負債1,000万円未満の倒産 2月は29件、9カ月連続で前年同月を下回る 【2022年2月】
2022年2月の負債1,000万円未満の企業倒産は29件(前年同月比14.7%減)で、2021年6月から9カ月連続で前年同月を下回った。また、負債1,000万円未満のうち、コロナ関連倒産は4件(前年同月2件)で、構成比は13.7%(同5.8%)にとどまっている。
産業別では、最多はサービス業他の13件(前年同月比23.5%減)で、3年ぶりに前年同月を下回った。ただ、建設業が6件(同50.0%増)で4年ぶり、製造業が5件(同400.0%増)で3年ぶりに、それぞれ増加した。代表者の高齢化など、事業承継に課題を抱えた産業で倒産が増加した。
原因別での最多は、「販売不振」の19件(同20.8%減)で、業績低迷から抜け出せず行き詰るケースが多い。資本金別は、1,000万円未満が27件(同10.0%減)と全体の93.1%を占め、小・零細企業が大半だった。
形態別は、29件すべて「破産」だった。小・零細規模ほど事業再建が難しいことを示している。
コロナ関連支援策は、事業規模を問わず多くの企業が恩恵を受けた。ただ、売上回復が遅れるなかで、債務の過剰感は増している。
新型コロナの新たな変異株「オミクロン株」の感染者数は高止まりし、コロナ収束は不透明な状況が続いている。小・零細企業の体力は疲弊し、長引くコロナ禍で支援効果も薄れつつある。コロナ支援に依存した経営を続けてきた経営者は、いずれ倒産や廃業の決断を迫られる。こうした企業への事業再構築や経営再建、廃業に向けた支援体制が、これまで以上に必要となっている。
- ※本調査は、2022年2月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。
倒産29件、9カ月連続で前年同月を下回る
2022年2月の負債1,000万円未満の企業倒産は29件(前年同月比14.7%減)で、2021年6月以降、9カ月連続で前年同月を下回った。2月としては2年連続で前年同月を下回り、2015年(29件)以来の20件台にとどまった。
負債1,000万円未満の倒産のうち、「新型コロナ」関連倒産は4件(前年同月2件)で、構成比は13.7%(同5.8%)と、前年同月から7.9ポイント上昇した。
2022年1月に発令された「まん延防止等重点措置」は、3月6日までの期限となっていたが、感染者数の高止まりで18都道府県の期限延長が決定した。
コロナ禍の資金繰り支援効果で、負債1,000万円未満も倒産は低水準で推移している。ただ、中小・零細企業ほど業績回復が遅れ、過剰債務が経営の大きな負担になっている。
【産業別】10産業のうち、建設業と製造業の2産業が増加
産業別は、10産業のうち、建設業と製造業の2産業で増加、減少は4産業だった。
最多は、サービス業他の13件(前年同月比23.5%減)で、3年ぶりに前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は44.8%(前年同月50.0%)で、前年同月より5.2ポイント低下した。
このほか、小売業は1件(前年同月比83.3%減)で2年ぶり、情報通信業は1件(前年同月2件)で2年連続で、それぞれ前年同月を下回った。
一方、建設業は、塗装工事業(ゼロ→3件)、大工工事、道路標示・区画線工事業、機械器具設置工事業が各1件の計6件(前年同月比50.0%増)で、4年ぶりに前年同月を上回った。
また、製造業は、めん類製造業、麻織物業、かばん製造業、金属工作機械製造業、眼鏡製造業が各1件の計5件(前年同月比400.0%増)で、3年ぶりに増加した。
不動産業は1件、運輸業は2件で、それぞれ前年同月と同件数だった。
農・林・漁・鉱業(前年同月1件)は2年ぶり、卸売業は2年連続、金融・保険業は6年連続で、それぞれ発生がなかった。
【形態別】3年ぶりに、破産の構成比が100.0%
形態別は、法的倒産が29件(前年同月比14.7%減)で、2年連続で前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は、2年連続で100.0%になった。
法的倒産の内訳は、破産が29件(同12.1%減)で、構成比は100.0%だった。小・零細企業が主体で、先行きの見通しが立たず事業継続を断念し消滅型の「破産」を選択しているようだ。
2月としては、再建型の「会社更生法」は15年以上、「民事再生法」は3年ぶりに、消滅型の「特別清算」は2017年より6年連続、「取引停止処分」は4年連続で、それぞれ発生がなかった。
【原因別】販売不振の構成比65.5%
原因別では、最多が「販売不振」の19件(前年同月比20.8%減)で、2年連続で前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は65.5%(前年同月70.5%)だった。
「既往のシワ寄せ(赤字累積)」は2件(前年同月4件)で、3年ぶりに前年同月を下回った。
『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は21件(前年同月比25.0%減、前年同月28件)だった。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は72.4%で、前年同月の82.3%より9.9ポイント低下した。
このほか、代表者の病気や死亡を含む「その他」は5件(前年同月3件)で、2年連続で前年同月を上回り、2月としては2013年以降の10年間で最多となった。
また、「事業上の失敗」は3件(前年同月ゼロ)だった。
【資本金別】1千万円未満が9割超
資本金別は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が27件(前年同月比10.0%減、前年同月30件)で、2年連続で前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は93.1%で、前年同月(88.2%)より4.9ポイント上昇した。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」(前年同月比±0.0%)と「個人企業他」(前年同月比26.6%減、同15件)が各11件、「1百万円未満」が4件(同33.3%増、同3件)、「5百万円以上1千万円未満」(前年同月比±0.0%)が1件だった。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」は2件(前年同月4件)で、2年ぶりに前年同月を下回った。
「5千万円以上1億円未満」は2012年以降、「1億円以上」は2010年以降、発生していない。