• TSRデータインサイト

「職別工事業」の倒産が増勢を強める 1‐11月累計677件、年間は11年ぶり700件超に

2024年1-11月「職別工事業」倒産状況

 とび・土工・コンクリート工事業などの「職別工事業」の倒産が11月は66件(前年同月比29.4%増)発生、2024年1-11月累計は677件(前年同期比18.7%増)に達した。すでに前年1年間の634件を上回り、2013年(742件)以来、11年ぶりに700件超えが濃厚となった。
 業種別では、「内装工事業」144件(前年同期比16.1%増)を筆頭に、「とび工事業」138件(同24.3%増)、「塗装工事業」99件(同16.4%増)などで増加が目立つ。

 2024年4月から施行された時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」は建設業にも適用された。2024年10月の有効求人倍率は、とび職人が該当する「建設躯体工事従業者」が8.70倍と全職業の1.16倍を大きく上回る。深刻な求人難は建設業界全体に共通し、1-11月の倒産のうち、求人難や賃金上昇などが要因の「人手不足」関連倒産は63件(前年同期38件)に急増している。
 資材高も収益を圧迫し、1-11月の「物価高」関連倒産は36件(同33件)と前年同期を上回る。また、資材の供給難も建設業者を直撃し、工期遅れや受注機会の喪失などダメージを招いている。
 ピラミッド構造で成り立つ建設業界では、多くの職別工事業がゼネコンの下請け、孫請け受注で、大半は小・零細規模の業者が占めている。工事の一部分を専門的に請け負う必要不可欠な存在だが、一方で受注価格の交渉力は弱いのが実情だ。物価高と人手不足が進行するなか、職別工事業者抜きの工事現場は成り立たない。建設業界は下請け、孫請けの経営環境まで配慮が必要な時期を迎えている。

※本調査は、日本標準産業分類の中分類「職別工事業」の負債総額1,000万円以上の倒産を集計、分析した。

職別工事業の倒産 年次推移

✔業種小分類別は、とび・土工・コンクリート工事業が168件(前年同期比30.2%増)で最多。次いで、床・内装工事業144件(同16.1%増)、その他の職別工事業138件(同14.0%増)、塗装工事業101件(同18.8%増)が続く。
✔原因別は、販売不振が474件(構成比70.0%)で最多。次いで、既往のシワ寄せ138件、事業上の失敗と他社倒産の余波が各18件、代表者死亡などその他(偶発的原因)12件の順。
✔形態別は、破産が637件(構成比94.0%)で9割超を占めた。取引停止処分21件が続く。
✔負債額別は、1千万円以上5千万円未満の418件が最多で、6割(同61.7%)を占めた。次いで、1億円以上5億円未満が127件、5千万円以上1億円未満が120件、5億円以上10億円未満9件、10億円以上3件の順。
✔従業員数別は、5人未満が532件で約8割(同78.5%)を占めて最多。このほか、5人以上10人未満が107件、10人以上20人未満が30件、20人以上50人未満が6件、50人以上300人未満が2件。
✔都道府県別では、大阪府95件が最多。東京都88件、神奈川県50件、愛知県48件が続く。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【TSRの眼】「トランプ関税」の影響を読む ~ 必要な支援と対応策 ~

4月2日、トランプ米国大統領は貿易赤字が大きい国・地域を対象にした「相互関税」を打ち出し、9日に発動した。だが、翌10日には一部について、90日間の一時停止を表明。先行きが読めない状況が続いている。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 インバウンド需要と旅行客で絶好調 稼働率が高水準、客室単価は過去最高が続出

コロナ明けのインバウンド急回復と旅行需要の高まりで、ホテル需要が高水準を持続している。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2024年10-12月期の客室単価と稼働率は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に、前年同期を上回った。

4

  • TSRデータインサイト

2024年度の「後継者難」倒産 過去2番目の454件 代表者の健康リスクが鮮明、消滅型倒産が96.6%に 

2024年度の後継者不在が一因の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は、過去2番目の454件(前年度比0.8%減)と高止まりした。

5

  • TSRデータインサイト

2025年「ゾンビ企業って言うな!」 ~ 調達金利の上昇は致命的、企業支援の「真の受益者」の見極めを ~

ゾンビ企業は「倒産村」のホットイシューです、現状と今後をどうみていますか。 先月、事業再生や倒産を手掛ける弁護士、会計士、コンサルタントが集まる勉強会でこんな質問を受けた。

TOPへ