• TSRデータインサイト

2月の「物価高」倒産57件、2カ月連続で増加 負債総額は10カ月連続で100億円を超える

2024年2月 「物価高」倒産状況


 2024年2月の「物価高」を起因とした倒産は57件(前年同月比39.0%増)で、前年同月の41件の約1.4倍に増加した。今年に入り、2カ月連続で前年同月を上回った。
 負債総額は187億8,800万円(同4.7%減)で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。ただ、10カ月連続で100億円以上が続き、円安などを背景とした財・サービスなどの価格上昇が、財務体質がぜい弱な企業にのしかかっている。

 産業別では、最多が製造業の20件(前年同月比150.0%増)。次いで、運輸業10件(同66.6%増)、卸売業9件(同12.5%増)と続く。これらの産業は下請企業も多く、原材料や資材、燃料などの価格上昇分の価格転嫁が難しいことを示している。
 負債額別は、負債1億円以上が33件(同43.4%増)で、約6割(構成比57.8%)を占めた。
 形態別は、破産が49件(前年同月比32.4%増)で、8割以上(構成比85.9%)に達した。

 今年2月実施の「価格転嫁に関するアンケート」調査では、今年1月の本業に係るコストが前年1月より「増加した」と回答した企業は7割(構成比73.6%)だった。また、コスト上昇分を「価格転嫁できていない」と回答した企業のうち、「原材料や燃料費、電気代の高騰」をあげた企業は約4割(同37.9%)を占めた。

 今年4月、コロナ禍の資金繰り支援のゼロゼロ融資の返済開始が最後のピークを迎える。ただ、コロナ禍からの業績回復が遅れ、過剰債務に陥った企業は多い。そうした企業は、物価高への耐性が乏しいが、さらに人材確保のための賃上げなどのコスト上昇も見込まれることから、収益悪化による資金繰りへの影響が懸念される。 

※本調査は、2024年2月の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。


2月の「物価高」倒産は57件、2カ月ぶりに50件台に乗せる

 2024年2月の「物価高」倒産は57件(前年同月比39.0%増)で、2カ月連続で前年同月を上回った。負債総額は187億8,800万円(同4.7%減)で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。ただ、2023年5月より10カ月連続で負債総額は100億円超の推移が続く。
 外国為替相場は1ドル=150円を挟んでの推移と、依然として円安基調となっている。実質賃金が前年同月を下回るなか、生活必需品の値上げが相次ぎ、消費停滞の影響も懸念される。

「物価高」倒産月次推移

【産業別】5産業で前年同月を上回る

 産業別は、5産業で前年同月を上回った。
 最多は、製造業の20件(前年同月比150.0%増、前年同月8件)。次いで、運輸業10件(同66.6%増、同6件)、卸売業9件(同12.5%増、同8件)と続く。
 外国為替相場は1ドル=150円前後での推移が続くなかで、原材料や資材、食材に加えて、電気やガス、燃料などのエネルギー価格の上昇が続いている。経営体力がぜい弱な企業ほど、価格転嫁は難しく、資金繰りに大きな影を落としている。

産業別状況(2月)

【業種別】最多が道路貨物運送業の10件

 業種別(業種中分類)は、道路貨物運送業が10件(前年同月比66.6%増、前年同月6件)で最も多い。今年4月1日からドライバーの時間外労働時間の上限が規制されるなど、いわゆる「2024年問題」が間近に迫るなかで人手不足が顕在化。さらに、燃料価格の高止まりもあり、企業収益に影響を及ぼしている。
 次いで、食料品製造業が9件(前年同月4件)、飲食店が4件(同5件)と続く。食材だけでなく、水道や電気・ガスなどの価格が上昇する一方で、個人消費者に近いだけに価格転嫁は容易ではない。

【形態別】破産が8割以上

 形態別は、破産が49件(前年同月比32.4%増)で、「物価高」倒産の8割以上(構成比85.9%)を占めた。ゼロゼロ融資返済だけでなく、物価高や人手不足などで事業環境は厳しさを増している。コロナ禍からの業績回復が遅れ、コストアップへの対応ができずに資金繰りに行き詰まり、破産を選択するケースが多い。
 このほか、取引停止処分が4件(前年同月比33.3%増、前年同月3件)、民事再生法が3件(前年同月ゼロ)、特別清算が前年同月と同件数の1件だった。

【負債額別】1億円以上が約6割

 負債額別は、最多が1億円以上5億円未満の24件(前年同月比33.3%増、前年同月18件)。
 次いで、5千万円以上1億円未満の14件(同55.5%増、同9件)、1千万円以上5千万円未満の10件(同11.1%増、同9件)と続く。
 1億円以上が33件(前年同月比43.4%増)で、全体の約6割(構成比57.8%)を占めた。

負債額別状況(2月)

【資本金別】1千万円未満が6割

 資本金別は、1千万円未満が32件(前年同月比60.0%増)で、構成比は5割超(56.1%)を占めた。
 1千万円未満の内訳は、5百万円以上1千万円未満が14件(前年同月比133.3%増)、1百万円以上5百万円未満が12件(同33.3%増)、1百万円未満(同50.0%増)と個人企業他(同±0.0%)が各3件だった。
 1千万円以上は25件(同19.0%増)だった。

【地区別】7地区で前年同月を上回る

 地区別は、中部、北陸を除く7地区で前年同月を上回った。増加率の最大は、関東の前年同月比77.7%増(9→16件)。以下、北海道の同66.6%増(3→5件)、東北と九州の同60.0%増(5→8件)の順。
 都道府県別は、増加が17道府県、減少9県、同件数が21都府県だった。47都道府県のうち、18県(構成比38.2%)で発生がなかった。
 最多は、福岡の6件(前年同月2件)。以下、北海道5件(同3件)、東京(同4件)と兵庫(同2件)が各4件の順。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ