• TSRデータインサイト

都内の産婦人科医院が突然の閉院、財務は「債務超過」

 (医)社団加藤産婦人科医院(TSR企業コード:295707666、荒川区)が運営する「加藤産婦人科医院」が、5月8日を以て閉院した旨をホームページに掲載した。
 同医院は、病床数15床の産婦人科専門の診療所で、地元では相応の知名度を有している。地域密着型の展開を強みに、2011年5月期には売上高(事業収益)7億6737万円をあげていた。
 2015年5月期までは7億円台の年間売上高で推移していたが、2016年5月期には一時的に分娩停止を余儀なくされたことで、売上高2億3430万円に対して2億4245万円の大幅な最終赤字を計上し、債務超過に転落した。
 その後分娩を再開し、以降の年間売上高は5億円台まで回復。増収を重ね一定の利益をあげていたが、1億円を超える債務超過の解消には至らず、厳しい資金繰りが続いていた。
 さらに「新型コロナウイルス」の感染が拡大して以降は再び減収に転じ、2022年5月期の売上高は3億7442万円まで減少。この間、3期連続で最終赤字を計上し、債務超過額は1億9969万円まで拡大していた。
 こうしたなか、今年5月3日に突然、医院のSNSで6日の外来診療を休診することを告知。さらに、6日には8日も休診する旨のお知らせを掲載した。通院の予約をしていた患者などから不安の声があがるなか、診療を再開することなく閉院となった。
 5月12日朝の時点で、医院の入口には「5月9日(火)をもちまして閉院いたしました。詳細はHPをご覧ください」との張り紙だけがあり、人影は見られなかった。
 なお、荒川区は12日までに、閉院の理由が資金繰り悪化と院長の体調不良であること、現在受診者らに他院の紹介などを行っていること、対象者には転院先での再検査費用の一部助成を検討していることなどを公表している。


加藤産婦人科医院
加藤産婦人科医院


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年5月15日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

M&A総研の関わりに注目集まる資金流出トラブル ~ アドバイザリー契約と直前の解約 ~

東京商工リサーチは、M&Aトラブルの当事者であるトミス建設、マイスHD、両者の株式譲渡契約前にアドバイザリー契約を解約したM&A総合研究所(TSRコード: 697709230、千代田区)を取材した。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業、中高年の活用に活路 「早期・希望退職」は大企業の2.8%が実施

 「早期希望・退職」をこの3年間実施せず、この先1年以内の実施も検討していない企業は98.5%だった。人手不足が深刻化するなか、上場企業の「早期・希望退職」募集が増えているが、中小企業では社員活用の方法を探っているようだ。

3

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

4

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

5

  • TSRデータインサイト

2023年度「赤字法人率」 過去最小の64.7% 最小は佐賀県が60.9%、四国はワースト5位に3県入る

国税庁が4月に公表した「国税庁統計法人税表」によると、2023年度の赤字法人(欠損法人)は193万650社だった。普通法人(298万2,191社)の赤字法人率は64.73%で、年度集計に変更された2007年度以降では、2022年度の64.84%を下回り、最小を更新した。

TOPへ