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上場企業1,898社 2021年3月期決算「従業員数」調査

 2021年3月期決算の上場1,898社の従業員数(正社員)は280万8,097人(前年比1.0%増)で、前年の277万9,467人から2万8,630人増えた。
 従業員数の最多は、トヨタ自動車(東証1部)の7万1,373人(前年7万4,132人)。以下、パナソニック(東証1部)5万9,006人(同6万455人)、デンソー(東証1部)4万6,272人(同4万5,280人)と大手メーカーが続く。従業員数1万人以上は、前年と同数の43社だった。
 従業員の増加率では、トップはコンテンツ制作などのブロードメディア(JASDAQ)で、前年比718.6%増(43→352人)。子会社の吸収合併で8.1倍増となった。減少率では、大手スポーツウェアメーカーのデサント(東証1部)の同85.8%減(241→34人)だった。一部業務を子会社に移管・集約し、大幅に減少した。
 上場企業は関連会社などの吸収合併で、従業員数が大きく変動する。従業員数が前年から1万人以上増加したのは本田技研工業(東証1部)1社(前年ゼロ)で、1,000人以上の増加は5社(同7社)だった。一方、最も減少したのはシャープ(東証1部)の4,443人減少で、ディスプレイデバイス事業をシャープディスプレイテクノロジー(株)に分社化したため。
 従業員数の増加は、1,140社(構成比60.0%、前年比5.3%減)で、4年連続で全体の6割以上を占めたが、社数は2年連続で減少した。一方、減少したのは697社(同36.7%、同7.8%増)で、構成比は前年の34.0%から2.7ポイント上昇した。
 コロナ禍でも事業拡大する企業と、業績悪化で人員削減に動いた企業で二極化が進んでいる。2021年の早期・希望退職募集人数は、前年より3カ月早く6月に1万人を超えた。従業員の採用や人員削減の動向次第で、上場企業の従業員数はさらに減少する可能性も出てきた。

  • 本調査は、2021年3月期決算の全証券取引所の上場企業を対象に、有価証券報告書の従業員数(正社員)を抽出、分析した。2017年3月期決算から連続で比較可能な企業を対象(変則決算企業は除く)に、持株会社(事業会社への移行含む)と、送配電事業の分社化などを行い従業員数の変動が大きい企業の多い『電気』は除いた。
  • 業種分類は証券コード協議会の定めに準じた。

従業員数

従業員数「減少」の構成比が2.7ポイント上昇

 上場1,898社のうち、前年より従業員数が増加したのは1,140社(構成比60.0%、前年1,204社)で、前年より5.3%減少した。一方、減少は697社(同36.7%、同646社)で同7.8%増加した。構成比は前年の34.0%から2.7ポイント上昇した。横ばいは61社(前年48社)だった。

平均給与

市場別 増加率最大はマザーズ

 市場別の従業員数は、最高が東証1部の255万3,302人(前年252万6,454人)。次いで、東証2部の12万943人(同12万864人)、JASDAQの10万4,335人(同10万3,074人)、札証・名証・福証などの地方上場2万3,664人(同2万3,430人)の順。最低はマザーズの5,853人(同5,645人)だった。
 伸び率では、最高がマザーズの前年比3.6%増で、前年の同0.7%減から増加に転じた。マザーズで従業員数が最も増えたのは、婚活サービスのタメニー(品川区)で、前年より123人増加(311→434人)した。
 以下、JASDAQの前年比1.2%増、東証1部の同1.0%増と続く。
 増加率が最も低かったのは、東証2部の同0.06%増。希望退職を実施したオーミケンシ、ユニバンス、フレンドリーの3社のほか、アトムが100人以上の従業員を削減し、伸び率を引き下げた。

産業別 減少はガス業・不動産業の2産業

 産業別では、最多が製造業の163万536人(構成比58.0%)で、前年の161万6,542人からは1万3,994人増加した(前年比0.8%増)。次いで、運輸・情報通信業41万2,948人(構成比14.7%、前年比2.0%増)、建設業20万2,717人(同7.2%、同0.6%増)の順。
 社数では、製造業が959社のうち、548社(構成比57.1%、前年604社)で増加したが、従業員が増えた企業は前年より56社減少した。
 従業員数の伸び率では、最高がサービス業の前年比3.3%増(16万4,597→17万170人)だった。コロナ禍でも136社のうち、90社(構成比66.1%)で増加した。
 以下、運輸・情報通信業の同2.0%増(40万4,486→41万2,948人)、小売業の同1.7%増(7万3,322→7万4,615人)と続く。
 一方、減少はガス業の同11.4%減(1万9,992→1万7,703人)と、不動産業の同6.2%減(2万1,453→2万104人)だった。
 不動産業は、アパート賃貸管理などのレオパレス21(東証1部)が希望退職の募集に1,067人が応募するなど、前年より1,648人減少したことが大きな要因。

平均給与

希望退職、店舗の閉店などで従業員数が減少

 従業員数の減少率が最大だったのは、スポーツウェアメーカーのデサント(東証1部)で前年比85.8%減(241→34人)。一部の業務を子会社に移管・集約したことが要因。
 次いで、金地金販売の第一商品(JASDAQ)の同84.8%減(245→37人)。早期退職や事業譲渡による移籍で大幅減少した。
 このほか、セルフうどん「香の川製麺」を展開するフレンドリー(東証2部)が同82.1%減(129→23人)、システム販売のINEST(JASDAQ)が同80.1%減(146→29人)の順。
 店舗削減や一部事業の終了などで、従業員数の減少に繋がった企業が多い。
 減少率が上位10社のうち、期中に早期・希望退職の募集を実施したのは、第一商品、フレンドリー、オーミケンシ、Success Holders、海帆の5社と半数を占めた。

平均給与

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