• TSRデータインサイト

「税金滞納(社会保険料含む)」倒産 過去最多の176件 サービス業他や建設業など、労働集約型で増加が目立つ

2024年(1-12月)の「税金滞納」倒産


 2024年に税金や社会保険料の滞納が一因となった倒産が、過去最多の176件(前年比91.3%増)に達したことがわかった。前年の92件から1.9倍と大幅に増えた。
 過剰債務を抱え、新たな資金調達が難しい中小企業は多い。さらに、円安に伴う物価上昇や人材確保、賃上げなど、様々なコストアップで収益が悪化している企業は少なくない。経営が厳しい企業は、税金や社会保険料の納付を後回しにして、運転資金の確保を優先しがちだ。だが、公租公課の滞納に対する徴収は厳しく、今後は納付意思のある企業に対しては「徴収ありき」でなく、計画的な納付への支援も必要だろう。

 産業別では、最多はサービス業他の49件(前年比88.4%増)だった。次いで、建設業42件(同162.5%増)で、労働集約型産業の収益性が低い企業ほど滞納が多いことを示している。
 資本金別では、最多が「1千万円以上5千万円未満」の78件(同129.4%増)。負債額別では、最多が「1億円以上5億円未満」の77件(同250.0%増)で、それぞれ全体の4割を占めた。

 社会保険料の滞納額は、賃上げに連動して嵩むため、負債が膨らむ要因の一つになっている。
 2024年10月から社会保険料の適用事業所が拡大された。人材の引き留めや確保のための賃上げでも、物価高の中では企業の資金負担は増すばかりだ。税金や社会保険料など、公租公課の納付は義務だが、企業とコミュニケーションを図りながら納付を促すことが重要になっている。
※本調査は、2024年(1-12月)の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「税金滞納」関連を集計・分析した。


「税金滞納」倒産推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ