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「お花見、歓送会」 開催率は3割に届かず まだ控えめにコロナ前の半分

~ 2023年「お花見、歓迎会・懇親会に関するアンケート」調査 ~


  5月8日の新型コロナ5類移行に先立ち、3月13日からマスク着用が個人の判断に委ねられた。コロナ禍の様々な規制が緩和され、海外からの観光客流入も増えて街の人流は回復してきた。その一方で、東京商工リサーチ(TSR)が4月上旬に実施したアンケート調査では、2023年にお花見、歓迎会・懇親会を「開催した(予定含む)」企業は27.9%と3割を下回り、宴会などの集合セレモニーはまだ控えめなことがわかった。

 コロナ前の2019年の「お花見、歓迎会・懇親会」の開催率は51.8%で、企業の半数が実施していた。だが、年初からまん延防止等重点措置が発令されたコロナ禍の2022年は5.3%に急落。桜の開花が早まった2023年の開催率は27.9%で、2022年からは22.6ポイント改善した。ただ、コロナ前の2019年を23.9ポイント下回り、まだコロナ前の半分にとどまった。
 都道府県別の開催率は、秋田県が46.5%でトップ。コロナ前の開催率40%以上は43都道府県に対し、今年は秋田県のほか、熊本県(42.8%)、鹿児島県(41.9%)、佐賀県(40.0%)の九州3県を加えた4県にとどまった。
 開催時の制限では、開催した企業の約8割(78.9%)が「制限なし」と回答し、宴会(セレモニー)に対する姿勢は積極派と慎重派の二極化が際立った。2023年はアフター・コロナの動きが強まったが、まだ7割超の企業が春先の宴会の開催を見送った。忘・新年会に続き、花見や歓迎会・懇親会の需要喚起は今一つで、飲食業界の人足の動きと歩調が揃わないようだ。

※本調査は、2023年4月3日~11日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答4,423社を集計、分析した。
資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。



Q1. 「お花見」または「歓迎会・懇親会」の開催状況はいかがですか?(各択一回答)

今年の開催率、3割に届かず
 お花見、歓迎会・懇親会を開催した企業は、コロナ前(2019年)が51.8%(4,396社中、2,279社)だった。だが、コロナ禍で春先に都市部を中心にまん延防止等重点措置が発令された2022年は5.3%(4,423社中、238社)に急減した。そして、コロナ禍の規制緩和が進んだ今年(2023年)は27.9%(4,393社中、1,229社)に上向いた。
 コロナ前から、お花見などの開催は企業の半数にとどまっていた。そこにコロナ禍で若者の酒席や宴会離れに拍車がかかり、開催率は一ケタ台に激減した。コロナ禍も出口が見えかけた2023年だったが、開催率は3割に届かず、コロナ前に及ばなかった。
 規模別では、大企業の開催率は34.8%(556社中、194社)で、前年の開催率4.4%(561社中、25社)から30.4ポイント回復したが、コロナ前の63.3%(557社中、353社)を28.5ポイント下回った。中小企業は、開催率が26.9%(3,837社中、1,035社)で、前年の5.5%(3,862社中、213社)から21.4ポイント改善したが、コロナ前の50.1%(3,839社中、1,926社)からは23.2ポイント下回った。

今年の開催率、3割に届かず

都道府県別 コロナ禍前の水準に最も近いのは青森県

 都道府県別で、今年(2023年)に「開催した(予定含む)」割合のトップは、秋田県の46.5%(コロナ禍前60.4%、前年11.6%)だった。以下、熊本県42.8%(同60.7%、同3.5%)、鹿児島県41.9%(同58.0%、同9.6%)、佐賀県40.0%(同50.0%、同0.0%)、岡山県39.0%(同53.8%、同7.6%)と続く。開催率が4割以上は東北1県、九州3県の4県だった。
 一方、開催率の最低は栃木県の12.9%(同48.4%、同4.6%)。次いで、奈良県の15.6%(同39.3%、同3.1%)、徳島県の15.7%(同36.8%、同5.2%)、静岡県の17.0%(同42.6%、同3.6%)、山梨県の17.2%(同48.2%、同3.4%)の順。もともと開催率が低い都道府県が並ぶが、開催率が3割を下回ったのは30都府県で、1割台は9県だった。
 コロナ前(2019年)の開催率に最も近い水準に回復したのは青森県。コロナ前の開催率37.8%に対し、前年8.1%、今年31.4%で、今年はコロナ前との差が6.4ポイントまで縮小した。
 鳥取県はコロナ前の開催率が70.3%で、唯一7割台で全国トップだったが、2023年の開催率は34.6%とコロナ前を35.7ポイント下回って10位にとどまり、コロナ前からの回復度合いはワースト4位だった。なお、回復度合いのワーストは福島県で、コロナ前の開催率60.3%に対して今年は20.6%にとどまり、39.7ポイントの大幅な低下となった。
 大都市圏の開催率は、東京都が28.3%(コロナ前51.5%、前年5.9%)、大阪府が28.1%(同51.9%、同5.9%)、神奈川県が22.8%(同51.5%、同2.6%)、愛知県が25.3%(同52.4%、同4.4%)、福岡県が29.7%(同58.2%、同5.0%)といずれも30%に届かず、慎重な姿勢がうかがえる。
 前年の全国の開催率は5.3%にとどまったが、2023年は栃木県(8.2ポイント改善)を除く46都道府県で10ポイント以上改善した。ただ、コロナ前の水準を大幅に下回る都道府県がほとんどだった。企業が主催する宴会の需要は、コロナ禍で定着した三密回避を背景に今後も伸び悩む可能性が高い。このため、飲食店は個人客や小規模な宴会需要の開拓へ転換が必要かもしれない。

Q2. 貴社では、「歓迎会・懇親会」について、現在制限を設けていますか?(複数回答) 

制限なしが約8割
 Q1で「今年開催した(予定含む)」と答えた企業のうち、1,206社から回答を得た。
 最多は、開催に伴う「制限は設けていない」の78.9%(952社)だった。開催企業の約8割はコロナ前と同様に、制限のない宴会形式に戻っている。
 次いで、「二次会の開催を制限している」は11.8%(143社)、「参加人数に上限を設けている」は11.2%(136社)、「滞在時間に上限を設けている」は5.3%(65社)の順。2022年12月実施の「忘・新年会に関するアンケート」の調査では、それぞれ33.4%、42.7%、27.5%、27.8%で、滞在時間や参加人数などへの制限は随分と緩和傾向にある。
 「制限は設けていない」は年末・年始の忘・新年会と比べ45.5ポイント上昇し、新規感染者数の激減とコロナ対策の浸透が、制限緩和の背景にあるとみられる。

制限なしが約8割

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