• TSRデータインサイト

1-8月「粉飾決算」倒産 コロナ禍以降で最多の11件 バンクミーティング、支援要請での「粉飾」発覚が増加

~ 2024年1-8月「粉飾決算」倒産 ~


 赤字や資金の不正流出などを隠ぺいする「粉飾決算」の発覚による倒産が、2024年は1‐8月で11件(前年同期比83.3%増)と急増している。このペースで推移すると、2020年の14件を上回り、コロナ禍以降では年間最多を更新する可能性が出てきた。もともと、粉飾決算は倒産後に判明するケースが大半だった。長年にわたり巧妙に積み重ねた粉飾決算を見抜くことは難しいが、コロナ禍を挟み、バンクミーティングや取引先などに支援を要請するタイミングでの発覚や告白するケースが増えている。

 2024年1-8月の企業倒産は、負債1億円未満が4,919件(前年同期4,127件)と7割(74.4%)を占めている。だが、「粉飾決算」倒産はすべて負債1億円以上の倒産だ。取引や資金調達の維持を図るため、金融機関や取引先に事実を隠ぺいした「粉飾決算書」を提出するのは、クレジットリスクが一定規模以上の企業が中心で、粉飾で負債が膨れる傾向にある。
 形態別では、「破産」が8件(前年同期比166.6%増)と7割(72.7%)を占めた。

 金融機関や企業間取引は、信用(クレジット)で成り立っている。粉飾決算は、期限利益の喪失条項に抵触するため、発覚すると金融機関は資産の差押えや預金凍結、貸出金の回収に動く。企業間では現金取引への移行か取引停止が一般的だ。粉飾決算の発覚に起因する倒産の実態は、まだ氷山の一角と推測される。それだけに金融機関や取引先との関係維持には、先入観を持たず、取引先との対話で決算数値に表れない企業の実態をしっかり見極めることが重要になっている。 

※本調査は、2024年1-8月の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「粉飾決算」関連倒産をまとめて集計・分析した。
※本調査の「粉飾決算」は、倒産後の発覚でなく、粉飾決算の発覚による信用低下で倒産したケースを対象に集計した。

「粉飾決算」倒産推移(1-8月)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「他都道府県への本社移転」 1万6,271社 TSMC効果?九州が転入超過トップ、県別トップは埼玉県

2024年度に他都道府県に本社・本社機能を移転した企業は1万6,271社(前年度比18.7%増)で、前年度から大きく増加した。コロナ禍からの人流回復や需要変化に合わせ、本社移転の動きが活発化している。

2

  • TSRデータインサイト

創光科学の「破産開始決定」が取消しに ~上場子会社、複雑に絡まり合う利害関係 ~

東証プライム上場の医療機器メーカー、日機装(株)(渋谷区)は5月15日、連結子会社の創光科学(株)(渋谷区)の破産開始決定の取消しに関する経過を開示した。 破産手続きを巡り、2年にわたる親会社VS創業者の異例の抗告合戦へと発展した事件は、最高裁の判断でようやく決着した。

3

  • TSRデータインサイト

警備業界は大手2社の寡占化が進む 人手不足で倒産・休廃業が過去最多

全国の主な警備会社828社の2024年の業績は、売上高が1兆9,180億円(前年比2.6%増)、最終利益は1,604億円(同15.6%増)と、堅調に推移している。 業界市場は拡大しているが、大手の寡占化が進み、中小・零細事業者は人手不足でコストが上昇し、経営環境は厳しさを増している。

4

  • TSRデータインサイト

「雇調金」不正受給 倒産率は平均の約31倍 不正公表1,699件、サービス業他が45%

全国の労働局が4月30日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数は、2020年4月からの累計が1,699件に達した。不正受給総額は551億6,918万円にのぼる。

5

  • TSRデータインサイト

マレリにマザーサンが買収提案、私的整理の協議の行方は ~ 「マザーサンの提案は選択肢の一つ」 ~

自動車部品大手のマレリホールディングス(株)は5月26日、私的整理を協議するために都内で集会を開催した。 集会後、マレリHDの関係者が東京商工リサーチの取材に応じ「マザーサンの買収提案は選択肢の一つだ。それしかないような報道がなされているが、一択ではない」とコメントした。

TOPへ