• TSRデータインサイト

2024年度上半期「物価高」倒産353件 夏場に小康状態、円安で再び増加の懸念も

2024年度上半期(4-9月) 「物価高」倒産状況


 物価高が長引く中、「物価高」に起因する倒産に変化が出てきた。2024年度上半期(4-9月)の「物価高」倒産は353件(前年同期比4.7%増)で、負債総額は1,056億5,800万円(同62.4%減)だった。
 月次では5月にコロナ禍以降で最多の88件発生したが、6月、8月、9月は40件台に減少し、物価高への対応が効果をみせているようだ。ただ、物価高の要因でもある為替変動は大きく、厳しい経営環境が続いている。

 「物価高」倒産の産業別は、最多が建設業の79件(前年同期比9.7%増)。以下、製造業78件(同21.8%増)、運輸業65件(同7.1%減)の順。これらの産業は人手不足に加え、燃料や資材価格の上昇の影響が深刻なほか、下請け企業も多く価格転嫁の広がりが課題になっている。
 負債額別は、1億円以上が205件(前年同期比7.8%増、構成比58.0%)。形態別は、破産が321件(同7.0%増、同90.9%)で大半を占めた。

 円相場は9月末に1ドル=142円台へ円高に振れたが、10月に入り1ドル=149円台に円安が進んだ。このまま円安が進むと輸入材価格が高止まりする可能性が高い。為替と価格変動はタイムラグがあり、物価高がすぐに落ち着くことは難しい。また、人材確保のための賃上げ、借入金利の引き上げなども、収益への負担が大きい。このため、新たな資金調達が難しい企業が多い状況では、元請け企業や発注企業が価格転嫁を受け入れる環境整備が一段と重要になっている。


※本調査は、2024年度上半期(4-9月)の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。

「物価高」倒産月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

3

  • TSRデータインサイト

チャプター11をめぐる冒険 ~ なぜマレリはアメリカ倒産法を利用したのか ~

ずっと日本にいるのに時差ボケが続いている。  「マレリのチャプター11が近いから関連サイトをチェックし続けろ」と6月6日に先輩に言われて以降、私の生活はアメリカ時間だ。

4

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

5

  • TSRデータインサイト

定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。東京商工リサーチが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。

TOPへ