連続で前年同月を下回るなど、小康状態が続いている。なお、2020年7月からの累計は1,899件に達した。

 「ゼロゼロ融資」などコロナ関連支援策は、急激な業績悪化で窮境状態に陥った企業の資金繰り維持に効果をみせた。だが、コロナ禍が落ち着くと同時に、物価高や人手不足、人件費上昇に見舞われ、業績回復が遅れた企業には返済が新たな負担になってきた。2024年4月に返済開始の最後のピークを迎えたが、コロナ借換保証など伴走支援、金融機関や信用保証協会のリスケ(返済猶予)承諾などで倒産は沈静化している。

 政府は、2025年4月以降、コロナ対応型の資金繰り支援から経営改善・再生支援・成長促進に軸足を移し、経営を後押しする構えだ。だが、中小企業庁によると、コロナ借換保証を受けた約8割の企業が返済開始までの据え置き期間を2年以内に設定しており、夏以降、返済が始まる企業の動向が注目される。

 日本銀行の政策金利引き上げに伴う金利上昇や物価高、人手不足や賃上げなど、様々なコスト上昇が収益を圧迫している。さらに、トランプ米国大統領の相互関税が公表され、株価の急落など世界経済を揺るがしている。ドル円相場は半年ぶりの円高に振れるなど乱高下し、4月7日の日経平均株価の終値は過去3番目の下げ幅を記録した。政府は、米国自動車関税措置等に伴う影響が懸念される中小・小規模事業者に対し、セーフティネット貸付の要件緩和を認めるが、価格転嫁や過剰債務の解消などの根本的な課題への取り組みも急がれる。
※ 本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていた企業の倒産(法的・私的)を集計、分析した。

ゼロゼロ融資利用後倒産 月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ