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2024年の「中堅企業」は9,229社 企業支援の枠組み新設で、成長を促進し未来志向へ

~ 2024年 「中堅企業」動向調査 ~


 経済産業省は、大企業と中小企業の間に「中堅企業」という分類を新たに設け、税制優遇などの支援に乗り出す。従業員数が2,000人以下の企業が「中堅企業」と定義づけされる。
 東京商工リサーチの企業データベースでは、2024年3月時点で「中堅企業」は9,229社(前年比1.2%増、構成比0.7%)あることがわかった。このうち、2023年の中小企業が、2024年に「中堅企業」に規模を拡大した企業は399社だった。一方、「中堅企業」から「中小企業」へ規模が縮小した企業も311社みられた。

 中堅企業の産業別構成比は、最大はサービス業他の28.8%。次いで、情報通信業18.0%、製造業16.3%と続く。このほか、大企業は製造業33.4%、中小企業は建設業28.8%が最大だった。
 3期連続で売上高・当期利益・従業員数が比較可能な企業を対象に、従業員1人当たりの年間売上高を算出すると、2023年1-12月期は中堅企業が8,253万円で、大企業(8,702万円)を僅差で追う。中小企業は4,267万円で、中堅企業の半分程度にとどまった。

 中堅企業の2023年1-12月期の当期利益率は7.3%で、大企業(8.4%)には及ばないが、前年(6.0%)から1.3ポイント上昇した。一方、中小企業は3.4%にとどまり、大企業、中堅企業との格差は大きい。

 経済産業省は、中堅企業を地域経済をけん引する存在と位置づける。大企業は大都市圏に集中し、国内事業よりも海外事業を拡大させてきた。そのため、成長余地の大きい中堅企業を支援し、賃上げや国内投資の後押しを行うことで、国内経済の持続的な成長に繋げることを見込む。

企業規模の定義

※本調査は、東京商工リサーチが保有する企業データベースから、直近の動向が判明し従業員数または資本金が確認できた企業で、中小企業・中堅企業・大企業の分類が可能な企業を分析対象とした。①中小企業:「中小企業基本法」に基づく。②中堅企業:産業競争力強化法の改正で定義が新設される見込みの中小企業に該当しない従業員数2,000人以下の企業。③大企業:中小企業以外で、従業員数2,000人超の企業。法人格は、株式会社、合同会社、有限会社、合資会社、合名会社を対象とした。従業員数は、正社員数を採用した。
※業績は、2023年1月期-2023年12月期を2023年として、3期連続で売上高・当期利益・従業員数が比較可能な企業(変則決算を除く)を抽出し集計・分析した。2024年3月時点の規模区分で集計を行った。


2024年の中堅企業は9,229社、構成比は0.7%

 直近の動向が判明した企業(2024年122万4,808社)のうち、2024年の中堅企業数(中小企業を除く従業員数が2,000人以下の企業)は9,229社(構成比0.7%)で、2023年から116社(前年比1.2%増)増加した。
 このほか、大企業(中小企業を除く従業員数が2,000人超の企業)は909社(構成比0.07%)、中小企業は121万4,670社(同99.1%)だった。

 2023年から2024年で規模が拡大した企業は、「中堅企業→大企業」が30社、「中小企業→中堅企業」が399社、「中小企業→大企業」が5社だった。
 一方、規模が縮小した企業は、「大企業→中堅企業」が29社、「中堅企業→中小企業」が311社、「大企業→中小企業」が6社だった。
 規模が拡大した企業数は434社で、縮小した企業数(346社)を上回る。経済活動再開の本格化により、人材採用を積極的に進め、規模を拡大させた企業が多かったとみられる。

上:規模別企業数推移 下:2023-2024年 企業規模の拡大・縮小動向

規模・産業別 企業構成比

中堅企業はサービス業他が約3割で最大
 産業別の構成比では、中堅企業はサービス業他が28.8%で最大。次いで情報通信業18.0%、製造業16.3%と続く。
 大企業は製造業33.4%、サービス業他20.0%、中小企業は建設業28.8%、サービス業他18.9%で構成比が大きかった。

2024年 規模・産業別企業構成比

規模別 従業員1人当たりの年間売上高

中堅企業8,253万円で、大企業とは449万円の差
 3期連続で売上高・当期利益・従業員数が比較可能な企業を対象に業績分析を行った。
 2023年の中堅企業の売上高は、280兆6,664億円(前年比8.9%増)だった。大企業は406兆91億円(同13.4%増)、中小企業は425兆5,443億円(同7.3%増)となる。
 2021年と比較した売上高増加率は、中堅企業が10.3%増で、大企業(19.4%増)と中小企業(12.9%増)を下回った。
 一方、 2023年の従業員1人当たりの年間売上高は、中堅企業が8,253万円で、大企業(8,702万円)に次ぐ。
 平均従業員数は大企業が6,075.0人、中堅企業が500.6人と規模に大きな差があるが、中堅企業の生産性は大企業に匹敵する水準だった。
 中小企業は4,267万円で、中堅企業の約半分(5.1割)にとどまった。中小企業の平均従業員数は21.9人。

上:規模別 売上高推移(各年1-12月期) 下:規模別 従業員1人当たりの年間売上高推移

規模別 従業員1人当たりの当期利益

中堅企業は603万円で、2年で322万円の上昇
 中堅企業の2023年の当期利益は20兆5,240億円(前年比31.8%増)だった。大企業は34兆4,823億円(同23.6%増)、中小企業は14兆5,187億円(同11.5%増)で、利益では中堅企業が中小企業を上回った。
 2021年の当期純利益との比較では、中堅企業が113.3%増と2倍以上に伸び、大企業(83.6%増)と中小企業(33.6%増)の伸びを大きく上回った。
 2023年の従業員1人当たりの当期利益は、中堅企業が603万円(前年453万円)で、大企業の739万円(同612万円)を136万円下回った。中小企業は146万円(同132万円)で、中堅企業や大企業との格差が大きい。
 中堅企業と大企業が過去2期で従業員1人当たりの当期利益を300万円以上伸ばしたのに対し、中小企業は36万円の伸びにとどまった。

上:規模別 当期利益推移(各年1-12月期) 下:規模別 従業員1人当たりの当期利益推移

規模別 当期利益率 中堅企業の利益率は7.3%

 2023年の中堅企業の当期利益率は7.3%で、前年(6.0%)から1.3ポイント上昇した。
 大企業は8.4%(前年7.7%)で、中堅企業との格差は1.1ポイントに縮小した。
 一方、中小企業は3.4%にとどまり、大企業や中堅企業との格差は拡大している。

規模別 当期利益率推移(各年1-12月期)

規模・産業別 当期利益率 中堅企業は運輸業とサービス業他の利益率が高い

 産業別の当期利益率をみると、中堅企業では、サービス業他が20.1%で最高。大企業と中小企業では、サービス業他の当期利益率が5%台にとどまり、中堅企業の高さが目立つ。このほか、運輸業が18.6%、農・林・漁・鉱業が13.1%と続き、中堅企業では3産業で当期利益率が10%を超えた。
 大企業で当期利益率が最も高い産業は、卸売業で11.6%だった。中堅企業と中小企業では当期利益率が3%未満にとどまり、スケールメリットを生かす総合商社などが市場をけん引していることを表す。このほか、情報通信業10.6%、不動産業10.1%で当期利益率が10%を上回った。
 中小企業で当期利益率が最も高い産業は、金融・保険業の16.5%で、唯一10%を超えた。貸金業などで利益率が高く、大企業・中堅企業を上回った。

2023年1-12月期 規模・産業別当期利益率




 最新期における規模別の従業員1人当たりの売上高は、大企業8,702万円、中堅企業8,253万円、中小企業4,267万円。また、従業員1人当たりの当期利益は大企業739万円、中堅企業603万円、中小企業146万円だった。

 昨今重視される生産性では、中堅企業は大企業にあと一歩及ばないが、僅差で追随している。このため、大企業と比べて事業規模に成長余地を残している中堅企業に、賃上げや国内投資を後押しすることで、国内経済や地域経済に好循環をもたらすことが期待されている。
 これまで中小企業向けの支援は手厚く、弱い立場の中小企業が守られてきた。一方、中小企業向けの優遇を受けるため、安易な減資や従業員数の制限で企業規模の拡大を抑える企業もみられた。こうした企業の成長を抑制する動きによって、日本の中小企業の生産性、収益性を低迷させていた側面がある。


 今回の新たな枠組みの設定で、国は成長意欲の高い企業への支援に力を入れる。弱者救済のための支援から、設備投資や人的投資、研究開発など、成長を目的とした「企業活動」への支援に軸足を移すことで日本企業の成長を促進する。こうした支援で中小企業に明確な目標像を与えると同時に、中堅企業への規模拡大のモチベーションにつながることが期待される。また、生産性は賃金に直結するため、労働者が生産性の低い企業から生産性が高く待遇の良い企業に流れる動きが加速すると考えられる。設備投資・人的投資を怠り、成長意欲が低い中小企業の淘汰が始まるだろう。
 一方で、現状は足踏み状態にあるが、意欲があり成長の芽がある中小企業にはチャンスを与えるべきだ。また、大企業から中堅企業への規模縮小など、大企業や中堅企業になった後の成長の停滞を防ぐ必要はある。中小企業から中堅企業、中堅企業から大企業への成長の道筋に具体性を与え、国内企業全体を未来志向に導くことができるかが重要となってくる。

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