• TSRデータインサイト

2024年上半期の「ゼロゼロ融資」利用後倒産は327件 倒産の増勢を維持、高止まりで推移

2024年上半期(1-6月)「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況


 2024年上半期(1-6月)のゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)を利用した企業の倒産は、327件(前年同期比0.6%増)で、前年同期とほぼ横ばいで推移した。ただ、2023年下半期(7-12月)と比べて17件増加しており、増勢ペースが続いている。
 2024年6月は47件だったが、3月から5月は調査を開始して以来、初めて3カ月連続で60件を超え、高止まりしていた。ゼロゼロ融資を利用した企業の倒産は、2020年7月から累計1,547件に達した。

 産業別では、最多がサービス業他の99件(前年同期比12.3%減)で、全体の3割(構成比30.2%)を占めた。次いで、建設業が61件(前年同期比6.1%減)で続く。

 業種中分類別では、「飲食店」が37件で最も多い。光熱費や食材費の高騰、人件費の上昇に加えて人手不足が重なり、採算悪化から破たんするケースが目立った。

 ゼロゼロ融資などコロナ禍の資金繰り支援策は、導入企業の延命に繋がった。だが、その副作用として過剰債務に陥った企業は、売上回復局面での新たな資金調達が難しく、窮屈な資金繰りを強いられている。各種コスト増が収益を圧迫しており、ゼロゼロ融資の返済原資の確保が難しい企業も増えている。
 政府は、民間ゼロゼロ融資の返済開始が今年4月に最後のピークを迎えるにあたり、コロナ資金繰り支援を6月末まで、政府系金融機関分については12月末まで延長した。一方で、7月以降は支援体制をコロナ前の水準に戻しつつ、経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援に軸足を移している。今後は収益を改善させて、自立を促す支援への転換が強まりそうだ。

 物価高や人手不足が中小・零細企業の経営を圧迫し、2024年の倒産件数は1万件台に達する見通しが出てきた。なかでも、ゼロゼロ融資の返済負担が重荷で、資金繰りに窮した企業を中心に倒産をさらに押し上げる可能性もある。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。

ゼロゼロ融資利用後 倒産月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「人件費高騰」の倒産が急増、人手不足が深刻に 2024年の「人手不足」倒産 過去最多の289件

コロナ禍は落ち着いたが、大手中心に進む賃上げが中小企業を追い詰めている。2024年に「人手不足」が一因となった倒産は、2013年以降で最多の289件(前年比81.7%増)に達した。

2

  • TSRデータインサイト

「情報通信業」の倒産 11年ぶり400件超 競合過多と収益悪化で中小・零細の淘汰が鮮明

小・零細規模のソフトウェア開発企業を中心に、情報通信関連企業の淘汰が続いている。2024年の「情報通信業」の倒産は425件(前年比21.7%増)で、2013年の450件以来、11年ぶりに400件を超えた。

3

  • TSRデータインサイト

「芸能プロ」の倒産・休廃業が過去最多の193社 タレントの独立・移籍、ネットでの活動拡大が逆風

 コロナ禍を経て芸能プロダクションの経営環境が厳しさを増している。2024年は22件(前年比57.1%増)が倒産に追い込まれ、2014年以降で最多を記録した。また、休廃業・解散も171件(同64.4%増)と大幅に増え、倒産と休廃業・解散を合わせると2024年は193社が表舞台から退出した。

4

  • TSRデータインサイト

2024年の「ラーメン店」倒産 過去最多の57件 二大人気の「醤油・中華」、「とんこつ」で半数超える

2024年に倒産したラーメン店は57件(前年比26.6%増)で、集計を開始以降で最多だった2023年の45件を大幅に更新した。

5

  • TSRデータインサイト

フジHD 国内取引9,654社 芸能プロや番組制作など小規模企業への影響懸念

スポンサー離れとコマーシャルの差し止めが相次ぐフジテレビだが、親会社のフジ・メディア・ホールディングスのグループ会社の国内取引先数は9,654社あることが東京商工リサーチの調査でわかった。

TOPへ