• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

2024年9月中間期 銀行の不良債権が6年連続増加 貸倒引当金は全体では増加も、積み増しは48行に

国内106銀行 2024年9月中間期「金融再生法開示債権」調査


 2024年の企業倒産は1万6件と11年ぶりに1万件を超えたが、金融機関の不良債権(懸念先を含む)が8兆9,237億円に達し、6年連続で前年同期を上回ったことがわかった。
 106銀行の2024年9月中間期(単独)の「金融再生法開示債権(以下、開示債権)」は、8兆9,237億円(前年同期比3.0%増)だった。「開示債権比率」(債権合計に対する開示債権の割合)は1.25%(中央値1.78%)で、前年同期1.24%から0.01ポイント上昇した。
 倒産や債務整理など債権回収不能に備えた「貸倒引当金」も4兆1,454億円(同2.4%増)で、6年連続で増加した。ただ、貸倒引当金を積み増したのは48行(前年同期46行)で、2年連続で減少行が増加行を上回った。コロナ禍を経て倒産は増えているが、与信コストが急増する大型倒産は少なく、フォワードルッキングで保守的に貸倒引当金を積み増す銀行が多いようだ。

 国内106行のうち、開示債権が前年同期を上回ったのは大手行4行(前年同期6行)、地方銀行29行(同28行)、第二地銀19行(同26行)の合計52行(同60行)で、前年同期から8行減少した。
 増加率が最も大きかったのは、あおぞら銀行の121.8%増で、次いで、福岡中央銀行の70.6%増、神奈川銀行の55.9%増の順。
 貸倒引当金の積み増しは、大手行6行(同5行)、地方銀行30行(同22行)、第二地銀12行(同19行)の48行(構成比45.2%)で半数に届かず。増加率の最大は、きらやか銀行の99.5%増。
※本調査は、国内106銀行の2024年9月中間期決算(単独)で、「金融再生法開示債権」(破産更生債権及びこれらに準ずる債権、危険債権、要管理債権)、および各銀行の「貸倒引当金」を集計し、分析した。
※銀行法の改正により2022年3月期から貸出金のほか、外国為替、未収利息、仮払金、支払承諾見返などを対象に、リスク管理債権が金融再生法開示債権に一本化された。
※1.大手行は埼玉りそなを含む7行、2.地方銀行は全国地銀協加盟行62行、3.第二地銀は第二地銀協加盟行37行。


開示債権は6年連続で増加、開示債権比率は3年ぶりに上昇

 106行の2024年9月中間期の「開示債権」は合計8兆9,237億円(前年同期比3.0%増)で、9月中間期では2019年から6年連続で前年同期を上回った。
 「開示債権比率」は1.25%(前年同期1.24%)で、3年ぶりに上昇した。開示債権比率の最大は、スルガ銀行の9.16%(同10.16%)。次いで、きらやか銀行6.15%(同4.34%)、長野銀行5.85%(同4.96%)、豊和銀行5.33%(同5.03%)、南日本銀行5.03%(同5.03%)で、2位のきらやか銀行から12位の福邦銀行まで第二地銀が占めた。
 なお、最低はSBI新生銀行の0.31%(同0.31%)で、1%未満は5行(同6行)だった。


  金融再生開示債権・同比率推移

業態別 地方銀行だけが開示債権比率が低下

 業態別の「開示債権」は、大手行3兆4,425億円(前年同期比8.6%増)、第二地銀1兆2,227億円(同2.8%増)で、それぞれ前年同期を上回った。一方、地方銀行は4兆2,585億円(同1.1%減)と唯一、前年同期を下回った。
 「開示債権比率(金融再生法開示債権/債権合計)」は、大手行が0.88%(前年同期0.83%)、第二地銀が2.14%(同2.11%)と上昇した。一方、地方銀行は1.60%(同1.67%)と低下した。
 「開示債権」が前年同期を上回ったのは、大手行が4行(前年同期6行)、地方銀行が29行(同28行)、第二地銀が19行(同26行)の合計52行(同60行)だった。
 第二地銀は、「要管理債権」(リスケや事実上延滞している企業などを含む)が1,269億円(前年同期比3.2%減)と減少した。だが、その一方で、「破産更生債権及びこれらに準ずる債権」(倒産や深刻な経営難で再建見通しがない実質破綻企業を含む)が2,173億円(同0.5%増)、「危険債権」(約定通り回収できない可能性のある企業などを含む)が8,783億円(同4.3%増)と前年同期を上回った。物価高やコストアップで中小企業の資金繰りは厳しさを増しているが、第二地銀の取引先は業績回復が遅れた企業が多いことを浮き彫りにしている。

貸倒引当金は6年連続で増加、一方で増加行が減少行を2年連続で下回る

 2024年9月中間期の「貸倒引当金」合計は4兆1,454億円(前年同期比2.4%増)で、2019年から6年連続で前年同期を上回った。
 業態別は、大手行2兆1,879億円(同5.3%増)と第二地銀3,793億円(同0.8%増)が増加した一方、地方銀行は1兆5,781億円(同1.0%減)と前年同期を下回った。
 2024年9月中間期に貸倒引当金を積み増した銀行は、大手行6行(前年同期5行)、地方銀行30行(同22行)、第二地銀12行(同19行)の48行で、前年同期の46行から2行増加した。ただ、2年連続で「増加行」が「減少行」を下回った。
 大手行や地方銀行は、貸出先の倒産に伴う貸倒引当金の積み増しより、フォワードルッキングによる保守的な積み増しが押し上げたとみられる。
 増加率の最大は、きらやか銀行(第二地銀)の前年同期比99.5%増(131億円増)。同行は、一般貸倒引当金が65億円(前年同期比52.0%増)と前年同期の1.5倍、個別貸倒引当金は198億円(同122.5%増)と2.2倍に、それぞれ急増した。
 以下、福岡中央銀行(第二地銀)の前年同期比68.7%増(22億円増)、神奈川銀行(第二地銀)の同57.6%増(14億円増)、鳥取銀行(地方銀行)の同49.3%増(15億円増)、あおぞら銀行(大手行)の同44.7%増(235億円増)の順。
 きらやか銀行は2024年4月、同年9月返済予定の公的資金200億円が返済困難と公表した。また、福岡中央銀行は2023年10月にふくおかフィナンシャルグループ、神奈川銀行は同年4月にコンコルディアフィナンシャルと、それぞれ経営統合した。
 企業倒産は増勢をたどるが、小規模の倒産が中心のため銀行の与信費用に大きな増加はない。ただ、銀行の経営体力により貸倒引当金の積み増し状況に差が生じているようだ。

貸倒引当金・増減行数推移



 国内106銀行の2024年9月中間期の「開示債権」は、6年連続で前年同期を上回った。貸倒引当金を積み増した銀行は48行と前年同期の46行から2行増加したが、2年連続で積み増し行数が減少行数を下回った。
 2024年の全国企業倒産件数は2013年以来、11年ぶりに1万件を超えるなど、倒産件数は増勢が続く。経済活動が平時に戻ったが、円安などによる物価高、人材確保のための人件費の上昇などが、企業の資金繰りに大きな負担となっている。また、コロナ禍で資金繰り支援により過剰債務に陥り、新たな資金調達が難しい企業は少なくない。
 さらに、日本銀行は政策金利の引き上げを決定し「金利のある世界」に再び戻ったことで、低金利で成り立っていた企業のビジネスモデルは大きな転換期を迎える。銀行は保守的に貸倒引当金を積み増しているケースもあるが、貸出先の喪失は銀行の経営にも影響を及ぼしかねない。リスクを取りながら企業の再建に取り組めるか、銀行の力量が問われる時代となっている。

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ