後継者難倒産 2月は29件、「死亡」と「体調不良」で約9割
2022年2月の後継者不在に伴う『後継者難』倒産は29件(前年同月比31.8%増)で、2カ月連続で前年同月を上回った。負債1,000万円以上の倒産(459件)の6.3%(前年同月4.9%)を占めた。調査を開始した2013年以降、2月としては全倒産に占める構成比が過去最高を記録した。
産業別では、最多は建設業の10件(前年同月7件)で、2月では初めて10件台に乗せた。また、『後継者難』倒産の34.4%を占めた。次いで、サービス業他8件(前年同月2件)、小売業7件(同2件)の順。
資本金別では、最多は1千万円未満の21件(前年同月比90.9%増、構成比72.4%)。負債額別では、1億円未満の23件(同64.2%増、同79.3%)で、小・零細規模を中心にしている。
要因別では、代表者の「死亡」が14件(構成比48.2%)、「体調不良」が12件(同41.3%)と、この2要因だけで『後継者難』倒産の約9割(構成比89.6%)に達する。
中小企業は、代表者が経営全般を担うことが多い。だが、コロナ前から業績回復が遅れ、後継者育成や事業承継への対応が後回しになっていることを示している。
社長の平均年齢は、62.49歳(2020年)と高齢化が進み、中小企業の後継者不在が深刻な問題になっている。後継者が不在の企業は、業績悪化との関連性が強い。代表者が急に不在になると経営のかじ取りや資金調達に支障が生じやすい。
コロナ後も中小企業が事業継続するには、事業再構築だけでなく、後継者育成や事業承継への取り組みも重要な課題になっている。
- ※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2022年2月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。
『後継者難』倒産29件、全倒産の6.3%を占める
2022年2月の『後継者難』倒産は29件(前年同月比31.8%増、前年同月22件)で、2カ月連続で前年同月を上回った。『後継者難』倒産は、負債1,000万円以上の倒産全体(459件)の6.3%を占め、前年同月の4.9%から1.4ポイント上昇し、2月としては過去最高を記録した。
後継者の「有無」は、金融機関だけでなく、取引企業でも与信上の重要な判断材料になっている。代表者が不測の事態に直面した場合、事業継続の問題だけでなく、自社の生産計画や受発注にも支障を来す可能性もある。
長引くコロナ禍で業績回復が遅れた中小・零細企業は、後継者育成や事業承継への準備が後回しになるケースが少なくない。高齢の代表者ほど過去の成功体験にこだわり、長期の経営ビジョンを打ち出しにくく、設備投資を手控え、生産性や収益低下などのリスクも生みやすい。
【要因別】「死亡」と「体調不良」で約9割
要因別の最多は、代表者などの「死亡」の14件(前年同月比7.6%増、前年同月13件)。2月では、3年連続で前年同月を上回った。『後継者難』倒産に占める構成比は48.2%で、前年同月(59.0%)より10.8ポイント低下した。
「体調不良」は12件(前年同月比140.0%増、構成比41.3%)で、2年ぶりに増加した。
代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計26件(前年同月比44.4%増、前年同月18件)で、『後継者難』倒産の89.6%(前年同月81.8%)を占めた。
このほか、「高齢」が3件(前年同月比50.0%増、構成比10.3%)で、2年ぶりに前年同月を上回った。
【産業別】最多は建設業の10件、10産業のうち、4産業で増加/span>
産業別は、10産業のうち、建設業、小売業、情報通信業、サービス業他の4産業が前年同月を上回った。
最多は、建設業の10件(前年同月比42.8%増、構成比34.4%)で、2年ぶりに前年同月を上回り、2月では初めて10件台に乗せた。
このほか、サービス業他が8件(前年同月比300.0%増)は2年ぶり、小売業7件(同250.0%増)は3年ぶり、情報通信業1件(前年同月ゼロ)は4年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
一方、卸売業2件(前年同月比33.3%減)は2年連続、不動産業1件(同75.0%減)は2年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
農・林・漁・鉱業は2年連続、製造業は2013年以来、9年ぶり、運輸業は4年ぶりに、それぞれゼロだった。また、金融・保険業は、2013年以降、発生していない。
業種別では、前年同月ゼロだった飲食料品小売業が4件、織物・衣服・身の回り品小売業が2件、建築材料,鉱物・金属材料等卸売業が1件。また、美容業(ゼロ→1件)、フィットネスクラブ(ゼロ→1件)を含む生活関連サービス業,娯楽業が2件(前年同月ゼロ)、建築設計業(ゼロ→2件)を含む学術研究,専門・技術サービス業が3件(同1件)などで、前年同月を上回った。
【形態別】破産の構成比が96.5%
形態別の最多は、「破産」の28件(前年同月比33.3%増、前年同月21件)。『後継者難』倒産に占める構成比は96.5%で、前年同月の95.4%より1.1ポイント上昇。
「会社更生法」と「民事再生法」は、調査を開始した2013年以降、2月としては発生がない。
『後継者難』倒産は、後継者育成や事業承継への取り組みが遅れ、代表者に不測の事態が起こった場合、事業継続が困難に陥りやすく、「破産」を選択するケースがほとんど。
【資本金別】1千万円未満が約2倍増
資本金別は、1千万円未満が21件(前年同月比90.9%増)で、『後継者難』倒産に占める構成比は72.4%(前年同月50.0%)と、2月では構成比が最高を記録した。
小・零細規模の企業では、後継者の育成・事業承継が大きな課題となっている。
【負債額別】1億円未満が約8割
負債額別は、1億円未満が23件(前年同月比64.2%増、前年同月14件)で、2年ぶりに前年同月を上回った。『後継者難』倒産に占める構成比は79.3%(前年同月63.6%)だった。
内訳は、1千万円以上5千万円未満が15件(前年同月比50.0%増)、5千万円以上1億円未満が8件(同100.0%増)と、それぞれ2年ぶりに前年同月を上回った。
このほか、1億円以上5億円未満が5件(同16.6%減)で3年ぶり、5億円以上10億円未満が1件(同50.0%減)で6年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
10億円以上は、2019年以降、4年連続でゼロだった。