• TSRデータインサイト

新型コロナ破たん 再び急増、過去2番目の高水準

【3月31日現在】


 3月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円以上)が312件(前年同月比4.8%減)判明した。今年1月から3カ月連続で前年同月の件数を下回ったが、月間件数は2023年3月の328件に次ぐ過去2番目の高水準だった。これまでの累計は8,809件(倒産8,569件、弁護士一任・準備中240件)となった。

 倒産集計の対象外となる負債1,000万円未満の小規模倒産は累計419件判明した。この結果、負債1,000万円未満を含めた新型コロナウイルス関連破たんは累計で9,228件に達した。

 国内の企業数(358万9,333社、2016年総務省「経済センサス」)を基にした比率では、コロナ破たん率は0.257%で500社に1社が破たんした計算となる。都道府県別で最も比率が高いのは東京都の0.451%、次いで福岡県の0.381%、宮城県の0.364%、大阪府の0.318%、群馬県の0.315%と続く。一方、最低は高知県の0.111%で、地域によってばらつきもある。

 脱コロナが進む一方で、業績回復が見出せずにコロナ禍の後遺症に苦しむ企業は多い。こうしたなか、月間件数は7カ月ぶりに300件台に増加し、一進一退が続いている。コロナ関連融資の返済や猶予措置を受けていた公租公課の支払いが再開するなか、資金繰りを維持できないケースも頻発している。こうした企業の息切れを中心に、コロナ関連破たんは月間200~300件の高止まりで推移する可能性が高い。

【都道府県別】(負債1,000万円以上) ~ 300件以上は7都道府県 ~

 都道府県別では、東京都が1,794件と全体の2割強(構成比20.3%)を占め、突出している。以下、大阪府827件、福岡県489件、愛知県441件、兵庫県400件、神奈川県371件、北海道363件、埼玉県299件と続く。
 300件超えが7都道府県、200件~300件未満が6府県、100件~200件未満も7県に広がっている。一方、10件未満はゼロで、最少は鳥取県の20件。

【業種別】(負債1,000万円以上)~最多は飲⾷業の1,439件、建設、アパレル、食品関連が続く~

 業種別では、コロナ禍での来店客の減少に加え、食材や光熱費高騰の負担も重い飲食業が最多で1,439件に及ぶ。客足は戻っても売上の回復に至らず、経営体力の消耗による破綻や、あきらめ型が多い。
 次いで、工事計画の見直しなどの影響を受けた建設業が1,068件に達した。このほか、小売店の休業が影響したアパレル関連(製造、販売)の626件。飲食業などの不振に引きずられた飲食料品卸売業が352件、食品製造が266件、扱い量の減少などが響いた貨物自動車運送業が250件、インバウンドの需要消失や旅行・出張の自粛が影響したホテル,旅館の宿泊業が232件と、上位を占めている。

【負債額別】(負債1,000万円以上)

 負債額が判明した8,748件の負債額別では、1千万円以上5千万円未満が最多の3,421件(構成比39.1%)、次いで1億円以上5億円未満が2,688件(同30.7%)、5千万円以上1億円未満が1,789件(同20.4%)、5億円以上10億円未満が451件(同5.1%)、10億円以上が399件(同4.5%)の順。
 負債1億円未満が5,210件(同59.5%)と約6割を占める。一方、100億円以上の大型破たんも23件発生しており、小・零細企業から大企業まで経営破たんが広がっている。

【形態別】(負債1,000万円以上)

 「新型コロナ」関連破たんのうち、倒産した8,569件の形態別では、破産が7,764件(構成比90.6%)で最多。次いで取引停止処分が312件(同3.6%)、民事再生法が256件(同2.9%)、特別清算が207件、内整理が23件、会社更生法が7件と続く。
 「新型コロナ」関連倒産の9割超を消滅型の破産が占め、再建型の会社更生法と民事再生法の合計は1割未満にとどまる。業績不振が続いていたところに新型コロナのダメージがとどめを刺すかたちで脱落するケースが大半。
 先行きのめどが立たず、再建型の選択が難しいことが浮き彫りとなっている。

【従業員数別】(負債1,000万円以上)

 「新型コロナ」関連破たんのうち、従業員数(正社員)が判明した8,583件の従業員数の合計は7万5,144人にのぼった。平均すると1社あたり約9人となる。
 8,583件の内訳では従業員5人未満が5,169件(構成比60.2%)と、6割を占めた。次いで、5人以上10人未満が1,610件(同18.7%)、10人以上20人未満が998件(同11.6%)と続き、従業員数が少ない小規模事業者に、新型コロナ破たんが集中している。
 また、従業員50人以上の破たんは2022年は上半期で24件で、下半期も31件判明した。2023年上半期は27件、下半期は39件、2024年は17件判明している。

コロナ破たん都道府県別(負債1000万円未満含む)

コロナ破たん率(負債1000万円未満含む)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

制御機器メーカーのIDEC(株)が早期退職募集を実施=国内従業員の300人が退職

制御機器メーカーのIDEC(株)(TSRコード:570011370、大阪府、東証プライム)がセカンドキャリア支援制度を実施し、今年6月までに国内従業員の約300人が退職していたことが東京商工リサーチの取材でわかった。

2

  • TSRデータインサイト

上場企業の「早期・希望退職」募集 1-8月で1万人超え 募集の大型化で前年同期比1.4倍増、前年1年間を上回る 

今年1月から8月31日までに判明した上場企業の「早期・希望退職」募集の対象人数が、1万人を超えた。募集の大型化が目立ち、3年ぶりに1万人を超えた2024年の年間募集人数1万9人をすでに上回った。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

4

  • TSRデータインサイト

分配金遅延の「みんなで大家さん」、出資者が返金求め訴訟提起へ

不動産投資商品「みんなで大家さん」の出資者への分配金が遅延している問題で、投資商品を扱う企業に対して5名の出資者が1億円の返還を求め、東京地裁に訴訟を提起する。出資者側の代理人事務所は、リンク総合法律事務所。

5

  • TSRデータインサイト

銀行員の年収、過去最高の653万3,000円 3メガ超えるトップはあおぞら銀行の906万円

国内銀行63行の2024年度の平均年間給与(以下、年収)は、653万3,000円(中央値639万1,000円)で、過去最高となった。前年度の633万1,000円(同627万5,000円)から、20万2,000円(3.1%増)増え、増加額は3年連続で最高を更新した。

TOPへ